第5話 3年ぶりの東京、そして勉強カフェ。

何かが、動き出した。


レールからは、外れた。


山陽新幹線「のぞみ」の車輪のこと?


・・・ではなかった。


高校、大学、就職。

全てを、同じ年齢の大多数が進むタイミングで、
それずにのっかてきた。


しかし、24歳になった今、


自分で、自分の人生の行き先を、

明確に心に従い・導かれた先から去ることを「決めた」、、、



製薬会社で勤めあげる人生もあっただろうに。

誰が、それを懸念する?


いや、誰もいない。


< お前が舵をとれ > 



「Captain of the ship.」





2011年9月23日



新山口から旅立った車両は、東京駅にたどり着いていた。




香水の匂い。



そして人、

人、

人。


空を見上げりゃ、馬鹿でかいビル。


その中を激しく通り抜ける、特有の冷たさを放つ風=ビルかぜ。

夜の闇を溶かす、ところかしこにあるサイン看板の色づかい。


全て、経済活動。


欲望のエネルギーが、具現化した

・・・東京。




この刺激だらけの街に戻ることになると思うと、ものすごく、ワクワクした。それはもう、すごかった。



スターバックス、エクセルシオール、ドトール、
タリーズ、ベローチェ、ルノアール・・・・


(今更だけどカフェの横に、またカフェがあるよ、スゲエェエ)


3年近くも都会暮らしから離れていたために、
感覚が鋭敏になっていたのであった。



カフェ・チェーンが乱立していることですら、目に映る全てが、輝いて見えた。




2011年10月1日

久しぶりの東京タワーがそびえ立つ、
芝浦の淀んだ空が、僕を迎えてくれていた。



田町という駅で降りた。



僕にとっては、
山手線の中のほんの一つでしかなかった駅だ。



北側には名門・慶應義塾大学があり、
南側には芸能人も多数住むと言われている
高級大規模マンションが立ち並び、再開発された芝浦アイランドがある。


初めて触れる街であった。


かつて通っていた國學院大学は「たまプラーザ」と「渋谷」にあり、
アルバイトも「あざみ野」や「市が尾」
住んでいる場所は「長津田」。
遊ぶ場所も、「溝の口」「青葉台」、

たまに場所を変えて「横浜・関内」。


生活は、田園都市線内で、基本的には完結していた。


京浜東北線の便利さを知ることもなければ、
三田線、浅草線がいったいどの場所に通じているのか、
そんなことも考える必要がなかった。



田町駅東口から、まっすぐ進み、「麻布ラーメン」がある交差点を
右に曲がり、3分ほど進む。



すると、「勉強カフェ田町スタジオ」が見えてきた。
※当時の名称は勉強カフェ田町ラーニングスタジオ(勉強カフェ田町LS)



予定時刻より早めに着いたので、
近くにあった、「肉のハナマサ」で缶コーヒー

< エメラルドマウンテン >を購入し、
八千代橋交差点をまたぐ歩道橋の下で、いよいよ始まる勉強カフェでの
日々の初日にたどり着けたことの感慨深さに浸っていた。



定刻が近づき、エレベーターを登り、扉を開けた。



代表の山村さん、当時のマネジャーS井さんが待ってくれていた。


「入社おめでとうございます!
これからよろしく。
荒井くんには、最初はアシスタントマネジャーとして、S井くんの下で
勤務してもらいます。
今後、勉強カフェは店舗を拡大していき、今は3店舗ですが2015年までに20店舗を目指しています。
いずれ店舗を任せることになるので、その日に向けて、これから一緒に頑張っていこう。」
(この目標はそのまま言葉通り達成された)


山村さんから、具体的な数値と、今後のビジョンが告げられ、抱負を語った。


「はい、よろしくお願い致します。
1日でも早く、マネジャーになりたいです。
そのために、日々全力で頑張りますので、ご指導をよろしくお願い致します・・・・」



晴れて勉強カフェ田町スタジオのアシスタントマネジャーとして、
勤務を開始することになったのであった。



2011年11月

1ヶ月が経過し、
勤務にようやく慣れ始め、
会員様とのコミュニケーションもスムーズに取れるようになってきていた。



今でこそ普通になっているが、


当時、驚いたことがたくさんあった。
仕事に関する凝り固まった概念が、いろいろ覆された。


転職経験者は、少なからず前職とのギャップを経験すると思うが、
自分もその一人だった。


製薬会社勤務時代、お客さんに該当するのは、病院の関係者だ。

忙しく院内を移動されいている最中に、話しかけたり、
診療の終わり合間をぬって、限られた時間の中で、コミュニケーションをとるのである。


つまり、<お客さんとはなかなか話す事が出来ない>との戦いであり、
これが普通だと思っていたのである。


しかし、勉強カフェでは違った。


(こんなに簡単にお客さんとコミュニケーションをとっていいんだ。そして、コミュニケーションを取れるんだ。すごい。)


