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ついに「再現性の高い理想の炒飯」にたどり着いた

家庭で作る炒飯のレシピについては、様々な人が検証を重ね、独自のレシピを発信しています。

いかにパラパラに、それでいて噛めば噛むほど旨味が広がる芳醇さをコメに内包させられるか。いかに「(多くの場合は「町中華」を指して)お店の味」に近づけられるか。

クックパッドを開けば、30,000を超える「マイレシピ」が集合していて、各人が上記のゴールイメージを再現するために、「こうすれば失敗しない」という手順を公開しているわけです。

ターニングポイントとなった一本の記事

結論から言えば、各家庭のファシリティ(コンロの種類、出力、鍋の種類など)が違うため、それらの手順を忠実に守っても、ベストな仕上がりになるとは限らないでしょう。

僕自身、新たな“ティップス”を知れば、それを用いて炒飯作りにトライしてきましたが、たとえ一度はラッキーストライクで上手にできても、2度3度と同じ味を再現できないことにストレスを感じていました。

そんな中、オーストラリア移住以来、100日間毎日昼食を作り、そのうち週3回は炒飯がセレクトされるという生活を続けた結果、ついに、必ずゴールイメージ通りの炒飯に仕上がる、恐ろしく再現性の高い手順に辿り着くことができたのです。試行回数もすでに20回は超えているのでもう間違いないと思います。

再現性のなさと不安定なクオリティに苦しんでいた僕にとって、大いなる転機となったのが、JAYさんのこちらの記事です。

あらかじめ断っておくと、レシピ全体で言えば、JAYさんのものと僕のものでは手順も具材も調味料も違います。

「中古の油」イズ エブリシング

インスピレーションとして最大級のインパクトがあったのが、「唐揚げに使った古い油を使用する」という部分です。JAYさんの記事によれば、その方法は、ツウたちにとってはある程度常識となっている知識のようでしたが、僕はそれまで全く知らなかったし、そもそも「これから作る料理に揚げ物油を再利用する」という考えなど持っていませんでした。

そして、その時運よく、前日トンカツを揚げた油がコップの中に入れてコンロの横に置いてあったのです。

試してみるとこれが大ハマりで、中古の油で作った炒飯は、これまでにないちょうど良い食感と、香ばしい油の旨みを感じる仕上がりとなりました。中古の油であることが、特に米の食感にどう影響を与えるのか、僕にはさっぱりわかりませんが、とにかく理想のゴールイメージを毎回再現するためのキーポイントは間違いなく「中古の油」だ、と、その時確信したのです。

揚げ物と炒飯の相乗効果

これは僕にとって別の意味でも朗報でした。

これまで、僕は揚げ物メニューを避ける傾向にありました。そもそも揚げ物を作ること自体が苦手である、ということがメインの理由ですが、その次に大きな理由として、「油の処理が面倒」というのが心のどこかにありました。

もちろん油はそのままシンクに流せません。固めるテンプル系の処理剤をストックすればいいことなのでしょうが、それすらもやっていなかったということは、その手間がかなり大きな心理的ハードルとなっていた、ということなのでしょう。

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しかし、これまで邪魔な存在でしかなかった中古の油が、極上の炒飯を生み出す資源になると知った今、炒飯を作るためにも積極的に揚げ物に取り組むことができます。

メニューのバリエーションが広がり、かつ炒飯が美味しくなる——家族の幸せがそこには詰まっています。

俺の炒飯レシピと手順

ここからは、再現性の高い炒飯について、我が家のファシリティ、具材と共に解説していきます。冒頭に述べた通り、家庭ごとのファシリティの違いがあるため、これをトレースすれば成功する、という保証はありません。あくまで「我が家だとこれで必ず理想の炒飯ができる」というものなので、参考程度に考えてください。それでも、この中からいくつかのヒントが見つかれば幸いです。

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特に何の変哲もない、IKEAで入手した片手中華鍋(と呼んでいいのかわかりませんが)です。

コンロ

ガス。やはりガスコンロの方が炒飯に関しては圧倒的に上手くいくと、僕は感じています。

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Sun Riceのミドルグレインライス。こちらで手に入る安価な米の中で最も日本の米に近いものです。やや香りにクセがありますが、水分を吸いにくく固めに炊き上がるため、パラパラ炒飯にはぴったりです。僕はいつも前日の夕食用に炊いた冷や飯で炒飯を作りますが、この米ならむしろ炊きたてでちょうど良いぐらいかもしれません。

調理が上手くいく米の量は、一回でだいたい1.5合〜2合ぐらい(我が家の食卓で3人前ぐらい)がマックスだと感じています。

具材

基本の具材は非常にシンプルで、大抵ベーコンとネギのみです。ハムでも代用できると思いますが、こちらではベーコンの方が安い&おそらくベーコンの脂も旨みに一役買っていると思われるので、レギュラーはベーコンです。

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ネギはいわゆる「Spring Onion」です。日本の長ネギより香りが強めなので、ネギ好きにはたまりません。日本で売っている長ネギを使った方が美味しいかも知れませんが、入手しづらいのでそこは検証できていません。

それぞれの量は、上記の米の量に対して、ベーコン1枚(20cmぐらい)と、ネギ1本です。食感を合わせるイメージで、それぞれ同じぐらいの大きさに細かく刻んでおきます。

