ありすさおり(有栖沙織)

ライター/エッセイスト。2022年に婚約して入籍し、プレママになりました。こちらにもエ…

ありすさおり(有栖沙織)

ライター/エッセイスト。2022年に婚約して入籍し、プレママになりました。こちらにもエッセイを投稿しています。https://mirror.asahi.com/author/11011224 すべては必死に生きてきただけ。私の生き様が人生となる。

最近の記事

「つわりがない」だけで、楽なわけではない

「妊娠した」って報告した時に、99%の確率で聞かれたのが『つわり』に関することだった。 身内や昔から仲のいい友達には、発覚してから早めに報告していたから、ちょうど妊娠2~3ヶ月頃。 ちょうどつわりが出る頃だから、それを心配するのも当然のことかもしれない。 たしかに、ラッキーなのかもしれないラッキーなことに、私はいわゆる「つわり」といった症状はそこまで出ていなかった。 もちろん食べ物によっては匂いで気持ち悪くなることはあったし、急に吐き気に襲われることもある。まぁ、異常な眠気

    • 育児のために個人事業主になったのに、問題だらけの日々。

      社会人2年目が終わる頃、新卒で入社した会社を辞めた。 あの頃は、不動産会社で営業をしていた。 数字を出していれば比較的自由だったから、自分の着たい色のスーツを着て、好きなネイルや髪型で、少し高めのヒールを鳴らしながら飛行機で全国どこでも出張に行った。 今思えば少し背伸びしているようにも感じるけれども、あの頃は全力で自分の憧れるキャリアウーマンを楽しんでいたんだと思う。 実際、仕事も上手くいってすぐに出世したし、給料も上がった。 会社の人とも家族のような関係性で、仕事以外の

      • プロポーズ・結婚・妊娠。夢物語がノンフィクションだと知った2022年。

        子どもの頃から、何となく「お嫁さん」「お母さん」になるのが夢だった。 20歳には結婚してて、22歳には自分の子どもがいて、幸せな家庭を築いていることを信じて疑わなかった幼少期。 そこから20年以上たった28歳の私も、やはり何処か幸せな家庭に夢を抱いていたと思う。 結婚って恋愛の先にあるんだと思ってた婚活なんて本気めいたことはせずに、何となくこの人と結婚するんだろうな、って思う人と出会った2021年。 付き合ってすぐに同棲し始めて、あぁやっぱり恋愛と結婚は違うんだなと、今ま

        • 私だけのホワイト企業

          *過去記事。 7月初日。なのに暑すぎる。 サウナやら、電子レンジの中やら、ニュースでいろんな例え方がされとるけど、個人的にはもはや「せいろ」の中やと思う。 別に焼売やないんやけん。 温度と湿度でおいしく仕上げんでくれんやか。 って玄関のドアを開ける瞬間から、クーラーの下に戻ってこれるまで、ずっと心の中で唱えてる気がする。 毎日、会社に行っている人からしたら、もうずっと前からこうだったよって思うかもしれんけど。 家に引きこもって快適な生活をしている私からすれば、いきなり夏

        「つわりがない」だけで、楽なわけではない

          夜になれば、違う自分になれると思った。

          夜になると、何故か安心する。 車が少なく、街灯が少ない3号線の道をただひたすらに車で走るのが好きだ。 見えない先に向かって50kmくらいで走っていくと、深く底がない暗闇に吸い込まれていくような気がする。 そんな一時に、心が癒されるような感覚すらする。 それくらい、私はきっと夜を愛している。 __________________________ そう思うようになったのは、大学4年生の頃からだ。 体育大学に通うのももう残り少なくなったある日、友達の紹介で夜のお店で働き始め

          夜になれば、違う自分になれると思った。

          たわいもない僕らの日常

          「ねぇ本当に私でいいの?」 ふとそんなことを聞いてみた。 「そんなこと聞かないでも分かるでしょ」 君は目を逸らしてそう言った。 「ねぇ。どうして僕のことがそんなに好きなの?」 君は唐突に尋ねた。 「あなたがあなただからだよ」 私はまっすぐに目を見て答えた。 こんな何でもない日に唐突に始まる会話が好きだ。 聞かなくても分かるようなことを聞いてみたい日があるらしい。僕らには。 「お酒買ったらグラスがもらえるんだって。 思わず2つ買っちゃったよ」 涙の絵文字付き

          たわいもない僕らの日常

          私が毎日救われる世界

          なんとなく涙が出る日が続いた。 特に理由はない。 それでも心がなんだか悲しい方に傾いて誰かとずっと抱き合って泣いていたいような、そんな気分を抱えていることが続いた。 仕事のせい? いや女性ホルモンの影響か? それともこのコロナ化の変わってしまった日常にちょっと疲れてしまったのか。 コロナで人と会えない日々に、別にそれでも関係ない。 今はただ家に引きこもって仕事を頑張る時期なんだと 自分に言い聞かせてアクセルを踏み続けてきたその摩擦が今、どっと訪れてきたのかもしれない。

          私が毎日救われる世界

          深夜0時のカラオケボックス

          深夜0時のカラオケボックス。 騒がしいサラリーマンばかりの街並みを抜け出して、小さな個室に2人で逃げ込んだ。 先にソファに嬉しそうに座る君。反対側のソファにゆっくりと腰をおろす僕。 こんなにもカラオケボックスのテーブルって大きかったっけ。 何だかいつもよりも君との距離が遠い気がする。 恋人同士なら自然に君の隣に座ったりするのだろうか。 君の一番近くで、君の笑顔を見ながら、ラブソングでも楽しそうに歌うのだろうか。 でも、今の僕にそんな勇気があるはずもない。 ふいにデンモクに伸

