山猫と郵便局 ー幻想酒楼 三層目ー
雨の郵便局緑の匂いが濃い。秋に入った雨は冷たく、色づきかけた葉の上を雨粒が銀色に光って転がり落ちていく。うっそうと葉を茂らせた樹々の下を私は早足で歩いていた。
このあたりはいまどきには珍しいほど家々の区画が大きく、庭木にも松や椎の大木が目立つ。もとは古い避暑地だったと聞けばそれも頷ける。崩れかけた大門や、長く続く塀の奥には古くとも立派な邸宅があるのだろう。
台風でも近いのか、強い風に樹々が揺れるたび肩に雫が滴って私は首筋をすくませる。やがて行く手にぽつんと、オレンジ色の灯り