私になるまで16

教員採用試験は見事に落ちたが、養護学校の教師の資格は取ろうと心に決めた。

そのためには養護学校の教育実習は必須だった。私が、行ったのは、家からフェリーに乗り、更に、普通電車で1時間の所にある養護学校だった。最初は、電車で行ったが、養護学校に私が小学校の時にいた先生が偶然そこに赴任していて、翌日から毎日車に乗せてくれた。有難い話だったけど、電車なら眠れたが、そういう訳にもいかず色々雑談しながら2週間…その頃の私は随分お喋りさんになっていたが、毎日遅くまで実習簿を書き、授業計画書を作っていたためぼーっとした顔だった。それに気づいた先生は「寝ていいで。」と言われたが眠れなかった。

実習は高等部の軽度の子どもたちのクラスだった。「先生、大学って何するとこ?」「先生、どんなことが好き?」「先生何でここに来たん?」障害がある先生なんてとても珍しいらしくて、質問攻めにあった。そのうち子どもたち同士で先生ごっこを始めた。私に生徒役をやるように言われて。この子達にもやりたいことがあるんだなァ夢があるんだなぁ。と、思ったのを思い出す。どんなに障害があっても、みんなと同じようになりたい!普通に暮らしたい。と思う気持ちがよく伝わった。この子達のために何ができるだろうか?そんな思いを胸に秘め、実習と向かい合った。高校三年生、ある子は春から社会人として働くことが決まっていた。しかし、大半は、先の予定がたっていないようだった。

不安なのは私だけでは無い。そんな大袈裟なこと考える子はいない。ただ、みんなと同じことがしたい。街の中で、地域の中で!私にはそう見えた。楽しい授業実習は、あっという間に過ぎ、実習最後の日には行かないでと泣く子がいた。うしろ髪ひかれながら学校を去る。大学卒業まであと少し。この先の事を考えると不安だったが、これで教員免許は取れた。

今はまだ修行中の身ですが、いつの日か本にしたいという夢を持っています。まだまだ未熟な文章ですがサポートして頂けたら嬉しいです。