浅野良雄@〈対話法〉考案者・心理カウンセラー

大学で電子工学を専攻。大手電機会社の技術者、各種学校の講師等を経て心理カウンセラーに。…

浅野良雄@〈対話法〉考案者・心理カウンセラー

大学で電子工学を専攻。大手電機会社の技術者、各種学校の講師等を経て心理カウンセラーに。合唱指揮者、第九合唱団事務局長、市民活動代表、研究誌の編集長などを歴任。1994年に〈対話法〉(https://www.taiwa.org/)を考案。現在、対話法研究所所長。元・川柳作家。

最近の記事

「傾聴」スキルの普及が難しい原因と対策を整理してみました

「傾聴」にまつわる用語の定義と分類に関する試案 ー重要な専門用語が複数の意味をもつ問題ー  対人コミュニケーション、その中でも特に心理カウンセリングにおいて「傾聴」が大切だと言われ続けて久しいが、一般社会への普及は遅々として進んでおらず、カウンセラー等の専門家の間でも、その定義やトレーニング方法において、定まったものがない状態が続いているようである。そして、この原因の一端は、「共感」(より専門的な用語としては「感情移入的理解」)という概念と技法の難解さに加えて、ときには「共

    • 石橋を叩いて渡る〈対話法〉!!

      相手の発言内容が「あいまい」な時はもちろんのこと、「だいたいわかった」と思える時でも「確認型応答」をすると効果的です。 また、時には、「よくわかった」という自信があっても、念のために「確認型応答」をしておくことが大切な時があります。間違い(勘違いや思い違いなど)が許されない重要なことについて話し合っている時は、特に必要です。 なお、「確認型応答」は浅野の造語であり、「相手が言いたいことの要点(を想像や推測を交えて理解し、自分が理解した内容が合っているかどうか)を、相手に言葉

      • これからは〈対話法〉を「後ろ盾」に

        「あえて対話をしない」集いを始めたことにより長年の願いが実現しそうです。 長年、全国各地で〈対話法〉の講演や研修会をしてきた中で、参加者から「さまざまな理由で話を聞いてもらいたい時があっても、否定も批判もしないで聞いてくれる人や場が、なかなかなくて困っているんです」という悩みや希望を伺うことがありました。 もちろん、従来から、医療機関、心理士、カウンセラー、電話相談(いのちの電話等)、自助グループなどはあるのですが、休日や夜間でも稼働しているところは限られています。まして年

        • 「あえて対話をしない集い」の試み

          一般的には「対話」が重要であることは言うまでもないのですが、目的によっては、否定や批判はもちろんのこと、共感も賛同もされずに「話したいことを話し切れる場」も必要です。ここで紹介する「あえて対話をしない」集いは、それをオンラインで実現する試みです。 この集いは、語り手が話している間、他の参加者は、聞いていますよというメッセージを伝えるための頷きや表情等の非言語コミュニケーション以外の応答はしないところに特徴があります。いわゆる自助グループのミーティングで使われる『言いっ放し、聞

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          適切な「ことば」がうかばないうちは発言しない(黙っている)というのも、立派な「コミュニケーション・スキル」。

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          メーリングリストやSNSでのトラブルを予防するためのルール(努力目標)

          私が参加していたメーリングリストやSNSでの交流で、過去に5〜6回、険悪なムード(いわゆる「炎上」)になったことがあります。 私が、うまく介入して調整できたグループは、その後も存続していますが、私が、そこまでできる権限がなかったグループの多くは、トラブルをきっけけに閉鎖されてしまいました。私は、これらの経験から多くを学びました。 そこで、私が管理する権限のあるメーリングリストやSNSでの交流では、必要時応じて〈対話法〉の原則(自分の考えや気持ちを言う前に、相手が言いたいことの

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          「〈対話法〉で学ぶカウンセリング勉強会ーその理論と実技」のご案内(参加無料)

          開催日程(原則): 平日:毎週金曜日 11:00〜12:30(12:45まで延長あり) 週末:毎週土曜日 20:00〜21:30(21:45まで延長あり) 定員:各回10名 参加資格: ◯浅野が考案した〈対話法〉の理論に賛同していること。 ◯現役の対人支援者(カウンセラー、心理士、相談員、医療・福祉関係者、教育者など)であること。なお、有償・無償は問いません。つまり、必ずしもプロ(職業)である必要はありません。詳細は浅野までご相談ください。 主催:浅野良雄(対話法研究所

          「〈対話法〉で学ぶカウンセリング勉強会ーその理論と実技」のご案内(参加無料)

          クレームの真意は「意外」なところに!!

