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失ったものを取り戻す旅

7ヶ月になる娘をスケッチしたのは、これが何枚目だろうか。たぶん、2.3枚目程度でしかない気がする。
それだけ、自宅では気力が残されてなかった。息子へのワンオペ対応と家事や妻の精神的フォロー、そしてもちろん大黒柱としての仕事で、疲れ果てていた。

それでも僕は、三カ年計画で禅の道へ歩む努力を続けてきた。

3年前。ご時世において、YouTubeで佐々木閑教授の仏教講座を学び続けた。先生の著書も読みつづけて、歩行禅につながった。

2年前。NHKでティクナットハン禅師のことを知った。そして著者を読み漁った。そして歩行禅は、1年半で日本縦断と聖地巡礼フランス〜スペイン縦断を果たした。歩行距離は5,000キロほどだろう。ただ歩いた訳ではない。日々平均13キロ、呼吸を整えて歩いてきた。

そして昨年、大雪の日に足を骨折して3ヶ月のリハビリと仕事の中断を余儀なくされた。国内は自粛のピーク、感染者も3万人を超えていた。世間は恐怖で押し黙っていた。僕は、ただ止まって、絵を描いた。人生で初めて(強制的に)3ヶ月も静止した。そして内観し、あの世の世界を描いた。

妻は第二子をみごもっていた。そこから一気に家族を支える重力の負荷がかかった。精神を安定させることで精一杯だった。

娘が生まれ、さらに必要に迫られて禅の心を学んだ。ティクナットハン禅師から、より古代の原始仏教を学び、また「信仰」と言う視点でキリスト教も学び始めた。

苦しい人間でなければ、仏教は学ばないだろう。祈りや救いを求めて、それを形にしようと思わないだろう。形にするこということは、日常のやるべきタスクの処理の他にも、もう一つ作業が増える。それは自分にとって本当に必要でなければ、流されて日常に消えていくだけだ。

7月の個展で、マインドフルネスの呼吸法を取り入れて絵を描き、作品を展示した。消え去りそうな気配を描いた作品群だったが、終わってみれば大盛況だった。皆、あの静けさを求めていたのだ。

8月の展覧会のテーマは「再生への旅路」とした。もう一度、僕自身、呼吸をするように絵を描くような、自然な姿を取り戻すために。
朝、早く起きて、ありのままの自然を描こう。抽象的な表現ではなく、セラピーでもなく、現実の美しさを。目を覚ますのだ。

村上春樹はこういった。
「私は夢を見るために、毎朝僕は目を覚ますのです」

まさに夢の世界(無意識・あの世の世界)を現実に再現するために、彼は描き続けている。宮崎駿の新作映画だってそうだ。

無意識を叩き起こす!!ぐちゃぐちゃな夢を、現実世界に炙り出してやる。ありのままを描くことによって。

1日100枚。10日で1000枚。この枚数が多いのか少ないのかは、僕自身の無意識にかかっている。

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