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花束は渡す人が一番きもちいい話

もうすぐ母の日らしいですが、みなさんせっせと義理のお母さんとかにプレゼントを選んでいるのでしょうか。お疲れさまです。母の日に贈り物をしたら最後、お義母さんが死ぬまで毎年送り続けなくては!という恐ろしい義務が発生してしまいそうで、私はなんにもやっていませんでした。おかげで毎年母の日を無視して暮らすことができています。

ついでに言うと、お義母さんの誕生日もなんにもしません。別におめでとうの電話もしません。あ、お義母さんは私の誕生日におめでとうの電話をしてきてくれます。そうだ、私は離婚しているので、お義母さんは元お義母さんです。

プレゼントとは不思議なものではありませんか。私が店をやめるとき大勢の方がお花を持ってきてくれました。ありがとうございます。おそらく「お疲れさま」の意味のお花だったんだと思います。だけど、そのお花をもらって、営業終わってお客さんが帰ってからせっせと水切りをして花瓶に活けたりするのは、私なんです。しかも閉店だから、特にそのあと店に飾って見てもらうわけでもないんで、家に持って帰らなきゃなんないです。ハッキリ言って、邪魔以外のなにものでもありません。

これがせめてビ−ルとか、お酒とか、日持ちのするものとかならいいです。世話のいらないものなら。

花って、本当に困ります。キレイな花に囲まれて「私幸せものね~」って、感慨に浸れる人はいいですが、あのときは、閉店した後片付けが山のように残っていたし、来る日も来る日も店に行ってキッチンの掃除をしたり、食器を箱に入れたり、業者さんと打ち合わせをしたり、とにかく忙しかったですから、気づいたら家の花なんてすっかりカラカラに枯れ、花瓶の中はドロドロになっていました。

思うに、花をプレゼントするという行為には「自分が今花を持っているが故に道行く人から注目されるという優越感」と「人に花を渡して喜ばれている自分に恍惚とする」というのが含まれていると思うんです。どっちにも言えるのが「花は人に渡すので、自分の手元には残らない」だから、プレゼントする側にとっては最後まで「花束」です。でも、もらった側はどうでしょうか。考えてみると、そのまま置いておくわけに行かない、というのが花束です。

頑丈な大きなセロファンや色紙の包みを一枚一枚剥いでいって、リボンを丁寧外し、根元に巻いてあるアルミホイルや分厚いティッシュみたいなのも取って、ぐるぐるにぎゅうぎゅうに巻いてある固いゴムを注意深く外し...。私なんかもうこのへんで辛くて心が折れそうです。さらに、今はどうなんでしょう。昔はバラのトゲもそのまんまだったから、指を刺されたりしましたよね。そのトゲも一本一本手でキレイに取って、それでようやく花束から花が開放されるんですけど、今度はそこから水切りですよ。

深い鉢に水を張って、そこへ花を一本づつ浸けて水の中で茎をカットする。これね、冬は本当に冷たいです。泣けてきます。気持ちは「おしん」です。(「おしん」わからない人も多いと思うので「おしん ドラマ」でググってください)なんで私がこんな目に...ってなります。しかも、これ、飾る花瓶の大きさとか考えながら、バランスを考えて切るわけです。結構頭使うんです。それで、水切りが終わったら、今度は花瓶に活けますよね。例えば、百合なんかだと、雄しべを取っておかないと後で服に付いたりして黄色く汚れて取れなくなりますから、これも慎重に注意深く取り去ります。

このような作業を経たあとで、花瓶に活けられた花を優雅に楽しめる人も多いと思います。私はかなりがさつな人間ですので、咲き誇る花をほとんど楽しむことができません。なぜって、そこからまた水が腐らないように交換したり、枯れた花を取り除いたり、一定の世話が必要です。場合によってはまた水切りもしますし、百合の蕾が咲いたら、また雄しべをとらなきゃいけないし。実際のところ早く全部枯れてくれたら早く捨てられるのに、って思ってしまいます。

お分かりのように、花束を渡す人が一番気持ちいいんです。渡す人には最初から最後まできれいな花束。だけど、もらった側にとってはバラして水切りして、花瓶を洗うまでの仕事付きなんです。でも、人に花束をあげるときって、そんなこと考えてあげる人、いませんよね。

例えば、付き人とか、女中さんとか召使いがいて、その人に「これ、お願いね」って渡せるような身分なら、花束をもらってもいいと思います。けど、もらったあとの処理を全部自分でするとか、本当に、これってプレゼントなん、それとも何かの罰なの?とすら思います。

でも、多分、そんな風に思うのは私だけで、世の中の多くの人は花束が嬉しいんです。もらってテンション上がるんです。分かってます。キレイな花束、いいですよね。もらったあと「じゃ、これお願い」って言える身分になりたい私です。

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