          仕事柄、鉄道を利用する機会が多い私は、あるとき、講演先から自宅に戻る在来線の車中で、地震に遭遇しました。数十分ほど停車しているあいだ、「地震のため停車します」との車内放送はあったものの、次の駅での新幹線への接続情報についての案内はありませんでした。 やがて新幹線の接続駅に到着し、私が新幹線を待っていると、私と同じ電車に乗っていたと思われる客が駅員に話しかけている声が聞こえました。周囲の誰もが気づくほど大きな声だったので、思わず声の方向を見ると、「研修生」という腕章をしている

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          「初めて!!」に関われることの喜び

          我が家から西へ4Kmほどの距離に「岩宿遺跡」(群馬県みどり市)があります。この遺跡の「歴史」は、昭和21(1946)年に、群馬県桐生市(私の地元)に在住していた考古学研究者、故・相澤忠洋氏によって、関東ローム層の中から一片の石器が発見されたことに始まります。昭和24(1949)年には、明治大学考古学研究室のメンバーと、相澤氏を含む発掘調査団により、日本で初めて、関東ローム層の中から石器が出土することが確認されました。これは、日本文化の始まりが、当時の定説よりも1万年以上遡るこ

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          ひとは褒められると必ず嬉しいのだろうか?

          このタイトルの答えを一言でいうなら「ノー」です。ここでは、その根拠の一端を示す二つの研究を紹介します。 2005年に起きた、福知山線脱線事故を受けて、JR西日本は、翌年、「安全研究所」を社内に設立しました。そして、2008年に、人的要因が安全に与える影響についての研究結果が発表されました。 研究の一つとして実施された、「効果的なほめ方・しかり方」についてのアンケート調査によると、部下が行った工夫を上司が評価した場合、両者の間に良い関係性が築かれている場合は、業務に対する責

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          メーリングリストでのトラブル体験と、その解決法

          以前、私が管理者をしていた、あるメーリングリストで、こんな体験をしたことがあります。それは、辛くて嬉しい経験でした。現在は、メーリングリストよりもSNSが多く使われるようになりましたが、そこで起こるトラブルには共通点があるので、参考になると思います。 ある日、参加メンバーの一人のAさん(ハンドルネーム)が、メーリングリストの運営方法について、意見を投稿しました。もし、その内容や書き方が、肯定的・建設的なものなら、なんら問題なかったのですが、実際は、それとは正反対の、否定的・

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          〈対話法〉の誕生と、その後の展開

          私は大学で電子工学を学び、技術者として10年間、大手電機メーカーに勤務の後、退職し、学校等で講師をする傍ら、民間団体(全日本カウンセリング協議会)でカウンセリングを学びました。現在は、主として地元の高校にカウンセラーとして勤めながら、〈対話法〉というコミュニケーション技法の普及活動をしています。 カウンセリングの学習と実践を通して私が知ったのは、人が抱える悩みの多くは「不適切なコミュニケーション」に起因するということでした。一方、心理的支援が必要な人の数に比べて専門職が少な

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          一般に、「共感」という言葉は「同感」や「賛同」という意味で使われることが多いため、学習者の頭の中で「混乱」が生じています。しかし、浅野が発案した「確認型応答」(相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめるための応答)という概念を導入すると、この「混乱」は、一挙に解決します。

          一般に、「共感」という言葉は「同感」や「賛同」という意味で使われることが多いため、学習者の頭の中で「混乱」が生じています。しかし、浅野が発案した「確認型応答」(相手が言いたいことの要点を、相手に言葉で確かめるための応答)という概念を導入すると、この「混乱」は、一挙に解決します。