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問題解決力を高める「推論」の技術

「問題解決力を高める推論の技術」(羽田康祐 k_bird  著)


1. はじめに

・正解から推論へ
VUCAの時代、未来が未知である以上、世の中に絶対的な正解は存在しない。推論力によって問題を解決していく。

推論力とは何か
未知の事柄に対して筋道を推測し、論理的に妥当な結論を導き出す力

・分析と推論力
分析は、事実と事実の関係性を推論で解明していくプロセスであり、推論力が必要。

・ビジネスと推論力
推論力はビジネススキルの中核に位置する。以下は企業経営資源のVRIOフレームワークと照らし合わせた推論力。
Value(価値):情報や知識と異なり、オリジナルの価値を生み出せる
Riality(希少性):同じく情報とは異なり流通しづらいため希少性がある力
Imitability(模倣可能性):推論力は時間をかけて真似しづらい力
Organization(組織):ビジネス思考、コミュニケーション、提案力など


2. 帰納法

帰納法は、複数の事実から共通点を発見し、結論を導く推論法。

・帰納法の例
事実1:会社Aの上田さんは真面目な性格だ
事実2:会社Aの金谷さんは真面目な性格だ
事実3:会社Aの石田さんの真面目な性格だ
→ 結論:会社Aは真面目な社風だ

・帰納法の留意点
1:事実に偏りがある場合(事実に代表性があるかに注意)
2:共通に飛躍がある場合(共通点を恣意的に抽出しないように)
3:結論に飛躍がある場合(共通点から恣意的な結論に飛躍しないように)

→ 限られたサンプルから全体に当てはめる性質があるため、飛躍を0%にすることはできない。

・共通点から新しい価値を見出す
事実1:水は飲めるもの
事実2:水は洗えるもの
事実3:水は火を消せるもの
→一見、共通点がないが、モノをコトとして捉えた例。モノからコトを抜き出すと新しい価値が生まれる。共通点の発見は抽象化と多面的な視点が必要。

・2種類の帰納法
1 観察的帰納法:事実を観察し直接的に共通点を発見する帰納法
2 洞察的帰納法:洞察を通して共通点を発見する帰納法

洞察的帰納法によって、見えている事実だけでなく、見えない共通点を見抜く。例外を発見して可能性を広げる。

3. 演繹法

演繹(えんえき)法は、前提となるルール(規則など)に当てはめて、当てはまるか当てはまらないかで結論を導く推論法。前提となるルールがあるのが特徴。そのため誰しも同じ結論にたどりつきやすい。

・演繹法の例
ルール:身長が増えれば体重が増える
物事:来年は身長が増える
結論:来年は体重が増える

・演繹法の留意点
1:前提となるルールに誤りがある場合
2:過度に推論形式にとらわれる場合(意味を考えず数式的に捉えない)

演繹法は前提となるルール(法則)をどれだけ多く、かつ正しく理解しているかが重要となる。前提を疑うことも必要。


4. アブダクション

アブダクションとは、行動や事実だけに着目するのではなく背景や原因を探ることで、法則や仮説を発見する方法。

あらたな仮説を発見しやすい方法であり、「ああなれば、こうなる」という因果関係を推測する。遡及推論とも言う(さかのぼって推測する)。アブダクションは帰納法や演繹法と違って、仮説の範囲を広げることができる。(仮説を多く生み出せるかは、持っている法則の多さにかかっている)

・アブダクションの例
現象:売上が落ちた
法則:買う人が減れば売上が落ちる
結論:売上が落ちたのは買う人が減った

→法則を入れ替えて、「商品単価が落ちれば売上が落ちる」にすると、結論は「売上が落ちたのは商品単価が落ちたから」に変わる。アブダクションでは、法則を入れ替えることで多くの仮説を立てられる。

現象:競合ブランドへ買い替えが起きた
法則:値引きをすれば買い替えが起きる
結論:競合ブランドが値引きをしたので買い替えが起きた

5. さいごに

ビジネスでは、置かれている状況に合わせて、方法を組み合わせて推論する。(帰納法と演繹法の組み合わせなど)。新たな法則を見出して、推論力を高めていく。