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媒介するわたしたち

今、病棟ではインフルエンザが猛威をふるっている。

前提として、インフルエンザで入院をさせること=肺炎や気管支炎など他の病気も併発していることが多いため、かなり具合の悪い状態だ。
本来であれば、インフルエンザの患者には即効帰宅してもらい、自宅療養してもらうに限る。

でも、高齢社会の日本では難しい。
インフルエンザのかかった高齢者の多くが入院を余儀なくされる。

おそらく、今回の院内感染はお見舞いにきた患者の家族が感染源なのだが
免疫力の低い患者さんには、うわっと一気に広まってしまう。

それに加えて

ここが一番の問題だと思うんだけど
看護師が媒介して患者さんにうつしてしまっている。

多くの院内感染の原因は、医療者による媒介だ。

マスクや手袋のディスポーザブル(使い捨て)は当たり前。
ゴーグルやエプロンももちろん、都度使い捨てているのだけど
患者に触れたその手が一番の感染源になってしまうのだ。

そのため、私たちナースは手洗い必須。今は、持ち運びできるタイプのアルコール消毒のポンプもあり、私はそれを腰にぶら下げて働いている。近くに水道と石鹸がなくても、手をいつでも清潔に保てる優れものだ。

これがあれば多くの感染を防げるというものなのに
感染は起きる。


それは、なぜか。


たとえば、今目の前で吐きそうになっている人にとっさにビニル袋を渡したいとき、その前にあなたは手袋をつけられるだろうか。

これが家族同士だったら何の問題もないだろうけど、医療現場では状況が異なる。

正直、そんな心的・時間的余裕はない。吐いた後の後片付けや着替えを最小限に抑えたいから、素手でもいいからまずはビニル袋を渡すべきと考えるナースもいるだろう。

仮に素手でビニル袋を介助し、のちに綺麗に手洗いしても、手の上の雑菌を完全に洗い流したかどうかを確認する方法はない。

ここで、感染が起きる理由に戻る。

患者にふれるたびに毎回新しい手袋をする時間もコストもないのが現実だからだ。素手でいい時は素手で触るし、急いでいる時はアルコール消毒できないまま次の患者に触れるときもある。

こういう心的・時間的な余白のなさが
感染を生むのだと思っている。


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