アートジェンヌ

美術オタク歴10年以上。 アートは、現実からの避難場所でもあり、現実に立ち向かう勇気を…

アートジェンヌ

美術オタク歴10年以上。 アートは、現実からの避難場所でもあり、現実に立ち向かう勇気をくれるものでもあります。 初心者の方には分かりやすく、オタクの方には新しい視点から、アートの魅力を掘り下げます。 ブルースカイやってます。https://x.gd/cSnrc

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あの名画、雑すぎるけどスゴすぎる!

どんな名画も、究極を言えば絵の具の集合体にすぎません。近くで見たら絵の具のかたまりにしか見えないでしょう。 しかし一歩下がって見ると、そこに素晴らしい傑作が現れます! 今日は「ただの絵の具」が「絵」になる瞬間を見ていきましょう。 ぐちゃぐちゃの絵の具が、美しき令嬢に! これはある絵画の一部です。 ものすごく大雑把で、もはや絵具の固まりにしか見えませんね。 しかし、一歩下がって全体を見ると… 緑の藻屑はヘアアクセに、白い点線はレースに早変わり。 とっても可愛らしい王女が

    • 大胆で繊細で美しい!今も色褪せない琳派の魅力

      今年もアレが始まりました。根津美術館での『燕子花図屏風』の展示です。 誰もが一度は見たことがあると思います。江戸時代の画家、尾形光琳の傑作です。 尾形光琳といえば…「琳派」ですよね! 日本美術の代表ともいえる琳派。時代を超え国を超え、たくさんの人を魅了しつづけています。 みんな大好き琳派の魅力を、私にも語らせてください! シンプルなのが、かっこいいさて、琳派の絵ってすごくシンプルです。 さっそく作品を見てみましょう。 『伊勢物語』の主人公・在原業平たちが宇津山を越え

      • あの絵をモノクロにしてみたら…線が楽しい名画たち

        西洋画といえばカラフルな色彩を思い浮かべる人も多いでしょう。 でも、いい絵はモノクロにしても魅力的!色だけじゃない名画の魅力に迫ります。 動きが伝わる、踊るような線 絵をモノクロにすると、画家のデッサン力があからさまになります。 素人の私でも「すごいデッサン!」と思えるのが、アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックです。 彼を一躍有名人にした作品です。誰もが一度は見たことあるのではないでしょうか。 これをモノクロにしてみると… 色がなくても伝わってくる、この躍動感!肉体

        • この人に描いてもらいたい!ローランサンの魅力

          絵画ジャンルの一大勢力を誇る肖像画。肖像画を手掛けた画家は数えきれないほどです。 そんな中でも、私がもし肖像画をお願いするなら(実際にそんなことはできませんが)、ぜひこの人にという画家がいます。 マリー・ローランサンです。 ローランサンは社交界の女性たちに大人気でした。彼女に肖像画を描いてもらうことが一種のステータスになっていたそうです。 女心をがっちり掴むローランサン。その魅力に迫ります。 似てないからこそ ローランサンはさまざまなご婦人を描いています。 中でも有

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        あの名画、雑すぎるけどスゴすぎる!

          ゴッホの風景画に見える「景色」以外のもの

          今年も東京でゴッホ展が開かれています。 毎年のようにゴッホを冠した展覧会が開かれてる気がしますが、それだけ人気だということでしょう。 ゴッホは生涯で約2,000点の作品を残したと言われています。 手がけたジャンルは肖像画、静物画、自然画など様々ですが、今日ピックアップしたいのは風景画です。 風景画とは文字どおり風景を描いた絵のこと。ただし、それが現実の景観をそのまま写しているとはかぎりません。 それでは一体、ゴッホは風景画に何を写したのでしょうか。 彼の人生と作品を追

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          モネの魅力は、その「目」にあり!

          上野のモネ展が話題です。モネの絵ってほんとに綺麗ですよね! 描かれているのは家や庭や橋など、ありふれた物事ばかり。ですが作品は輝くように美しく、唯一無二の個性を放っています。 何の変哲もない風景をこんなに美しく描くなんて、モネは一体どのように世界を見ていたのでしょうか。モネの魅力の秘密を一緒に見ていきましょう! 見たことあるけど見たことないモネの絵は形も輪郭もぼんやりしています。それにより際立っているのが、色彩の魅力です。 本当にたくさんの色が使われているんです! たと

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          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(西洋画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 600年前とは思えない!超絶技巧まず紹介するのは、1434年、つまり約600年前に描かれたこの作品です。 様々な視覚的刺激に晒されている現代人からすれば、なんてことのない絵に見えるでしょう。 でもよく見てみてください。その緻密さ、特に質感表現は今見ても驚異的です。 まずは、ぱっと目を引く女性の衣服。ドレスのひだの

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          もはやクレイジー!細かすぎる名画たち(日本画編)

          「神は細部に宿る」といいますが、それは絵画も同じ。 よく見なければ分からない、でも見逃したらもったいない!! そんな細かすぎる名画の魅力を見ていきましょう。 臨場感のウラに緻密な描写ありまずご紹介するのは、鎌倉時代の絵巻物、平治物語絵巻です。 「平治物語」は平治の乱(平清盛が権力を掌握するきっかけとなった出来事)をテーマにした物語。「平治物語絵巻」はそれを絵巻物にしたものです。 物語を絵で伝えるためには、描写の説得力がとても重要です。では「平治物語絵巻」はどこに説得力を

