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しごとのはなし その② 商品づくり

本業のはなしです。

わたしのキャリアは大きくわけて3つ。

今回は二番目の「商品づくり」について書いていきます。

※大学卒業後すぐテレビコマーシャルをつくる仕事をしていましたが、その後のキャリアに直接的なインパクトがないため割愛しています

②「商品づくり」

わたしが商品づくりに関わったのは北欧や欧米からテキスタイルや雑貨を仕入する仕事をしていた30代後半の頃。

海外デザイナーや海外ブランドの商品を「日本市場にあわせて」整え、パッケージやメッセージカードを含めた完成品にするまでの工程に責任をもっていました。

海外メーカーとやり取りして商品をつくり、仕入れする。

字面だけですとさぞ華やかな世界かとおもわれるかもしれませんが。

実際には泥臭いしごとです。

まずびっくりしたのがスペック(SPEC、specification の省略形)と呼ばれる仕様の違いについて。海外で販売されている商品を日本で販売するためには検査にパスしなきゃいけなかったり、表示を付け替えなきゃいけなかったりするんです、が!

基準に対する「あたりまえ」が違う。

たとえば布製品。サイズに対して誤差をどこまで認めるか。日本で一番、品質基準が高いといわれている某百貨店のカタログ販売の場合「お客様の不利益にならないように」という鉄の掟(おきて)があり、マイナスは原則不可で、プラスもミリでしか許容されない。

一方で海外生産の手工芸品の場合は「風合い」とも呼べる個性の違いがあって柄の出方もサイズもおおらか。一度、この手の商品のカタログ掲載を担当したんですが、最終的には先方指定の検品工場まで出向いて全商品を「お直し」する羽目になりました。

さらにパッケージに対する考え方の違い。海外の場合は一部の高級ブランドを除きパッケージがなくむき出しで販売されているケースも珍しくなく、外箱もよほど汚れていなければ少々のへこみや傷もOK。

対する日本はパッケージは「商品の顔」であり、ご自宅用ですら「よそゆきの綺麗な顔」であることが求められる。いわんや贈答用をや。ギフト仕様の商品の場合はいったん仕入れたものを倉庫で検品し、外装不良のみ入れ替えしたり、国内で資材・包材を用意して新たな包装を施したりしています。

今の職場は自社の直営店(多店舗展開、センターから各所に配送)なので自社基準のみでOKですが、当時は卸・百貨店・小売・多店舗(チェーンストア)・EC・個人・法人と多種多様な納品先をもっていたので先方基準ありき。一番厳しい基準にあわせて商品を設計する羽目になっていました。

と、ここで問題になるのが。

「かけ率」です。

商品を完成させるためにかけたコスト(検査、パッケージ、付帯作業)と粗利(純利)を確保するために、上代(商品の販売価格)に対し各社に何割引きで提供できるか原価計算していたんですが。

海外の素敵なものを少量で仕入れると輸入指数が高くなり、もちろんパッケージにもこだわり。そんな商品を高感度なお客様にリーチさせるとなると百貨店や準ずる得意先に卸さざるをえず。

百貨店の場合はだいたいが委託という、商品を貸し出し売れた分だけお支払をいただく方式をとっており、ここに中間商社を挟むのでだいたい5掛け。つまり上代の50%前後で商品を出しているんです。

50%で販売してもコストと粗利を確保させるとなると。

そりゃあ販売価格が高くなるわけですよね。。。

中間マージンによる価格上昇は百貨店に限ったことでなく、自社販売でない限りどんな販売先(プラットフォーム)でも起こりうる問題なので、昨今BtoCや自店のみ販売するメーカーが増えてきているのも納得です。

先週オウンドメディアについてのイベントに参加してきたのですが。

素晴らしい商品があり、自分たちで顧客とダイレクトにコミュニケーションをとっていけるのなら自前で販売するのがいちばん理にかなっています。もちろんBtoBのビジネスを一気にスケールさせるには百貨店や卸、小売、多店舗(チェーンストア)、ECは重要なチャネルであることに間違いはありません。

ただそこそこの規模がないと手間もコストもかかりすぎる。

特に個人や小規模ではじめようと考えているならば。

ちゃんと試算して、どこまで既存の流通にのせられるかを考えて商品設計をしなければせっかくの商品も市場で活躍できません。

商品はつくっておしまいではなく。

必要なお客さまのところに届いて初めて価値をうみます。

その対価が「売上」です。

届けかたまでを考え抜くのがしごとになります。

必要に応じて海外サプライヤーに日本というマーケットを理解してもらえるように丁寧に説明もします。お互いの基準の違いを否定するのではなく、商品の価値をあげることが認知をひろげ共感をうむこと。結果、販売数が上がること。

「贈り物」としてひと手間をかけた心づくしの工夫のひとつがパッケージにあることを伝えると、文化の違いや習慣はあれど「よろこんでほしい」という共通のおもいに海外サプライヤーも納得し、輸送時に配慮してくれるようになります。

地道なコミュニケーションの積み重ねです。

※前回の ①輸出入実務 についてはこちらからお読みいただけます

次回は③「広報」について書きます!

トリスと金麦と一人娘(2023 春から大学生になり、巣立ちます)をこよなく愛する48歳。ぜひどこかで一緒に飲みたいですね。