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【先読み】うみやまのあいだのひとしずく①

今明さみどり『ひとしずく』(幻冬舎、2023年2月発売)
noteに児童小説を書き続けていたら、本になりました|うみやまのあいだ、あめつちのからだ|note

その前身となった『うみやまのあいだのひとしずく』の冒頭数ページを三回に分けてご紹介します。


私たちのそば、どこにでもいる水滴の一粒〈ひとしずく〉が主人公の物語です。
はじまり、はじまり。


うみやまのあいだのひとしずく


 これは、小さな小さな、とてつもなく小さな、あるひとしずくの物語。
「ひとしずく」? それってこれから登場する人物の名前かって?
いいえ、ひとしずくはひとしずく。この世界に生まれた一滴の水の粒。彼こそが、この物語の主人公。例えばあなたが部屋でゆったりと好きなことをして過ごしているとき、サァーサァーと音が聞こえてきたら、雨が降ってきたかしらと思うでしょう。するとやっぱり、窓には雨の水滴たちがぶつかって、それがツーッと窓の下の桟へと流れていたり。あるいはあなたが大切な愛犬とお散歩に出かけたとき、雨上がりのいつもと違う匂いにわくわくして、つい一緒になって水たまりにとびこんだりするでしょう。すると、長靴をはいたあなたの足元から、水たまりの水滴たちがチャプチャプと音を立てながら軽やかに飛びはねていたり。お水を飲んだときに締めたはずの蛇口から、放っておかれた水滴たちが流しにぶつかってポツリポツリと音を立てていたり。もしかしたら、ハクションッとくしゃみをした拍子にあなたの口から飛び出していたり。こんな風にして、普段は気にも留めないだけで、あなたはきっと、どこか身近なところで何度も何度もひとしずくの誰かに必ず会っているはずです。
でも、これからお話するひとしずくには、まだ出会ったことがないでしょう。なぜってこのひとしずくは、今も自分が生まれた森にいて、まだ一度も、その森から出たことがないのですから。

©うみやまのあいだ、あめつちのからだ


改稿版・続きはこちらから。
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ひとひと
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©うみやまのあいだ、あめつちのからだ
https://umiyama-ametsuchi.com/

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