小説・成熟までの呟き 50歳・2

題名:「50歳・2」
 2040年11月、美穂達には大きな出来事が起きた。自分達の農園で作ったオリーブを使って製造したオリーブオイルが、全国のコンテストで優勝を果たしたのだ。「遂に今までの積み重ねが報われたんだ!」と夫の康太と感激した。首都で開催された表彰式には、仕事上のつながりがある和子・毅・ひとみも駆けつけた。もちろん、子供の日奈子・健や、親友の結衣と夫の修治もいた。多くの人々で喜び合った。12月には国際大会が開かれて見事に入賞を果たした。このことはメディアで多く放送されて知名度は一層向上した。そして、12月にはもう一つ大きな出来事があった。日奈子が所属する海崎エンジェルスが毎年恒例の年末の歌番組への初出場が決まったのだ。美穂は日奈子のお祝いの電話をした。美穂は、「おめでとう!」と言うと、日奈子は、「ありがとう。いつも応援してくれているおかげだよ。私、この前海崎市の里山に行ったんだ。そこは緑地になっていて、居心地が良かった。」と言った。すると美穂は驚いたようで、「そうなんだ!お母さん、日奈子が海崎市のために活動していることが嬉しいなあ。海崎市って私が初めて1人暮らしをした場所なんだ。その間に、都会の騒がしい雰囲気が嫌になった時があってね。そんな時に里山に行くと、生まれてからずっといた山浜市を思い出したんだ。小鳥のさえずりが聞こえて、静かな雰囲気の中にいると、「よし、また頑張ろう!」って思えたんだ。日奈子が大きな舞台で歌う姿、楽しみにしているからね!」と言った。日奈子は、「ありがとう。私、精一杯やる!」と言った。そして、12月31日に美穂達は歌番組を見た。海崎エンジェルスは2番目の登場だった。白色を基調として動く度にふんわりとする衣装で歌った。日奈子は左から2番目の立ち位置だった。康太は、「日奈子達って凄いなあ。遠くからでも大きな熱量を与えている。もう離れた存在になっているかもしれないけど、今でも心は繋がっているって思いたいな。」と言った。美穂は大きく同意し、「うん、そうだね。どんな所にいてもこれからも見守っていようね。」と言った。
 こうして、美穂が50歳になった年は最高の1年になった。
 美穂はその後、どのような道を歩んでいくのだろうか。
 尚、題名の「成熟までの呟き」の成熟は、オリーブの実の成熟、そして、主人公の美穂やその周りの登場人物における成熟を意味する。

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