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地方移住からの海外移住について

最近、息子が神妙な顔つきで言ってきた。
「オレ、日本のこと、忘れないように、忘れないようにって頑張っているんだよ。でも忘れそうになっちゃうんだ。」

まるで千と千尋の神隠しで、千が一生懸命自分の本名である「千尋」を忘れないようにしているかのようだ。

息子は5歳の時点で日本からニュージーランドに移住したから、日本で通っていた保育園のことや大好きなお友達のことをまだかろうじて覚えている。
先日は、日本語の絵本で雑巾掛けのシーンが出てきて、日本ではお掃除をこうやってやることもあるんだよーと教えてあげたら意外にも息子から
「保育園で昔やったよ!」と逆に教えられた。

ちなみに2歳でこっちに引っ越してきた娘の方はもうほとんど日本のことを覚えていなさそうだ。
彼女にとっての日本とは、Netflixでたまに見る「トトロ」の世界、YouTubeで見る「メルちゃん」や絵本の世界でしかないかもしれない。

私たちは海外移住する前、栃木県の那須塩原というところに住んでいた。
といっても、そこで生まれ育ったとかではなく、夫も私も海外では「I am from Tokyo」とアバウトにいうくらいのエリアで生まれ育ち、一方、息子と娘は東京の病院で生まれ、しばらくは東京のど真ん中で暮らしていた本物のfrom Tokyo kidsだった。
ある日突然、夫の頭に日本の地方で暮らすというアイデアが降り立って、いいじゃん!いいじゃん!と、そのままとんとん拍子で地方移住をしたのだ。

海外移住の前に、地方移住。
ふと、海外移住する前に地方移住したという経験を改めて考えてみたくなった。


私がまず思うのは、地方で暮らしてある一定の「不便さ」を楽しめるようになっていたことは、とても海外移住で役に立っているということ。
都内ではなんでもお金さえ払えばいつでも簡単に手に入るけれど、地方ではそういう便利さがない。そして、私はお金で解決するのではなく、自分自身が工夫することで豊かな生活を送るということを田舎暮らしで初めて学んだ。

ここ、ニュージーランドの郊外で暮らしてみると、不便さという点では日本の田舎と同じレベルだ。お店が夜遅くまであいているなんて滅多にないし(スーパーマーケットは例外かな)、何より物価も高い。外食をしたら、別に特別高級なところじゃなくても四人家族で80ドル(日本円で7000円を超える)になったりもする。
そんな中、地方で暮らす中で身についた自炊力に助けられている。ニュージーランドの野菜は美味しい気がするから、料理も楽しい。

何か「できあいのもの」をそのまま買うのが全てではない、という地方暮らしで得た逞しさには今も支えられている。例えば我が家にはバスタブがなくて、1年間本当に辛かったのだが、先日はDIYグッズを売っているお店で、大きめのプラスチック製の洗濯物入れみたいなのを2個買って(一個5ドル!)それを子ども用のバスタブにすることにしたら、子どもたちが大喜びだ。1年の悩みがまさか10ドルで解決するなんて!
日本のようなパンが食べたいなーと思って、こっちでパン作りを始めたりもした。



次に、日本の田舎ではとにかく「動き回る」ことの楽しさを知った。地方は娯楽が少ないと嘆かれることがあるけれど、私たちはそんな風に思いたくなかったので、常にGoogleマップと睨めっこしたり、誰かにあえばオススメな場所ありますかね?と聞いてまわっていた。
週末ごとに、地元の人に教えてもらった素敵な場所にお出かけしたり、季節を感じる自然スポットに足を運ぶことが自分たちの楽しみになっていった。

ニュージーランドで暮らしても、このライフスタイルは変わっていない。
好奇心旺盛な我が家は、車で片道2時間以内ならギリギリ許容範囲!の精神で、とにかくオークランドの中を縦横無尽に開拓している。
先日は、夫が見つけたチベット寺院を訪問したら、意外にも6歳の息子も4歳の娘も思い切り楽しんでくれていた。一回もつまんないなんて言わなかったのがすごい。
この前は美容師さんに教えてもらった潮干狩りに行ってきた。無料でたくさんのアサリが獲れて、夫が酒蒸しにしたら美味しかったなー!
前にオーストラリア在住の友人に、ニュージーランドに移住すると伝えたら「何もないところなのになんで?!」と驚かれてしまったけど、今のところ何もないという印象は全くなく、思い切り楽しんでいる。

その他にも、地方暮らしで車の運転に慣れていたことや、自然が好きになっていたことも良かっと思う。あとは日本の田舎で自分軸をもったとてもかっこいい人たちに出会ったこともありがたい。
ここ、ニュージーランドで、心がざわつきそうなことに直面した時には、栃木県で出会った素敵な人たちならどう考えるかなーと想像すると、物事の解決の糸口が見えてくる・・・なんてこともある。
子どもたちについては正直、私にはよく分からない。息子も娘も地方に引っ越した時はまだ物心がついていなかったみたいだから、特に新しい環境でお友達を作ることに慣れていたとか、そういったことはなさそうではある。



別に意識して海外移住の前に、地方移住を計画していたわけではないのだが、結果としてその決断は今の自分たちの暮らしを支えてくれているなと感じる。
人生って面白く出来ているなー。
後から振り返ると、全ての過去がピタピタっとパズルのピースのようにはまって、今という素敵な情景の一部になっているようで。

朝、窓を開けて深呼吸をすると、涼しい秋の風になっていた。ランニングをしているとたまにサクサクっと落ち葉を踏む音が響く。窓の外ではまだ蝉が最後の力を振り絞ってないているけれど、確実に秋に入っている。
一方、日本ではうららかな春がもうすぐそこに来ている、と母親からの嬉しそうなLINEが届く。
日本と違う場所に住んでいることを色々な形で日々、実感するのだ。でも、今、ここの場所を楽しんでいるときには、あの地方暮らしを楽しんだ時間が重なっているような気がする。そんなことを思いながら、日本の田舎でもそうしていたように、美味しいお茶を淹れながら窓の外の景色を眺めて一息つく。目の前には、那須塩原のマンションから見えていたあの雄大な山々はもう広がっていないのだけど。

【文化を感じる週末!】オークランドは大きな町なので、色々と探検する場所に溢れていてとっても楽しい!
特に夫がリサーチが得意なので、毎週末ここに行ったら楽しいかなーあっちかなーとGoogle Mapと睨めっこ、色々な人からのおすすめ情報をメモメモな毎日。

ということで、今回はオークランドならではの文化体験をしたい!ということで、山の方へチベットを漢字に、そして海の方には古いNZの歴史を漢字に行ってみました。文化体験というとかしこまった響きですが、キッズフレンドリー。子どももとても楽しんでいました。

https://youtu.be/FpRR9z3CZR0


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