「実物ならでは」の名画の魅力を、液晶画面で紹介してみる
ネットで歴代の名画を見たり、デジタルで絵を描いたりできる時代ですが
やはり実物の絵でしか味わえない表現があります。
その一つが、マチエールです。
マチエールとは、フランス語で素材や材質を意味する言葉。
絵画では絵肌の質感という意味合いで使われます。
ざらざら、ツルツル、でこぼこといった、絵の表面の質感と考えると分かりやすいでしょう。
作品の印象を大きく左右するマチエール。
その魅力を、名画とともに紹介します。
(つまり、絵筆ならではの表現を、文字とJPEG画像で紹介するという無茶な企画です笑。)
名画の中のマチエール
最初にマチエールを効果的に取り入れたのは、おそらくレンブラントでしょう。
地味で暗いおじいさんですが、こちらを見つめる眼差しは私たちを捉えて離しません。
人物が目の前にいるかのような臨場感です。
鑑賞者を強く惹きつけるレンブラントの作品。その特徴の一つは、暗い空間の一部に強い光を当てていることです。
暗闇の中で光が浮かび上がり、まるで舞台にスポットライトが当たっているかのよう!
この明暗の対比をマチエールが強調しています。
ご覧のように、光が当たる部分には絵の具が厚く塗られています。
文字どおり光が浮き上がっているかのようです。
一方、暗い部分は薄塗りで、影が画面に溶け込んでいます。
発光しているかのような輝き、そして吸い込まれそうな深い闇。
マチエールにより光と闇の対比が際立ち、作品がドラマティックに仕上がっています。
マチエールは二次元の対象に生々しい物質感を与えます。
そのことがよく分かるのが、ゴッホの作品です。
ゴッホといえば、やはりこれ!
絵の表面は、よく見るとかなりデコボコしています。
筆のタッチは激しく、色を塗るというより、絵の具をそのまま乗せたかのよう。
絵の具の盛り上がりが色の鮮やかさを強調し、ひまわりにどっしりとした存在感を与えています。
ゴッホの絵には、遠近感や奥行きがほとんどありません。
それなのにペラペラな印象にならないのがすごいところ。
厚塗りの絵の具による荒々しいマチエールが、対象に存在感、重量感を与えているのです。
これが滑らかな画面だったら、作品の印象は全く違っていたことでしょう。
そして、誰にも負けない(?)強烈なマチエールを生み出したのがルオーです。
スマホの画面越しでも分かるこのゴツゴツ感!
絵の具の厚みは圧倒的で、作品によっては数センチにもなるそう。
「物質感」という次元を超え、もはや3D画面のような迫力です。
ぶ厚いだけではありません。
ルオーのマチエールは色の重ね方が素晴らしいんです!
よく見ると、青の上に黄色があったり、赤の上に黄色があったり、異なる色が何層にも重ねられています。
この複雑な色合いにより、絵の具が光り輝いているように見えるのです。
ルオーは自身の芸術について、『かたち、色、ハーモニー』という言葉をたびたび口にしたといいます。
ルオーの分厚いマチエールは、対象の形体を強調すると同時に、色彩の鮮やかさ・深さを惹き立たせ、作品全体に調和を与えています。
マチエールが、理想の芸術の実現に大きく貢献しているのです。
ちなみに、現在パナソニック美術館でルオー展が開かれています。
マチエールを直に拝めるチャンス!
素晴らしい作品ばかりだったので、ぜひ足を運んでみてください!
マチエールは個性の固まり
ご覧いただいたように、マチエールには画家の個性が如実に表れます。
その筆の跡をたどっていくと、彼らが絵を描いている姿まで見えてくるようです。
実物の絵画だからこそ味わえる、マチエールの魅力。
美術館に行かれたときは、ぜひ注目してください!
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