石 【ショートストーリー】
「あ、この石、なんか新幹線みたいな形してる。」
私は石である。
道にあり、佇んでもいるわけでも、いないわけでもないが、まぁ、道にある。
今、私は、小学生らしい少年の掌の上で、彼の瞳に見つめられている。
彼にとって、私はしんかんせんとやらの形に似ているらしく、そのことが彼の興味をひいたようだ。
私はしんかんせんとやらは知らない。
しかし、彼にとってはしんかんせんは好ましいものなのかもしれない。
やけに満足げに見つめてくる。
私はしんかんせんではない。
多分、そうだろう。
しんかんせんとは?
しんかんせんなのだろうか?
もしや?
しかし、まぁ、悪い気もしない。
「なんで、こんな形なんだろ、すげー。」
…まあ、私も知らない。
私はどんな形なのだろうか。
ひょっとすると、実は凄い形なのだろうか。
しかし、これまで、時に蹴られ、時に踏まれ、時には、時には、…時には、特にないこともないけれど…と、時には…。
「あ、やべ、行こっと。」
少年は、私を道の隅へ、ひょいと投げた。
意外に呆気ない別れである。
…。
私は、ひょいと肩をすくめたかった。
が、できもしないので、まぁ、道にあり、佇んでもいるわけでも、いないわけでもない。
※ちょっとあとから訂正しました。
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