中古の油の次に重要だと感じているのが卵の量です。気持ち多めに、上記の米の量(1.5合〜2合)に対して最低3個は使いたいところ。炒飯を食べる人1人あたり卵一個を使用するイメージです。

すると、よく語られるティップすの一つである、「卵かけご飯を先に作る」をしなくても、卵が鍋の中で固まる前に米全体をコーティングしてくれ、全体が黄金色に仕上がります。

調味料

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僕の場合は、粉末状の鶏ガラスープの素、塩、胡椒がマストの調味料で、気分によって仕上げにゴマ油を香りづけのためにちょいと垂らしたりします。よく、「仕上げとして鍋肌に醤油」というレシピを見かけますが、やらなくても美味しいのでやってません。

手順

まず、火力は最大で鍋を熱します。鍋がチンチンに熱くなったら中古油を投入します。ここは気持ち多めに。このあと溶き卵を投入しますが、溶き卵が水没(油没?)するぐらいが目安です。すると、卵が一気に固まることなく、油とともに米一粒一粒をコーティングしてくれるのです。美味しい炒飯を作るためには、ダイエットや健康のことなど気にしてはいけないのです。

油は一瞬で熱されるので、鍋肌側面にも一応、油を回しておきます(IKEAの鍋はテフロンなので、すぐに油が鍋底に流れ落ちてしまい、この行為に意味があるかどうかはわかりませんが)。

次に、溶き卵を投入します。この時すぐに卵が凝固してしまうと失敗します。すぐに凝固するということは卵の量か油の量、あるいは両方が少ないです。

溶き卵を投入したすぐ後に、米を全量投入します。そして、卵が固まる前にヘラで全体を何度かひっくり返しながら、米全体を卵と油で包んでいきます。

全体が馴染んでくると、米が液体を吸い上げて、鍋の音が甲高い感じに変わってきます。ここで具材を投入し、混ぜる前に調味料も続けて投入します。鶏ガラスープは付属の小さいスプーンで1杯、あるいは濃いめが好きなら2杯入れてもいいかも知れません。塩は、我が家はミルなので3ガリ〜5ガリ(米の量によって調整)、胡椒もミルなので同様に3ガリ〜5ガリです。

全てを投入したら、あとは混ぜるのみです。世間のティップスには「家庭用のコンロは火力が弱いため鍋は煽らない」というものがありますが、僕は煽ります。これは調味料を混ぜるという意味合いと、「炒飯作ってるぜ〜」感を味わうためです。「作ってるぜ〜」という陶酔感が大事なのです。

それからもう一つ、パラパラ具合を確認するためにも煽りは有効です。上手く煽れる=いい感じにパラパラ、なのです。ちなみに、炒飯が絶好調にパラパラ、かつ煽りのスキルが未熟な場合、キッチンの床を米粒だらけにします。もったいないです。

具材と調味料が全体的にいい感じで混ざったら完成です。気分によって香りづけのゴマ油を垂らすこともありますが、なくても全然イケます。

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見た目にも黄金色の美しい炒飯です。家族から僕のメニューで唯一、「お店レベル」のお墨付きをもらっています。

ウチはまず大皿に盛り付けてサーブし、各自がよそうスタイルで食べるのですが、子供がよそう際に食卓に米をバラ撒きまくるので注意すると、「おとうがパラパラに作るからだよ!」と言い訳をします。最高のホメ言葉かよ!

僕にとっての理想の炒飯は「天虎(芝公園)」のサイドメニュー

ちなみに、僕が人生において最も美味しいと感じた炒飯は、町中華のものではなく、ラーメン屋さんのサイドメニューとして提供されているものです。

ここは、「一三五(麺固め、味濃いめ、油多め)」という符丁オーダーでお馴染みの六本木「天鳳」の流れを汲むラーメン屋で、かつては武蔵小山にお店を構えていましたが、15年ほど前に現在の芝公園に移転しています。

寡黙なご夫婦が営んでおり、元祖天鳳よりも上品かつ力強い豚骨醤油ラーメンが美味しい店なのですが、お昼のピーク時以外にしか食べることができない炒飯が最高に美味しいのです。

サイドメニューなのでサイズ的には半炒飯といったところでしょうか。具材はシンプルにチャーシューとネギを刻んだもので、パラパラなのにふっくらした米と、噛むごとに少し甘みを感じる脂の旨味が、パンチの利いたしょっぱいラーメンとの相性抜群なのです。

そして、ご主人が炒飯を作るときの所作がまた美しい。ひっきりなしにオーダーが入るラーメンを作るスキを突いて一気に仕上げるためか、めちゃくちゃ動きが豪快かつ機敏で、一瞬たりとも無駄な動作がありません。特に、鍋を、膝を使ってリズミカルに煽るときのアクションは痺れるほどクールです(ちなみにご主人はラーメンを作る所作も全て膝を使っています)。

僕が炒飯を作るときも、いつも天虎のご主人の動きをイメージしています。

着丼を待つ間、いつもその動きを観察しているのですが、炒飯の仕上げの煽りに入る前に、いつもトロリとしたクリアな液体を鍋に投入しています。

あれはラード?鶏油?聞く機会がないまま、オーストラリアに移住してしまいましたが、きっとその液体こそが、香ばしさの中にも甘みがある炒飯に仕上げる秘密だと思っています。

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