UXという言葉の多用をやめると、みんながhappyかもしれない
サービスやプロダクトを作る過程で大量に飛び交うこの「UX」という言葉は、一見便利そうに見えてかえって制作現場をややこしくさせ、無駄に人々をささくれ立たせていると感じてならない今日この頃です。
それはおそらく「UX」が示す範囲についての解釈が人によってまちまちであることが原因としてあるのではないかと思います。
思い切って「UX」という2文字の言葉を安易に使うのをやめたらどうか?もっと誤解のない言い方に替える、変える、ということをみんなでやったらどうか?と思っています。
混乱の例
私が経験したことや、他のデザイナーから相談されたことの一部を挙げてみると…
UX研修講師の依頼を受け事前に内容確認をし、研修当日に講習を始めた途端、担当者が怒り始めた。「こちらがやって欲しいと思っていた内容と全然違う」とのこと。
双方で「UX」が示すことの認識がズレていて、双方で自分が正しいと思っているのでプロジェクトが進まない。
UXデザインという言葉の下に「デザインなんでも屋」もっというと「プロダクト開発なんでも屋」であることを当然のこととして求められ困った。
等々
かつてはUIデザインについても誤解が多かった
少し前になりますが、UIデザインとはモバイルアプリの画面デザインのことと思っている人が一定数いて話が噛み合わないことがよくありました。
私が「何のUIデザインが必要なのですか?」とお聞きすると「え?」となるのです。そこで、聞き方を変えたらうまくいきました。
「Webツールですか?スマホのネイティブアプリですか?それ以外ですか?」と。
その当時のことを振り返ってみるとデザイン現場全体が、Webデザイン(HTML)、UIデザイン(モバイルデバイスのネイティブアプリ)という区別をしたかったのかもしれません。確かにそういう区別を短い言葉や対比でできたら便利ですよね。わかります。
UXという言葉が生み出すすれ違い
UXという言葉については前述したUIという言葉の誤解よりももっと大きな、誤解どころでは済まないすれ違いを大量発生させている気がしてならない今日この頃です。私が経験した範囲でUXの解釈例を挙げると以下のような感じです。
プロダクト開発での上流工程すべてに必要なことを指す
サービスの価値、社会的意義を具体的に定義すること
ユーザーストーリーを短く言い換えた言葉である
アプリの使い勝手やアニメーション、またはワイヤーフレームを描くこと
コンバージョン率を上げるための具体的なUI改善例を示すこと
どれも間違っていないとは思いますが、これだけのことをたった一言で「UX」とだけ言って自分は正しい!と、コミュニケーションすると求めていることが正確に伝わらないことの方が多いのではないでしょうか。
できるだけUXという言葉を使わないでコミュニケーションする
プロダクト開発の場面や工程により、何を指し示しているかが異なりますから、もっと限定的に具体的に言うことができるはずです。
噛み砕いて具体的に指し示す事にかかる時間や労力を面倒に感じるかもしれませんが、すれ違ったまま時間が過ぎていく損失のほうがはるかに大きいのではないでしょうか。
そのすれ違いの根底には、UXというものに対する理解度の差が人によってとても大きいということがあると感じます。
UX警察みたいなことをやめる
どうしてそうなるのだろう?と自分なりに考えてみました。私の推測を挙げてみます。
UXのことをわかっていないと恥ずかしいと思わせる圧力
UXのことをわかっている、しっかり学んでいると取り繕う(前項があるからそうなってしまうとも言える)
UXをきちんとやらないとビジネスが成功しないという危機感
「顧客体験」と日本語で言って、分かりやすくなったつもりになる
こういったことをやめてみると、相手が何を言っているのか、自分が何を相手に伝える必要があるのか、というようなことがもっといろんな職種の人、いろんな経験値の人との間でも明確になるんじゃないかとよく思うんですよね。
本来の目的は何でしたっけ?
世の中や所属する会社をよりよくしよう、ビジネス成果を出そう、自身のスキルアップをしよう等々、そこには元々、前向きで建設的な動機があったはずですよね。
端的で効率よく便利な言い方だったはずのUXという言葉が、こんなにみんなをいろんな場面で困らせているなら、それはもはや便利な言葉ではなく、役目を果たせていないと、個人的には感じています。
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