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包含関係でなぜ逆・裏が妥当でなく対偶が妥当になるかを検証する

ある包含関係を示す命題が真であるとき、逆・裏が偽となり対偶が真になるというのは知っている人が多いと思います。

これまでの記事でもそのことに触れてきました。

今回は図を用いて改めてなぜそうなるかを解説したいと思います。



それでは命題「PならばQである」が真であるときについて考えてみましょう。Pを前件と呼び、Qを後件と呼びます。



前件肯定 「PなのでQである」


「PならばQである」であるとき「PなのでQである」という主張は前件肯定と呼ばれます。

「Pなので〜」と対象が前件のPであることを肯定しているため前件肯定と呼ばれます(モーダス・ポネンスと呼ばれることもあります)。

対象をRとして三段論法に書き起こすと以下のようになります。

大前提:PならばQである
小前提:RはPである
結論:ゆえにRはQである

図に書き起こすと以下のようになります。

Pのすべての外延はQ(QはPの内包)なので、PであればQであることは保証されます。よって前件肯定は妥当といえます。

三段論法としても妥当な結論を得ることができる式です。

・Rが周延している場合 AAA-1 で妥当である
・Rが周延していない場合  AII-1 で妥当である


後件肯定 「QなのでPである」


「PならばQである」であるとき「QなのでPである」という主張は後件肯定と呼ばれます。後件肯定は「」のことです。

「Qなので〜」と対象が後件のQをであることを肯定しているため後件肯定と呼ばれます。

対象をRとして三段論法に書き起こすと以下のようになります。

大前提:PならばQである
小前提:RはQである
結論:ゆえにRはPである

図に書き起こすと以下のようになります。

Qの外延はPだけとは限りません。よってQであればPであるという保証はなく後件肯定は妥当ではありません。「後件肯定の虚偽」と呼ばれます。

三段論法としても妥当な結論を得ることができない式です。

・Rが周延している場合 AAA-2 で妥当ではない
・Rが周延していない場合 AII-2 で妥当ではない


前件否定 「PではないのでQではない」


「PならばQである」であるとき「PではないのでQではない」という主張は前件否定と呼ばれます。前件否定は「」のことです。

「Pではないので〜」と対象が前件のPをであることを否定しているため前件否定と呼ばれます。

対象をRとして三段論法に書き起こすと以下のようになります。

大前提:PならばQである
小前提:RはPではない
結論:ゆえにRはQではない

図に書き起こすと以下のようになります。

Pでないとき、考えられるのは「Qである」か「Qではない」のどちらかです。

PでなければQではない保証はありませんので前件否定は妥当ではありません。「前件否定の虚偽」と呼ばれます。

三段論法としても妥当な結論を得ることができない式です。

・Rが周延している場合 AEE-1 で妥当ではない
・Rが周延していない場合 AOO-1 で妥当ではない


後件否定 「QではないのでPではない」


「PならばQである」であるとき「QではないのでPではない」という主張は後件否定と呼ばれます。後件否定は「対偶」のことです。

「Qではないので〜」と対象が後件のQをであることを否定しているため後件否定と呼ばれます(モーダス・トレンスと呼ばれることもあります)。

対象をRとして三段論法に書き起こすと以下のようになります。

大前提:PならばQである
小前提:RはQではない
結論:ゆえにRはPではない

図に書き起こすと以下のようになります。

PはQに包含されていますのでQはPの内包です。QでなければPである可能性はありません。よって後件否定は妥当といえます。

三段論法としても妥当な結論を得ることができる式です。

Rが周延している場合 AEE-2 で妥当である
Rが周延していない場合 AOO-2 で妥当である



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