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冷涼なる南の島の透明感:NZ南島編 2

標高500m、プカキ湖。

極の上。

あれがマウントクックか。

マウントクックへ向けて、プカキ湖の西岸を北上。

道中いくつかのビューポイントがあり、休憩していたらマレー人の団体客が声をかけてきた。
マレー人はノリ良くフレンドリー。
日本人だと答えると「アリガトゴザイマス」と言い、僕がマレー語で「Terima kasih」と言うと喜んでくれる。
ムスリムのオバさまたちが好奇の目で僕の写真を撮る。
自転車で世界を旅するというのがそんなにめずらしいのか、すごい質問攻めされた。

ボルネオから来ているそうで、そういえばボルネオ走行中に通りすがりの新聞記者に捕まって質問攻めされ、新聞に載ったこともあったな。

しかしまあ、アジア人はグループ、欧米人はカップル、日本人はソロ、というのがよくある典型というか傾向としてある気がする。
僕はカップルやグループ旅行というのが理解できないし、かれらは一人旅というのが理解できないようだ。

碧の蒼さ。

立ち止まってゆっくりとこの色に浸る。

一時的に北上しており、北にある山々は基本逆光。
今さら言うまでもないが念のため、南半球では太陽は北に昇る。

超の絶。

神々しきかな。

この島に人が住みついたのは1000年ほど前、それ以前は無人島だった。
当時は巨鳥モアが闊歩していたことだろう。
人類の到来で生態系は様変わりし、街がつくられ道がつくられ、路上は外来の小動物の死体だらけ、国土の大半がウシとヒツジの牧草地となった。
悠久の時の流れを見守ってきた山々が何かを語りかけてくるように見える。

神話の中にいるかのよう。

マウントクック国立公園。
入場料無料。

ニュージーランド最高峰、クック山(3724m)。

ニュージーランド開拓の祖であるイギリス人探検家ジェームズ・クックにちなんでいる。
マオリ語では「アオラキ」と呼ばれ、「雲の峰」の意。

ツーリスティックなエリアから脱し、交通量が減ってホッとする。

名もない湖で静かに佇む。
ちゃんと調べたら名前ぐらいあるんだろうけど。

再び海岸。
せっかくビーチ沿いのいい道なのに、あいにくの雨。

あれっ?

ペンギン!

イエローアイドペンギン。

生息数わずか数千羽、絶滅の危機に瀕しているレアモノ。
通常は保護区での有料ツアーに参加しないと見られない。
このペンギンは、群れを形成しない一匹者。
数十m離れていたけど、しっかり僕を見て警戒していた。

孤高のペンギン、まもなく海へと姿を消していった。

ダニーデン。

スコットランド人によって建設された街。
イングランド人によるクライストチャーチとは雰囲気が違う。

あちこちで花満開。

小さな街の無人キャンプ場。
桜の木の下で。

もう春か...

春だけど、夜は相変わらず氷点下。

朝は相変わらず洗濯物バリバリ。
走行しながら解凍。

ワカティプ湖。

テカポ湖やプカキ湖と同じく、南北に細長い氷河湖がシワのように並んでいる。

クイーンズタウン。

ニュージーランド南部一の観光名所。
カナダのバンフやジャスパーとも通ずる、上流階級のリゾート。
場違い感しかない。

圧倒的中国人、白人、そしてインド人少々。
これから世界を牛耳っていく顔ぶれといったところか。

お財布的にも雰囲気的にも、1泊が限度。
逃げるようにして離れる。

峠道。
車が止まり、乗っていけと言われたが、もちろん丁重にお断り。
パトカーも止まり、さわやかポリスメンに乗っていけと言われた。
声をかけてくれるだけで元気づけられる。

標高1000m。
山がちなニュージーランドだが、峠らしい峠は少ない。
たまにはこういう感じを味わっておかないとね。

ワナカ。

クイーンズタウンの70kmほど北東にある湖畔の街。
ここもツーリスティックではあるがクイーンズタウンほどではなく、キャンプ場もギリ許容範囲の価格で、ここならまあ居れる。

人口少なく、資源もなく、主産業は牧畜。
太平洋のはずれの辺鄙な島国が、なぜこんなにも高い経済レベルを維持し、多民族でありながらこんなにも平和的なのか。
しかし今は安泰でも、未来はどうなるか誰にもわからない。
我が国も数十年前は、廃れていく未来への危機感などなかっただろう。
栄枯盛衰、それでも西欧植民支配による繁栄がいかに強力であるか、その根強さは旅をしていてもつくづく痛感させられる。

オーストラリアやニュージーランドやカナダを旅していると、ワーホリの日本人に出会うことが多々ある。
今や旅行者としての日本人は絶滅の危機に瀕するレアモノだが、ワーホリの若者なら別。
昔からこれらの国は高時給というのもあったが、以前は稼ぎよりは海外体験という比重の方が大きかったと思われる。
日本でもふつうに生きていけるけど、若いうちに海外で経験を積んでおきたい、女性の場合は白人の男と結婚して現地に住む願望が強くあるのだろう。

今は、日本でもふつうに生きていけるよね、なんて言う人はさすがにもういないでしょう。
確実に沈みゆくこの船からどう生きのびるか、一時の体験やお遊びなどではなく海外永住するためのスキルや地盤を今から準備しておく、というのは至極賢明だ。

日本の少子高齢化と人口減少はまだ始まりにすぎない。
若い働き手が海外流出し、圧倒的マジョリティである高齢者こそが民意として手厚く保護され、未来のための長期的ビジョンによる政策や変革などは少数意見として黙殺、それがさらなる高齢化を引き起こす、地獄の悪循環。
「民主主義の末期症状」は日本だけでなく世界のあちこちですでに見られ、そろそろ限界を迎える気がしてならない。


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