49.時計館の殺人(綾辻行人)感想考察

綾辻行人さんの『時計館の殺人』を読みました。
「館シリーズ」の5作目の作品です。
上下巻合わせて626P。
十角館、水車館、迷路館、人形館ときて今回の時計館です。
館シリーズと言えば、『十角館の殺人』から始まる本格ミステリーのムーブメントの火付け役と言われているくらい有名ですが、未だにムーブメントって何って思ってます。

自身は評価が高い順に読んでいるため、水車館と人形館は飛ばしているのですがいずれ読むかもしれません。
十角館と迷路館は順当に本格ミステリとして面白かった。

こっからネタバレ感想~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
なるほどね~って感じです。
面白いし、主軸のトリックはそういうことか~という納得感はある。
行動原理がちょっと納得いかない部分と、さすがに人が死にすぎではというところだけマイナスですが広げた風呂敷の回収は面白かったです。

本作品は山奥の時計館を舞台に始まるクローズドサークルものでした。
江南のいる旧館サイドと、鹿谷門実のいる外側の調査の2つの軸で事件を調査していきました。
光明寺美琴の失踪から、次々と殺人が繰り返されていくのですがとうとう江南以外全員死んでしまいます。
(おい、瓜生できるやつ感すごかったのに最後あっさり死んだな)

外の鹿谷門実の調査では過去の古峨永遠の死亡や、遺言のような棺に残されたメッセージを探っていきます。
そこであからさまに古峨由季弥が犯人ですよ~っていうミスリードを誘う表現が多すぎて、逆に犯人じゃないだろってメタ読みしてしまいました。
案の定由季弥が自殺(にみえるように)して事件は解決と思われました。
あからさまに怪しいアリバイのある伊波紗代子が真犯人なんだろうなとは思いましたが、そこに至る理由や過去の落とし穴事件や、それを発端とした複数の不審死をどう解決していくのかが気になり読み進めていきました。

そして解決編。
主軸のトリックは時間の流れ方そのものが違うというものでした。
旧館の中のすべての時計は60分が50分で動くと。
は~なるほど~と感心。
どうせ時計館というタイトルから時間いじるんでしょって思っていましたが、時間の流れそのものを変えるというのは脱帽。

時計館そのものの存在理由が古峨永遠を主観時間で16歳を迎えさせるために時間の流れを変えさせたというのは、古峨倫典のあまりに狂気が面白い。
最早中村青司の建物だから狂気に溢れているという説得感を持たせてるのもこのシリーズ故だなと思います。

そして大オチの"女神は沈黙の獄舎につながれている"の回収
劇場版コナンよろしく時計塔崩壊という大団円(?)を迎えるのはオチとしてはスッキリでした。

しかしですね。
冒頭にも書いたのですが気になるところは多々。
①流石に人殺しすぎでは…?
解決編、こんな狂気の殺人鬼に普通に話しかけてる江南大丈夫?
カメラマンも小早川も野々宮も殺さんでよかったろ…。
追憶することで物語のエモさを演出してましたが、学生3人はそもそも穴掘ってない部外者だし、犯人に同情できる要素少なすぎた。

②メイントリックありきの舞台を整えすぎ
時間の流れが違うトリックを使うための話を主軸にしすぎですね。
本館での殺人は、特に謎もなく隠し扉があるのならば誰でも犯行が可能なため"どうやって殺したんだ"というようなワクワク感がなかったです。
ただ単に人が死ぬストーリー読んでいるような感覚。

③時計館関係者の相次ぐ死の全ては回収されなかった点
古峨倫典→病死
古峨時代→若くして病気
古峨永遠→時計館の真実に気付き自殺(そうはならんやろ)
寺井明江→永遠の死で責任を感じて自殺(わかる)
伊波今日子→穴に落ちて破傷風(わかる)
伊波裕作→飲酒運転による交通事故(回収無し)
福西の従妹→陥没した道路の穴で交通事故(回収無し)
長谷川俊政(医師)→医院が火事(回収無し)
服部郁男(専務)→交通事故(回収無し)
馬淵智(永遠の許嫁)→山で遭難(回収無し)

最初の風呂敷のでかさに比べてほぼ回収無しなのどうなの。

悪いところ挙げるだけだと申し訳ないので良いところも挙げます
・メイントリック自体は斬新で面白かった。
・時計館の間取り最初見たときは覚えられるわけないだろって思いましたが、後半は間取りを見なくても様子が目に浮かぶのは文章力と構想の凄さ。最後の時計塔の崩壊を文章だけで表現する様は最早感動しました。
綾辻さんの文章も過去作とも比べて読みやすいなと感じました。

シリーズ最高傑作って煽りの帯もあるらしいですが、普通に十角館の方が面白かったです。
しかし十分にオススメできる作品と言えるでしょう。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?