掌編小説「希望的観測の先に」
小学生の頃、将来の夢についての作文を書く宿題が出て、作家になると書いたら、担任の先生から呼び出しを受けた。
「高村君、作家なんて、一握りの才能がある人しかなれないんだよ。そんな叶わない夢を追うより、お父さんのような研究者になる方が先生は合ってると思うな」
父は研究者で、有名な研究所に勤めていた。
俺はその教師が、父の息子という視点でしか見ていないということを、子供ながらに見抜いていた。
実際、俺は、理科も算数もダメで、得意科目は国語と社会という、明らかに文系の人間だった。
父