雨宮美奈子

海外生まれのハーフ.Tokyo

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第1回歌舞伎町文学賞 大賞受賞作 『サビオ』 雨宮美奈子

 サビオ   雨宮美奈子  午前3時。今は深夜なのか、もうすぐ朝なのか。  この時間に歌舞伎町ゴジラ前の『きづなすし』のカウンターで、眩しい蛍光灯に目をチカチカさせながら食べる寿司は、なぜだか妙に美味しい。 「ねえ、知ってる?」  いくらの軍艦の上に乗るいくらだけを、なぜか一粒ずつ箸でちまちまと食べながら、マイコは本当にどうでもよさそうに、横にいる僕に目線も合わせずに話し始めた。 「この店の向かいにさ、リンガーハットあるじゃん。ゴジラ前のとこ、小さいけど」 「うん、リ

    • わたしはメンヘラじゃあ、ない【メンヘラリティ・スカイ寄稿文】

      ※ こちらの記事は200円で販売させていただいていましたが、販売期間を終えたので値段を吊り上げさせていただいております。(購入者のために消さないようにしております、ご容赦ください) 手首をきる、わけじゃあない。 オーバードーズして運ばれるわけでもなければ、 精神科に入れられたこともあるわけじゃあ、ない。 それでも過去の恋人たちに、わたしはどうして、 どうして『メンヘラ』だって言われなくちゃあ、ならないのだろう。    まっさらな傷跡ひとつない手首を、  自慢にもなら

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      • 母と娘なんか、仲良しなもんか

        母と娘が、心の底から憎しみあわずに美しく、それはもう美しく『理想的な母と娘』として心から通じ合うようになれるのって、いつになればなれるんだろうか。母が私を産み落としてくれて、その瞬間から母と娘になるけれど、そこから何年経ったらなれるんだろうか?つまりわたしが何歳になれば、なれるもの、なんだろうか? 台所に立つ母を娘は素直に尊敬し、愛らしい娘を母は愛でる。 そういう風なまるでマイホームを持ちましょうっていうコマーシャルに出てきそうな母と娘、なひとたちって、物心がついた頃から

        • わたしは地方の片隅で、ジャージを着てパチンコをまわしていた

          わたしはきっと、夢をみていた。東京。あの街へ行けば、わたしは何者かになれるのではないかと、ずっと思っていた。 今思えば、わたしの東京との接点はインターネット、だけだった。Twitterで東京の人と気軽に絡む瞬間、わたしは地方の福岡の小さなアパートの一室にいることを忘れてしまう。それが何より面白くて、夜な夜な、毎晩深夜までTwitterを眺めていたのが10代の終わる頃の話。大学一年生の頃の話。 あの頃、地方からインターネット越しに見た東京は、毎日が刺激的なように映った。Tw

        第1回歌舞伎町文学賞 大賞受賞作 『サビオ』 雨宮美奈子