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【エッセイ】餌付け

「ニャギいる?」
「今日は出掛けてる」
 午後にそんなやり取りをした。
 そのあと夜ご飯を食べて、薄暗くなる頃に姉が二階の窓から外を見て「あ、ニャギ来てる」と大きな声で言った。(そして自分は足早にトイレに向かった)
 ニャギは自分が観察されているとも知らずに馬屋の角で辺りをうかがいながら座る。姉がトイレのドアをバンと閉めると少し顔を家のほうに向けた。
 わたしはうちの猫に対する作法がわからないので、母のところへ行って「ニャギ来たって。エサやるの?」と聞いた。母が「行く行く、」と言ったので2人で外に出た。
 ニャギは母が「来たの、」などと言いながら馬屋に入るとすぐに自分も中に入り、エサ場でおとなしくカリカリを待つ。馬屋の置きエサがなくなっていたので、わたしが家まで走って取りに行った。
 首がないほどにまるまると太ったニャギは、エサ皿にかがみ込むとひとつの塊みたいだ。顔がとても大きい。毛のせいかと思ったが、触るとしっかりとした肉付きで、しっぽも堂々たる太さだ。(全体のフォルムはマヌルネコに似ている)
 カリカリを食べるどさくさに紛れて肉球を触ったけど、ソッと足を引っ込められてしまった。
 食べ終えるのを待たずに家に戻る。食べ終えたら勝手に寝床に入るか、どこかに出掛けていくだろう。
 母は満足げに馬屋の戸を閉めた。今日の餌付けは終了。
(トイレから出た姉は「行ってきたの」となぜかうれしそうにまた外を見た。)
 


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