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おいしい韓国料理8つのコツと「雨の日はチヂミ」「誕生日はわかめスープ」の理由を料理研究家キム・ナレさんに聞く

「みんなのきょうの料理」などテレビや「dancyu」「婦人画報」など雑誌でも活躍中の韓国人料理家キム・ナレさんが、2023年3月7日、初のレシピ本を出版。その名も『おいしい韓国料理のレシピ』(朝日新聞出版)。彼女の韓国料理に注目が集まるヒミツに迫る。

キム・ナレ著『おいしい韓国料理のレシピ』(朝日新聞出版)
キム・ナレ著『おいしい韓国料理のレシピ』(朝日新聞出版)

 韓国料理といえば、ニンニクを大量に使い、塩分も強め。ちょっとジャンクなイメージも付きまとう。キム・ナレさん自身も、最初に日本で料理教室を開いたときは、いわゆる定番レシピを教えていた。だが、やがて体調を崩し、料理教室を続けることができなくなってしまう。

 そんなとき、生徒だったという人から、一通のメッセージが届く。

「先生の教室には行けなくなってしまったけれど、先生のレシピはわが家でずっと生きています。娘たちも先生のレシピをお母さんの味として覚えてくれるでしょう。そして娘たちが大きくなって家庭を持ったら、自分の家族のためにその料理を作ることでしょう」

 キム・ナレさんは言う。

「自分の料理が誰かの家庭の味になり、それが代々受け継がれるかもしれない……それはとても素敵なことに感じられました」

キム・ナレさんは、韓国・仁川出身。韓国本場の味をもとに、旬の食材を使った、日本の家庭で再現しやすい韓国料理や創作韓国料理で活躍中の料理家(写真撮影/伊藤徹也)

 メッセージに突き動かされるように、料理教室の再開を決意。早く体調を戻さなければいけないと、自分を元気にするための韓国料理を作るようになったという。旬の食材を食べること。そして、体に負担をかける味付けはやめることを意識。にんにくや塩分は少し減らして、シンプルで体も心も喜びそうな健康的なレシピを目指した。これが、「ナレ式」韓国料理へと発展していった。

 たどり着いたのは、「8つのコツ」だ。

【その1】炒めたり煮たりするのは、弱めの中火でじっくりと
【その2】甘みは砂糖をあまり使わずに、アガペシロップや梅シロップで
【その3】やたらとニンニクを使わない
【その4】おいしさのためなら、ちょっとした手間を惜しまない
【その5】放っておくことも調理法のひとつ(火にかけているときに必要以上に触らない)
【その6】米油・ごま油・えごま油など、油を使い分ける
【その7】その土地の旬の野菜を使う
【その8】レシピはあくまでも目安。必ず味見をして自分の好みに!

 ここでは、この8つのコツを踏まえたナレ式の「チヂミ」と「わかめスープ」のレシピを公開。料理にまつわる韓国の風習も含めて、味わいたい。

■雨の日に食べたい海鮮チヂミ

海鮮チヂミ/マッコリと共に味わいたい。キムチとじゃがいもを入れた「キムチチヂミ」、長ねぎだけで作る「長ねぎチヂミ」など、アレンジも楽しい(写真撮影/伊藤徹也)

 韓国の人たちにとって、雨の日はチヂミを食べるのがお決まり。雨が降る日にチヂミ屋さんに行くと、必ずといっていいほど満席だ。雨の音がチヂミを焼くピチピチという音を連想させて食べたくなる、と言われているが、キム・ナレさんは「私にとっては子どもの頃からの習慣。反射的に食べたくなります」と話す。そして実は「チヂミ」は慶尚道キョンサンドあたりで使われる方言で、ソウルでは一般的に「プチムゲ」と呼んでいるという。

[材料(2人分)]

小ねぎ…15本
えび…5尾
いか…40グラム
にんじん…少量
生の赤唐辛子(斜め薄切り)…少量
溶き卵…1個分

(生地)
小麦粉…50グラム
片栗粉…大さじ1
水…70ミリリットル

しょうゆ…小さじ1
油…大さじ1 と1/2

(たれ)
玉ねぎ(粗みじん切り)…1/4個分
生の青唐辛子(小口切り)…少量
しょうゆ…大さじ3
酢…大さじ1/2
砂糖…小さじ1

[作り方]

  1. 小ねぎは15センチ長さ(フライパンの大きさに合わせて調節する)、えびはひと口大、いかは5ミリ幅の輪切り、にんじんはせん切りにする。

  2. いかとえびはさっとゆでて、キッチンペーパーで水気を拭き取る。

  3. ボウルに生地の材料としょうゆを入れてよく混ぜる。

  4. フライパンを弱火にかけて米油大さじ1をひき、ねぎを並べて入れる。その上に3の生地の半量をかけ、にんじん、いか、えび、赤唐辛子をのせる。残りの生地を全体にかけ、溶き卵を具材がくっつくようにところどころにかける。

  5. ねぎに軽く焦げ目がついたらひっくり返し、中火にしてねぎのまわりに米油大さじ1/2を足す。

  6. フライ返しでぎゅうぎゅう押さえながら火を通し、下の面がきつね色になったらひっくり返し、さっと焼く。

  7. 器に盛り、たれ(好みに応じて白ごまを加えても)を添える。

■誕生日に飲むわかめスープ

わかめスープ/韓国で誕生日を祝うなら、バースデーケーキよりもわかめスープのほうがずっと重要なアイテムだ(写真撮影/伊藤徹也)

「わかめスープ飲んだ?」は、韓国でよく聞かれる誕生日のあいさつだ。もし、その時点でまだ飲んでいなかったら、わかめスープをごちそうしてお祝いするのが韓国流。わかめには、産後に伸びた子宮を収縮させ、母乳を出やすくするヨウ素が多く含まれていると言われている。そのため、韓国には産後21日間、わかめスープを飲んで体をケアする習慣がある。誕生日のわかめスープには、産んでくれたお母さんへの感謝の意味が込められているという。

[材料(4人分)]

わかめ(生)…100グラム
干ししいたけ… 2個
干ししいたけのもどし汁…全量
煮干しだし… 3カップ
薄口しょうゆ…大さじ1
天日塩…少々
えごま油…大さじ1/2

[作り方]

  1. 干ししいたけは水2カップでもどし(もどし汁はとっておく)、しぼって薄切りにする。わかめは食べやすい大きさに切る。

  2. フライパンを弱火にかけ、えごま油を熱して1のわかめを入れて炒め、全体に油がなじんだら、1のしいたけと薄口しょうゆを加えて軽く炒める。

  3. 煮干しだし、1のもどし汁、塩を加えて強火にする。沸騰したらふたをして弱火で30分ほど煮る。

  4. 塩で味をととのえる。

(構成/生活・文化編集部 森香織)


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