45.でぃすぺる(今村昌弘) 考察・感想

今村昌弘さんの『でぃすぺる』を読みました。
剣崎比留子シリーズを全部読んだので、単発のこちらを購入。
とある田舎町の少年少女を主人公にした本格ミステリ×オカルトです。
作者のこれまでの作品から特殊設定×ミステリーが上手いので楽しみです。

こっからネタバレ~~~~~
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面白いけど…
う~~ん…。
個人的には序盤めちゃくちゃ面白いのに、後半尻すぼみでオチも納得はできませんでした。
序盤は七不思議に散りばめられたヒントや謎解きは納得性のあるものが多く、実際に怪奇現象が起きた場所へ赴くのは
ユースケ・サツキ・ミナと同様の緊張感を味わえて面白かったです。
マリ姉の死を追い求めていく中で深まっていく関係も良かったし、子供ながらの行動制限や考えた方も面白かった。(子供なのに賢すぎるのは仕方ない)

しかし丁寧に風呂敷を広げてきたのに、オチやそこに至るまでの大団円感がなくて読み終わった後、何とも言えないシコリが残るのが残念でした。
結局怪異が実在して、それを「なずての会」の人々が戦っていたというオチは別に良いです。
"怪異が実在してる"という土台自体にはこの小説の書きたかったところだということで納得しています。
七不思議で決めたり、ノックスの十戒のうち一つ破られている。
等で、納得できるように丁寧に進めてきたのもわかります。
果たして何が納得できなかったのか考えてみました。

私が思うダメだったところ
①大決戦が、サツキの一人行動による"なずての会"への脅しなのどうなの
せっかくこれまで友情をはぐくんできたのに、独断でリアルタイム配信しようってなるのがなあって思いました。
子供が主人公で、成長感を描かれていくのかと思いきや独断行動か~というね。
決着感が薄い。
そして大ドンでん返しで怪異が黒幕だったというのは良いのですが、簡単に町長と司書死にすぎて命軽すぎ…。
"なずての会"無能すぎでは。

②人の命軽すぎ
簡単に人が死んでいくし、それを小学生が軽く受け止めすぎなのが気になる。
知り合いが死んだとしたら、この七不思議の調査を続けていいか不安になってよいと思うんだけどその葛藤がないのが緊迫感が薄れる。

③終わった後、だからか~という伏線回収が薄いし矛盾点が気になる。
邪神に対抗するためのライングループで、名前偽ってるの謎だし、邪神は人に成り済まし、スマホを捜査するって怪異感なくないですか。
車運転できてるのも謎だし。
"なずての会"を特定するために子供を利用するのも不可解。
超常現象的な存在なのに、やってること子供頼みなの謎すぎ。
無差別殺人しているような存在として扱っているのに都合が良い。
オチ自体が邪神が黒幕でした~となるのは良いのですが、だからか~と点と点が線で繋がることがないのが残念でした。

④七不思議を作る必要性に納得感が薄い
邪神に対抗できる人を探してたって本当か…?
町長が信頼できる人に声かけて対策すべきでは?
あんな曖昧な七不思議をばらまいたことで実際に子供が危険にあってるわけだし、youtuberも死んでるのに
怪異の存在を仄めかす必要性がわからない。
後、六つしかない七不思議の、隠された七つめを探す物語かと思ったら全然違った。
七不思議の内容や、七不思議を追うという題材自体は面白かった。

⑤子供の成長なさすぎ
せっかく子供が主人公なのに、成長感が薄い。
最後にサツキが自分の意志で中学受験やめたり、ミナが友達できたりはしてましたが、とりあえず成長させました感がすごい。
とんでもない体験をしたはずなのに、ユースケ・サツキ・ミナの誰にも感情移入できないせいだと思います。
子供ならではの視点や、子供ならではの行動制限を書くのは上手かったのですが、
子供ならではの"苦悩"や殺人が起きていることへの"リアル感"が薄くて共感しづらかったです。

新しいことへの挑戦としてミステリ×オカルトを書こうとしたことは面白かったです。
そこらへんは、こちらの解説ネタバレ記事面白かったので、暇な方は是非読めばよいかも。
「納得」は全てに優先する――今村昌弘『でぃすぺる』勝手にネタバレ解説

酷評多めでしたが、今村昌弘さん自身はファンなので今後も読み続けます。


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