なんと、話しかけに来てくれる事さえある。

し、製品説明をする必要がない。


会話をするまで、関係を作るまで、が、ものすごく大変だった事を経験しているので、
感動であった。


また、S井さんからお願いされた仕事で、
「FacebookやTwitterの投稿」
というものがあった。



当時、それらは完全に「遊び」として捉えていた。

だから、業務中にFacebookやTwitterを仕事としていじる、というのが、
とてつもなく新鮮であった。

(Facebook・Twitterを投稿する??
これって、、、仕事なん!?)


当たり前だが、MRの仕事に、「Facebookを投稿する」などという仕事はない。


しかし、まだまだ世の中に知られていなかった勉強カフェは、Facebookという新型SNSを使っているユーザーに
知ってもらうことは、新しい物好きの人にとって、何かしら気になるものになる可能性があり、そのまま集客になる。


遊びに見える仕事でも、価値さえ生めばそれは仕事になるんだ、
ということを初めて体験し、仕事とはマニュアルをこなすことではなく、
価値を生む。こういうことか、と、理解したのであった。



そして、会員様とカフェから出て飲食をともにするという機会も徐々に経験していき、そこでの気づきもあった。


僕は、まだMR癖が全く抜けておらず、
お客さんと食事するときには、すべてこちらでおもてなしを仕切るもの、という固定観念があり、
相手がドクターの時と同様、注文を率先してとったり、コートが着ている人がいればかけたり、
忘れ物チェックや会計まとめを行ったりすることに、今考えると異常なまでに敏感になり極め付けは、会員様の吸っているタバコが切れたら買いに走ったりしていた。


それ自体を嫌がる方はいなかったが、ある時、
「そんなに気を使わないでほしい」という風に言われて、


(ここでは、お客さんと店員、というポジションはあまり歓迎されず、
対等に近い立場で接することが居心地がいいとされるのか。)


という発見があった。

僕はこの自然体スタイルの方が性に合っていた。
求められていないので、
徐々に、「MR式飲み会術」を行うことは無くなっていった。



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(早く、マネジャーになりたい。

裁量権が増えたら、
自分で考えた勉強会やコミュニティをやりたい。
店内の、配置を改善したい。スタッフとのコミュニケーションを頻繁に取る会を開きたい。)


日に日に、<マネジャーへの憧れ>は強くなっていった。


そして、その日がいつ来てもいいように、アイデアを思いついては、
クラウドメモツール・「Evernote」に、記載していた。


製薬会社で、管理職(リーダー)としてのポジションに就くには、少なくとも10年は必要であった。
もちろん、そのポジションを目指して頑張っているわけで、
日々の業務の先にはそれを見据えていた。


勉強カフェ(ブックマークス)というベンチャーには、10年という長めの昇進に必要な時間は存在しなかった。


人数も限られており、早めに大きな裁量権を持たせてもらえるチャンスがあった。


実力さえつければ、行える仕事は無限に広がる。

成長のチャンスも、自分の志とアイデア次第だ。


ここに気づき、理解した僕は、業務を取得することのほかに、
業務を作ってもいいんだ、と思った。ワクワクした。

与えられるものはない。

自分で発見していくこと。


これこそ、まさに自分でカフェを開きたい、と思ったあの時の気持ちじゃないか。

そんな風に考えながら、アシスタントマネジャーとして鍛錬をこなすうち、勉強カフェに新たな展開が訪れる。


「フランチャイズ」という選択肢だ。


北参道、秋葉原、田町、と全て直営での店舗展開を行っていたが、
4号店として上がった候補先は、池袋。


勉強カフェは、新たな体制を模索し始めることになり、
それに付随して、自分自身も導かれるようにステップを踏んでいくことになる。



第6話へ続く。


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作者 : 荒井浩介 株式会社ARIA代表取締役
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勉強カフェ大阪本町/大阪うめだ official WEB : http://benkyo-cafe-osaka.com/
※勉強カフェ®は株式会社ブックマークスの登録商標です。 勉強カフェ大阪本町/大阪うめだは、勉強カフェアライアンスのメンバーです。


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