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巨万の富を生み出すキャバレー経営者には本物のアートを買い集める審美眼があった

「タイトル買い」で古書店の百円棚でみつけたこの本(長い間、私の本棚にあっただけの)これが、数年後「美術」に繋がるとは思わなかった。

「昭和キャバレー秘史」福富太郎(1994年刊)

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この人物、筋金入りのアートコレクターであり、いま東京ステーションギャラリーで「コレクター福富太郎の眼」として、その脅威的な審美眼で集められた珠玉の日本美術の作品群の展覧会が開かれている。

6月27日まで、臨時休館を経て再開したので、東京駅丸の内下車の際は、いま絶対に見ておきたい、キャバレー王・福富太郎が買いまくった絵たちである。

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戦後、風俗キャバレーの経営者として敏腕のビジネスマンであった男が、日本美術の本物を買い集める眼を持つアートコレクターであったこと。さらにそれだけの豊富な財力をもっていたこと。


それが何を表しているかといえば、戦後怒涛の風俗業界で、一躍莫大な財産を築き頂点に立った天才経営者には、アートの審美眼が備わっていたということである。

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鏑木清方《妖魚》と《薄雪》、メインビジュアルの北野恒富《道行》をはじめ、福富が選び買い求めた絵画には、男女の悲哀、未練、情愛、どろどろと燃え盛る情念のようなものを感じることができる。

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一つ注目してもらいたい点は、(作者の違う)どの絵のに出てくる人物たちの「眼」が、異様に「ヘン」なところである。
福富は絶対に、普通の表情や目つきの描き方の絵は、好きではなかったのだろうと思う。見れば見るほど、その異様な目つきに惚れてしまう・・・そんな作品群なのだ。

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「コレクター福富太郎の眼・昭和のキャバレー王が愛した絵画」
 東京ステーションギャラリー(東京駅・丸の内)
 2021年 6月27日(日)まで無休
(開館時間10:00 - 18:00/※入館は閉館30分前まで)
http://www.ejrcf.or.jp/.../exhibition/202104_fukutomi.html

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 ※秋に大阪あべのハルカス美術館など全国を巡回する。
  先月の「芸術新潮」5月号でも特集されています!

清藤 誠(キヨフジ☆セイジ/アートドキュメント総合ディレクター)
TVプロデューサー/NHK「日曜美術館」ディレクター
。運命学・陰陽師としての視点からアート美術史、日本文化・芸能メディアを紹介しています。

こんな時だから「美術館へ行こう」を開設しました。ぜひ、ご参加、お立ち寄りください。

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