          深夜0時のカラオケボックス

          もう一度、きみの言葉に鍵をかけたい

          平成という時代に生まれた。 物心ついたころには、もう大人が1人1台携帯電話を持っているなんてのは当たり前の時代になっていた。 高校生になって初めて買ってもらえた携帯電話は、淡い水色で折り畳み式、今ではガラケーと言われているものだった。 もう携帯電話と言えばスマートフォンが当たり前となっているこの時代に生まれた子供たちには、あの無駄に大きく響き渡る開閉音も、数字と文字が並ぶ存在感のあるボタンも、過去に使われていた不思議で不便な機械、という認識になってしまっているのかな、なんて思

          もう一度、きみの言葉に鍵をかけたい

          苦しくて。何も無くて。 そして。

          何も見えない。何も聞こえない。何も書けない。 真っ暗闇の複雑な迷路のど真ん中でただ一人。 向かうあてもなく、歩を進める気力もなく、道を示してくれるものもなく、この状況を共有できる友もおらず。 唯一できることと言えば、今立っている足元にできる限り小さく膝を抱えてうずくまり、過行く刹那を淡々と感じていることだけ。 そんな虚無と喪失の入り混じった何もない混沌の世界に、いつの間にか僕の日常は変わっていた。 突如会社を辞めて物書きになると決めてから約1年半。 がむしゃらに、必死に、た

          苦しくて。何も無くて。 そして。

          雨も滴る強がり女

          「ねぇなんでそんなにいつもダメ男ばかり捕まるの? 」 クズみたいな男にふられたばかりの女に、彼女は出来立てのパスタを少し冷やすように息をふきかけながら、半分呆れた様子でそう言い放った。 「んーん。あえて選んでるわけじゃないんだけどさ。」 宙を仰ぎながらも、いつもよりも少し丁寧に言葉を選びながら、女は話を続ける。 「なんだかさ、基本的に私は何が起きても大丈夫なんだよ。 大丈夫というと、ちょっと違うか。 今でもこんなに落ち込んで話を聞いてもらってるんだから。 まぁ大

          いのちの子守唄

          今日も今日とて、僕の心臓は止まることなく一定の速度で鼓動を刻み続けている。 いつもだいたい同じ時間におなかが鳴って、大きなため息の後にはゆっくりと深く酸素を吸い込んでしまう。 そんな当たり前すぎる不変の事実にさえも、今はもう絶望に似た苦しみを感じてしまうのはどうしてだろう。 僕はもう早くも僕の人生に絶望しているのに。 僕の孤独も哀しみもつゆ知らず、この体は今この瞬間も、そのいのちを明日に繋ごうと、変わらず気づかないところで活動し続けているんだって、そんなことをありがたいとも

          拝啓、神様。あれは恋でした。

          おそろいのマグカップの片割れだけを使ってコーヒーを飲むとき。 よく2人で過ごせる夜に聴いていたジャズをかけて布団に入る時。 街を歩いていてよく似た白い車をみかけた時。 あなたが僕の隣にいたことがふと蘇ってきては、慌ててそれをかき消して、寂しさに少しだけ泣いて、涙を拭いてまたいつもの生活に戻る。 そんなことの繰り返しをして、僕は今生きています。 大好きだなぁって思ったりして。 でも大っ嫌いだなぁなんて思って。 それでもやっぱり心の底から嫌う事なんてどうしてもできないから、せめ

          拝啓、神様。あれは恋でした。

          虚しい自慰と愛のない営み

          鼻をつーんとした涙の香りが通ると、同時に奥底からの感情が枕を濡らす。 ここ最近、一人布団の中でそうして丑三つ時を迎えている。 エアコンで思った以上に冷やされた布団の中にもぐりこみ、寂しく冷たい体を自分で慰めながら、快楽の絶頂に達した時、これまで感じたことないほどの喪失感と虚しさに包まれ、涙と変わり溢れ出す。 「誰かそのままの私を愛してよ」 何も考えることができなくなった真っ白な頭に浮かぶ前に、嗚咽とともに無意識にそんな叫びが口から洩れる。 形となったその想いを改めて耳にし

          虚しい自慰と愛のない営み

          夜が怖くなったのは誰のせい

          あれだけ愛していた夜が今はもうたまらなく怖い。 昔は眩しすぎる朝日によって暗闇が照らされるのがどうしても惜しくて、だんだんと赤い夕焼けが消えて星が出てくる夜が恋しくてたまらなかったのに。 今ではもう、この暗い闇が私のすべてを飲み込んでいってしまうような気がして。 たった一人きりの孤独な世界に導かれているような気がして。 もうこなければいいのに、早く去ってくれればいいのに、なんて願いながら、時計の針が12時を回る前には一人ベットの中で眠い目をこすりながらも、なかなか眠りにつけ

          夜が怖くなったのは誰のせい

          どうか、僕の嘘を見抜いてよ。

          車に乗り込み、勢いよくエンジンをかける。 聞き慣れたアップテンポのロックバンドの曲が、朝の静寂に似合わないほどの大音量で流れ出すのに便乗するように、蓋をして押し込めていた情動がだくだくと溢れだした。 歪んだ景色をごまかすように何度も目をこすりながら、何とか見つけた帰り道沿いのコンビニに吸い込まれるようにハンドルを切った。 エンジンを切り、イヤホンをつけて車の外に出て煙草に火をつける。無意識に出てしまいそうなため息をごまかすように、いつもよりもゆっくりと、ふぅぅっと息を吐きだし

          どうか、僕の嘘を見抜いてよ。