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夏の永遠

上手くない写真で恥ずかしいけれど、伊豆南端に近いヒリゾ浜の海中写真です。

コピー (2) ~ コピー ~ 海底風景

青い花びらのように見えるのはソラスズメダイという熱帯魚。コバルトブルーの体をしていて尻尾の先だけが黄色い魚です。

毎年シーズンになると黒潮に乗って北上してきます。けれども冬を越えられずに死んでしまいます。だから「死滅回遊魚」だなんてかわいそうな名前で呼ばれていたりします。

死滅回遊魚には、白と黒のしましま模様のオヤビッチャ(最初の写真に写っているのはツノダシという別の魚です。オヤビッチャはこちら↓)

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だとか、ソラスズメダイ以外にもいろんな仲間がいますが、僕はソラスズメダイがいちばん好きです。ピンクがさくら吹雪なら、ブルーはさかな吹雪なのであります。すごく綺麗です。

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それとソラスズメダイはとても俊敏で、かつ大変に気が強かったりします。びゅんと泳いできて僕をきっと睨むと(海中の魚はまな板の上の魚や水族館の魚とは違って実に表情豊かなんです)、くるっと鮮やかにターンして、しゅしゅんと泳ぎ去るのであります。

カゴカキダイも気が強いです(↓)

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イシダイの幼魚(↓)

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なんかは人懐っこくて、人をおそれず(僕がなめられていただけか?)体を寄せてきますがソラスズメダイはあまり懐きません。凛々としています。そこもまたかえってかわいらしい。

最近は全然行けていないけど、かつては五月から十月まで、トータルで二十回とか海に繰り出していました。

ソラスズメダイみたいなカラーの小さなヨーロピアンハッチバックで、ウィークデーでも、前日が早帰りだったら朝五時には家を出て、葉山の芝崎海岸なんかに出掛け(片道一時間)、十時くらいまで泳いで、昼前には東京に戻り、車を地下にしまうと部屋で焼酎の牛乳割りなんかを作って(ランチビールを飲みながらの打ち合わせはよくやったけど、出社前にランチ焼酎までやらかしていたとは我ながら呆れてしまいますが、僕って全然酔わないのであります)、ベランダのすのこに座って貝をつまみ、てっぺん(正午)過ぎるくらいになると漫画家さんから電話が入り始めるので、ケータイで話しながらてくてく歩いて(十五分)出社、その後早くて零時過ぎまで、平均して三時くらいまで仕事して、「近過ぎてすみません」と運転手さんに謝るのが面倒なのでタクシーに乗らずに歩いて帰宅し、夜のてっぺん(零時)頃に帰れた翌朝はまた海に出掛け(三時に帰宅したり、朝五時まで飲んで帰った翌日は昼まで寝てましたが)、大型のタイに取り囲まれたり、(↓)

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宇宙生命体みたいなアオウミウシを見詰めたり(↓)

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今から思えば実にタフな、そしてまあこうして書き出してみるとひどく反社会的……ではないけど、うん、非社会的なありさまでありますが海を満喫しておりました。

でもまあ当時は必死だったし、つまり仕事でそれなりによろしからぬものが蓄積してたし(若い頃は楽しいばかりの仕事だったけど、ある年齢からは社内政治みたいな黒い流れに巻き込まれるようになっちゃって……)、だから海でそのドロドロを洗い流す必要があったのであります。

千代田区内からわずか一時間で行ける芝崎海岸は、お盆を過ぎるとアンドンクラゲがうようよしているのでアンチクラゲクリームが必須だけど(何十匹ってアンドンに包囲されつつ無傷で突破できました!)、↓

ソラスズメダイ、オヤビッチャ、カゴカキダイ、ボラ、ニシキベラ、キュウセン、タコ、イカ、タイ、アオウミウシなんかに出会える貴重な穴場(いつだってすいてる、というかたいてい僕と妻の二人だけ!)なのでありました。

外房の仁右衛門島(にえもんじま)にもよく通いました。ウシノシタ(↓)やウツボ(↓)など

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ワイルドな生き物に出会えるし、ごつごつかつざらざらとした、ゾウの背中みたいな岩場が、(↓)

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陽光に照らされて白く輝いたり、かと思うと不意に凄みのある陰りを見せつけてきたり、のっぴきならなく美しく、力強く、スリリングなので仁右衛門島も僕は大変に好きなのでありました(ライターさんやデザイナーさんを、合宿と称して連行したりもしていました)。

すぐに行ける三浦半島、荒々しい美しさが魅力的な房総半島、シーイング(ってのは星空観望――こちらも僕は大好きなのでありました――の際の空の透明度をいう言葉だったかもしれないけど、ここでは海の透明度)が断トツの伊豆半島、どの海もとことん素晴らしく、一度行けば通わざるを得なくなるのでありました。

世の、よからぬ感染症がおさまりましたら、そしたらまたソラスズメダイたちに会いにきらきらとした海(和歌山――昔クジラを見ようとカツオ漁の船に乗せてもらったな――だとか四国――柏島や竹ヶ島など、まだ行ったことがないけど、カラフルなことこの上なかったあの沖縄の海に負けないくらいカラフルだと聞きます!――だとか、首都圏より南の海に黒潮を迎え)に行きたいです!

夏の空はいつだって、永遠に向かって開かれているように思うから。

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