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          ほんとに同じ人!?正反対の世界観を1人で描いた画家

          名画はどれも個性豊かです。作品には画家のクセや特徴が表れるので、誰が描いたか一目で分かったりします。 それでは、同じ画家が手がけた作品は全部おんなじ作風になるのでしょうか……そんなことはありません! 次の2つの絵を見てみてください。 同一人物が描いたものですが、全然違いますよね! 作者はフランスの画家、オディロン・ルドン(1840~1916)。前者は画家が43歳のとき、後者は72歳のときに描かれました。 作風の変わり方がものすごいですが、この間、画家の身に何があったのでし

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          デジタルアートじゃなくても!描きかた次第で絵が動く

          最近は『動くゴッホ展』など、デジタル技術を使って名画を動画にするプロジェクトがあります。 しかし画家たちは、コンピューターのない時代から、絵に動きを取り入れようと様々な工夫してきました。 動かない絵を動くように見せるため、彼らはどんな仕掛けをしたのでしょうか。 絵画で「速さ」を表現するには 静止画で描くのが難しそうな「スピード感」。これを見事に表した作品があります。 汽車がすごい速さで迫ってきます。早くよけないと轢かれてしまいそうです! この迫力を表すために様々な工夫

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          見ているだけで元気が出てくる!マティスの絵の魅力

          仕事に家事に育児に、忙しくて疲れていても、気持ちだけでも元気になりたいですよね! そんなときにぴったりな名画が、アンリ・マティスの作品です。 明るくて、楽しくて、ワクワクする!そんなマティスの魅力を存分に紹介します。 目の覚めるような色 マティスの異名は「色彩の魔術師」。 とにかく色が強烈です。 上の2つは、画面のほとんどを赤が占めています。 原色を前面に出す大胆な色づかい。こんな配色は、日常ではなかなかお目にかかれません。 この華やかすぎる色味を見ているだけでも、な

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          「売れなかった」画家たちの、超個性派な作品と人生

          一生懸命頑張っても、報われるとは限りません。 美術史に名を残した画家の中にも、生前に売れずに苦しんだ人がたくさんいます。 しかし彼らは、苦境の中でも自分の芸術を貫き、誰にも真似できない作品を残しました。 今回は、そんな画家たちの超個性的な人生と作品を追っていきます。 絵描き以外の道がなかった画家 「売れなかった画家」として、真っ先に名を挙げられるのが、フィンセント・ファン・ゴッホ(1853~1890)でしょう。 もはや知らない人はいない人気画家です。 ゴッホの作品は

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          「実物ならでは」の名画の魅力を、液晶画面で紹介してみる

          ネットで歴代の名画を見たり、デジタルで絵を描いたりできる時代ですが やはり実物の絵でしか味わえない表現があります。 その一つが、マチエールです。 マチエールとは、フランス語で素材や材質を意味する言葉。 絵画では絵肌の質感という意味合いで使われます。 ざらざら、ツルツル、でこぼこといった、絵の表面の質感と考えると分かりやすいでしょう。 作品の印象を大きく左右するマチエール。 その魅力を、名画とともに紹介します。 (つまり、絵筆ならではの表現を、文字とJPEG画像で紹介する

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          クリムトとシーレ 〜華やかな女性美と生々しい肉体〜【比べて楽しむ絵画】

          歴代の巨匠たちが共通して描いてきたモチーフがあります。 それは、女性です。 19世紀末のウィーンでも、女性を描いて人気となった画家がいました。 その画家は、グスタフ・クリムト そして エゴン・シーレ。 2人には共通点がたくさんあります。 女性の作品をたくさん残したこと 女たらしなところ そして、同じ年に亡くなったこと 2人は親子ほど年が離れていますが(クリムトが年上です) シーレはクリムトを敬愛し、クリムトはシーレの才能を絶賛していました。 同じ時代を生き深い関わりを

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          失恋には失恋ソングを、憂鬱には陰気な名画を

          心理学には「同質の原理」という法則があります。 そのときの気分やテンポに合った音楽を聴くことで、精神状態が良くなるというものです。 (失恋して落ち込んでいるときは、無理に明るい音楽を聴くよりも、悲しい失恋ソングを聴いた方が心が落ち着くのです。) 「同質の原理」は音楽療法の用語ですが、絵画を観るときも同じことが言えるのではないでしょうか。 辛いときや悲しいときは 明るい絵よりも暗い絵を観た方が、気持ちが楽になれそうです。 気持ちが沈んだときにぴったりなのが、エゴン・シーレ

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          若冲は日本画のバラエティパック

          日本画って、ちょっと地味でとっつきにくい印象はありませんか? しかし、一口に日本画といってもその表現は実にさまざま。 一見地味なモノクロ水墨画、カラフルな絵巻物、金銀を使ったド派手な屏風絵などなど… そうした日本画の多様性を堪能するのに、ぴったりな絵師がいます。 かの有名な、伊藤 若冲です。 若冲は江戸時代の絵師で、昨今大変な人気を博しています。 緻密な動植物の絵が有名ですが、それだけではもったいない! 他にも面白い作品がたくさんあるんです! 今回は、多様な表現技法を

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