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壁を白く塗ったら、心も整った話。

今の住まいは、賃貸の一軒家。

大家さんが、別荘として購入したようだったが、
管理に手が回らないようで「誰でもいいから、とにかく住んでほしい」という状態だった。

家賃を格安にする代わりに、何かあっても自分達でケアをすることが条件で、「DIYもお好きにどうぞ!」という少し珍しい物件だ。

築30年の和風なこのお家。

見つけて内見に行った時、確かに古さはあるものの、所々リフォームされていて設備は問題なし。

長年お掃除がされていなかったので、決して綺麗とは言えないものの、細かなところまで掃除したり少し手を加えたら、「きっと素敵な家になるだろうなぁ」という印象だった。

ただ1つ、すごく気になったのが壁だ。

ほとんどの部屋の壁が、暗い黄土色。
触るとポロポロと壁が落ちてくる昔の和室仕様だった。

その時、住んでいたマンションは、真っ白な壁。
とても綺麗なお部屋だったので、引っ越してから気分が落ちないだろうか….と、悩んだ。

だけど、それでもやっぱり住んでみたい!住んでみないとわからない!と、半ば流れに身を任せて入居。それから1年半が経とうとしている。

プロ用の超強力洗剤を購入して、長年の汚れをしっかり落としたり、お部屋の細かなところまで掃除をしたり、障子を張り替えたり、気になる水回りの蛇口を交換したら、みるみる綺麗な住まいへ。

そして、家をケアするたびに、不思議と愛着も出てきたのだ。

新築のような綺麗さは全くないけど「この家がいい!この家だからいい!」そう感じるようになっていった。

それもあってか、気になっていた壁に関しては、日に日に見慣れていった。

「これはこれで落ち着くカラーなのかもしれない」そうどこかで受け入れてしまっている自分がいた。

だけど先日、なんだか良さそうな塗料を見つけてしまい、ちょっと重い腰を上げて、壁塗りにトライしてみたのだ。

それがとても面白くて、気持ち良い。
何日かに分けて、塗りたかった全ての壁に塗ることが出来た。

古いくすんだ壁が真っ白になっていく。

塗料を重ねるたび、生き返るように綺麗になっていく壁。

仕事柄、ネットの世界にいることも多い私は、気づかないうちに頭が情報過多になりがちだ。情報に圧迫されてしまって、自分の本音がよくわからなくなる。

それを無心で壁を塗ることで、心の奥では感じていたホンネと向き合う時間になったのだ。自分の心も「今目の前にある壁みたいに、真っ白なキャンバスのようになったら、私は何を描くだろうか?」そう思った。

20代は貪欲に夢を語って、目標に向かってガツガツと生きてきたのに、30代になった今は、どこかふんわり生きている。

良く言えば「肩の力が抜けて、しなやかなに生きれるようになった」と表現できるけど、悪く言えば、叶わないこともいくつか経験し「今の現実を受け入れる諦め」も知ってしまったのだと思う。

理想と現実が違うという事実に直面した時は「どうしても、こうしたい!こうなりたい!」と、地団駄を踏みながら、力強く行動出来てたのに、今は「まぁこれも人生かな!」って、どこか楽な道を行こうとしてしまう。

もちろん、どうにもならない現実を受け入れることも、一種の「強さ」だ。そして、それを知ることも必要で、そうでないと、時には本当に自分自身を苦しめてしまう。

だけれども、それだけになってしまったら?

それで自分を納得させ続けてしまったら?

「あれ?私って何がしたかったんだっけ?」って、そう思う日が来る。

というより、なんか今、そう感じてしまったのだ。

黄土色だった壁を受け入れられたように、そういった世界も穏やかで悪くない。

だけどやっぱり理想を持って、それを現実にする「力強さ」や「覚悟」は失ってはいけないこと。

「ホントは黄土色ではなくて、白い壁がほしい!」そう思ったら、自分で白い壁を作ったらいい。それを現実にしたらいい。

そんな強い気持ちで、もう一度これからを見直してみようかと思った。

壁が白くなったら、まるで新しいお家に引っ越しをしたような気分になった。この新鮮な気持ちで、やりたいって思うことを進めていきたい。

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