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グッときて泣ける、テクノロジーの本

少し前に読んだ本の感想をFacebookにあげていたのだけど、こちらにも貼っておくことにしました(たまには、FBにあげたものもこちらにストックしよう)。

林要 著『温かいテクノロジー AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険』(ライツ社、2023年5月)

この本、相当面白くて刺激的。これだけの内容をここまで咀嚼して書ける、林さんの能力の計り知れなさに触れられただけでもありがたい。

LOVOTの単なる販促本でないのはもちろん、研究開発者の苦労話とか武勇伝でもない。ここにあるのはタイトルにあるとおり「AIの見え方が変わる 人類のこれからが知れる 22世紀への知的冒険」。

LOVOTは、偶然リリース時2019年暮れ頃に知りました。どうやら、そんじょそこらの「おしゃべりロボット玩具」とは訳が違うらということは直感的に思ったものの、どう違うかがわからなかった。お店でデモ販売してるオネーさんとかは、「かわいいんです〜 名前覚えてくれます〜 呼ぶときます〜 あったかいんです〜 ひとつひとつ性格がちがうんです〜 だっこしてみてください〜」っていう、ハイハイ...みたいな説明しかしなかったし。

今も異様にぬいぐるみが大好きな私であるが、もともと、おしゃべりロボット玩具みたいなのに、よく年配の人たちが孫のように可愛がってハマっていく、みたいなからくりもよくわからなかった。

きまりきったスイッチに対して、数通りの答え方がインプットされているだけ。その何種類かのバリエーションに対して、なぜそんなに喜べたり、愛着がわくのか。”じゃない”タイミングで、”じゃない”反応をされたりしたら、私なんかはものすごく興醒めする。

もうちょっと賢いはずのうちの「アレクサ」なんかでも、ときどきものすごいトンチンカンな返答をしたりしてきて、ちょっとイラッとしたりする。

LOVOTは、そういうのとはどうやら違うみたいだけれど...。

この本を読めばその仕組みがわかるかな、くらいな気持ちで買ったのだけれど、とんでもない。もはや哲学書だった。

愛とは何か、感情とは何か、生きるとは、自我の生成とは...

もちろんLOVOTが単なる「このスイッチにこの反応」という仕組みでないこともよくわかった。特定の計算に基づいていたプログラムでもなく、LOVOTは不安・興味・興奮の三つのパラメータを軸としながら、それぞれが有機的につながり、複雑な表現が自律的になされるのだ。そこに人間は「喜んでる」とか「悲しそう」とか「なついてくれた」とかの感情のようなものを覚えて、愛着が湧くという仕組み。

その仕組みを考えていく過程で、人間そのものの在り方、知能の形成の分析が必要なわけで、ロボットを考えることは、人間そのものへの深い理解がないと作り得ない。

本の中では単なる人間分析だけでなくて、ダイバーシティやインクルーシヴの思想がなぜ重要なのかとか、人生100年時代の人間にとってアンラーニングがいかに重要なのかとか、まさに今の社会課題や、必要な視点についてもわかりやすく伝えられる。

「家族型ロボット」を実現したいと願う熱意ある人のさまざまな視点と蓄積たるや凄まじく、先を見据える能力の高さといったら説得力にあふれていて、こういう人が、一つ年長だけど同世代の人でいるということに、ロスジェネ世代としては本当に「良かった」と思えるし、絶望しないですむ感覚を得られる。

開発者で著者の林さんの蓄積・発想・熱量、人類への希望を知った上で、LOVOTに触れ合ってしまったら、なんだか泣きそうになった。

50万円プラス月々の費用。開発への投資、エール、そして希望を共有しながら生きていけるなら、まったくもってその価値はある。

ただね、今はその費用があるなら一回でも多くお灸治療を受けさせてあげたいワンコと、嫉妬であちこちにシャレにならない攻撃を仕掛けるニャンコがいるので、今はこのプロジェクトに加担できないわ...。でもいつか。

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