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積み重ねる。新しく積み重ねる。きっとずっと、繋がっている。

このnoteは、自由な創作活動を生み出すスタジオ、神奈川県横浜市天王町駅の高架下にある「PILE -A collaborative studio-」 で、創作を生み出す「心」を創る企画として毎月コラムを発行いたします。


担当はHIPHOP、コンテンポラリーダンサー・振付家として現役で活動しているasamicro(アサミクロ)


 今回のコラムの写真はホットケーキ。先日早朝に、「よし、焼こう!」と思い立って、久しぶりにホットケーキを作った。自家製だと、砂糖やシナモン、カルダモン、バニラエッセンスなど、自家製のホットケーキは自分の好きな量やバランスで調合できるのが楽しい。一度にたくさん作って焼いて、今日食べる一枚以外はラップに包んで冷凍する。しかし、私は毎回少し悩むことがある。積み重ねた何枚目のホットケーキを、今日の朝食としてセレクトするのかということである。そこで、今日のテーマは「積み重ねる・繋がる」ことについて触れながら、少し言葉を見つけてゆこうと思う。


手作りパンケーキはいつもときめきます。自宅の台所、朝にて。(撮影:asamicro)

 私は昔から、【整列させる、配置をする】ということが好きだった。幼稚園の頃は家にある、あらゆる人形や人形らしきもの、キティちゃんも、シルバニアも、ターボレンジャーも、りかちゃん人形シリーズも、誰かから貰った異国の不思議な人形も、ジャンルは全て一緒にして横4〜5列、縦7〜8列程に並べることが好きだった。そして、この写真のホットケーキのように、人形を積み上げてゆくことも好きだった。その構図を見ては、【〇〇人形は体重が重そうだから〇〇人形の下、背が高いからこの子の上には2人まで乗せられる】といったように、ジェンガの人形バージョンのような遊びを1人でしていた。

 今も無意識にこだわりの配置がある。朝食には必ず、中央にパン。右上には珈琲。中央上にはジャムやバターなどのパンに乗せるもの。そして左上にはヨーグルトか果物。この配置が決まっていないとどうしても気になってしまう。ちなみにヨーグルトに刺さっているスプーンの向きも決まっている。とても美しい配置なのだ。

 こんな事をアーティスト仲間に話していると「強迫症状みたいだね」と言われた。私は小学生の頃に強迫性障害の経験をしたことがある。発症平均年齢よりも少し早かった小学3、4年生の頃だった。だが、上記に記載したものは辛いものではなく楽しんで、そして工夫をしながら永遠に取り組める遊びだった。

 大人になってから【積み重ねる】という言葉を聞くと、仕事におけるキャリアについての方がイメージがつきやすくなるのではないか。このコラムを発行している新たな創造のための自由な協働空間「PILE」でも、キャリアチェンジやWワークで新しいキャリアを積み上げながら暮らしを見つめている会員の方々がいらっしゃる。私も8年前にキャリアチェンジをし、今に至る。

“初心忘れず” “原点回帰” といった心持ちで、ポジティブに野心を持って新しい何かを積み重ねることは素晴らしいが、全てが前向きに進むわけではない。これまで積み上げたブロックを降りてゆくことも怖いし、ここまでの高さをもう一度隣に積み上げてゆくには同等の時間が必要なこともわかる。そんな時間、体力はあるだろうか。ダンサー・振付家をしている私には、とても逃れることの出来ない現実であり、凹むこともあった。しかし、私には私流のホットケーキの焼き方がある。

冒頭のホットケーキの写真を思い出して欲しい。ホットケーキは1枚目だとあまり上手く焼き上がらない。理由はフライパンを熱している時間が甘くなりやすく、油の馴染み方も焼き加減に影響するからだ。1枚焼いて、フライパンをタオルで冷やし2枚目、3枚目と繰り返す。3枚目のホットケーキは完全に要領をつかめ、焼く時間も短縮できた。そしてボールに残ったタネもしっかりと入れるので、おまけの多い1枚になったりもする。


いつもしっかりとシナモンを振りかけるのが幸せ。

 もし、もう1度ゼロから作り直しても、調理機器や部屋の温度が上昇しているので火加減も調整しやすくなり、何より身体感覚も良くなっているので、キッチンでの動きが良くなる。何が言いたいかというと、1枚目より2枚目、3枚目の方が可能性として美味しくなる条件を知ることができる。そして全く別の料理を作ったとしても、空間と身体は温まっていて感度も上がっている。
感度の高まりは物事の見方の解像度を上げることができ、新しい物でも丁寧に見ることができる。

 ちなみに、1枚目が損をするというわけでもない。1枚目の上に2枚目、3枚目を重ねておくと熱がこもり、時間が経っても温かかったりする。案外1枚目のホットケーキを朝食に選んでしまうのだ。

 さて、もうそろそろ春、気温の上昇と共に思いっきり部屋の窓を開け(花粉症の人は短い時間…)、自分自身の心の温度を少し丁寧に見つめてみてほしい。新しい季節と共に、これまで通りの道も、新たな道も全てはちゃんと繋がっている。今が苦しい時間ならば、今日のホットケーキの話の様に、最初に焼いた1枚目をどうぞセレクトしてみてほしい。少し昔に手がけた物事は、色々な重なりとともに、案外温まっているかもしれない。

 asamicro


PILE -A collaborative studio-とは


PILEは、「新たな創造のための、自由な協働空間」をコンセプトに生まれた、クリエイター向けのコワーキングスペースです。デザイナー、アーティスト、ホビークリエイターなど、様々な職種や背景を持つ方々が空間を共有しながら、自由に制作仕事や創造的な活動を行うことができます。


asamicro 想像する" 心" を一緒に創るプログラム



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