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白いぼうし

ある日の夕方、4年生の次男は国語の宿題のことで悩んでいた。

「今日の宿題は『白いぼうし』の感想を書かなきゃならないの。ノートに5行くらい、または4行くらい、それか3行くらいで書かなきゃだめなの」

『白いぼうし』は4年生の国語の教科書に出てくる作品。
私も自分が小学生のときに教科書で読んだし、中1の長男も4年生でやった。ああ、またこのお話に出あえたと懐かしく、いったい本当は何行なのよと心の中でつぶやくと、

「お母さん、感想って、おもしろかったと思ったことでもいいの?」

と聞かれたので、もちろんいいんだよと答えた。
どの辺がおもしろいって思ったの?と問いかけてみると

「えーとね、松井さんがぼうしに夏みかんをかくすところ」とにんまり。


『白いぼうし』のストーリーはこんな感じです。

白いぼうし    あまんきみこ作

松井さんはタクシーの運転手。
お客さんから車内に香るいいにおいについて問われ、いなかの母が送ってきてくれた夏みかんだと告げる。もぎたてをたくさん送ってきてくれたのが嬉しくて、いちばん大きな夏みかんを持ってきたのだ。

お客さんを降ろした後に、道端に白い小さなぼうしが落ちているのに気づく。車から降りて、ぼうしを拾うと、中からふわりと白いモンシロチョウが飛び立った。ぼうしの裏には「たけのたけお」と刺繍で縫い取りがあった。
せっかく捕まえていたモンシロチョウを逃がしてしまった。この子をがっかりさせたくないと考えた松井さんは、タクシーから夏みかんを取ってきてぼうしを上からかぶせた。
松井さんがタクシーに戻ると後部座席には女の子が座っていた。
道に迷った、菜の花横丁まで行って欲しいという。
白いぼうしのある場所に、小さな男の子とそのお母さんらしき人がやってくるのが見え、松井さんは車を発車させた。
「あの子はどんなに驚くだろう。
モンシロチョウがまさか夏みかんに変わっているなんて」
松井さんがそんなことを思っていると、先ほどまでいた女の子の姿が車内から消えていた。
不思議に思った松井さんが窓の外を見ると、一面のクローバー畑。たんぽぽの黄色とわたげでいっぱいの野原。見上げると白いチョウが20も30もおどるように飛び回っている。「よかったね」「よかったよ」と小さな声が聞こてくる。
車の中には、まだ夏みかんのかおりが残っていた。

さわやかな夏みかんのかおりが今にも漂ってくるような素敵な作品。

「感想」の宿題に取りかかる前に、次男に「もう一回一緒に読んでみない?」と提案。彼がこの物語を理解できているのか、確認しておこうと思った。次男が好きなクイズ形式でやってみることにした。

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「松井さんに夏みかんを送ってくれたのは誰でしょう」

「おふくろ。ああ、ああ、松井さんの〝お母さん”だ」

「正解です。そうだね、教科書には「いなかのおふくろが」って書いてあるものね、おふくろ、正解!」

「道端に落ちていたものは何でしょう?」

「白いぼうし」

「正解。その白いぼうしを、松井さんはどうして、その後にどうなりましたか?」

「えーと、松井さんが拾って、そしたらチョウが飛んでっちゃった」

「正解です。何チョウ?」

「モンシロチョウ」

「大正解です。そのぼうしには何か書いてありましたか?」

「何かって??」

「えーと、誰のぼうしかわかりましたか?」

松井さん

「えっ?(私ふき出す)ま、松井さんですか?もう一度よく考えて、教科書を読んでみてください」

「あ、間違えちゃった。たけいさん

「(私爆笑)落ち着いてください。たけい、で合っているかな?」

「あ、えーと、えーと、たけのたけおっていう子ども」

「正解です。たけのたけおくんの白いぼうしなんだよね。たけおくんは何を捕まえていたの?」

「たけおはー(呼び捨て)モンシロチョウを捕まえてー、ぼうしの中に隠していた」

「その通りです。それをタクシーの運転手の松井さんがうっかり逃がしちゃったんだよね。松井さんはチョウを逃がしてしまった後、どうした?」

「車から夏みかんを取ってきて、ぼうしの中に入れたの」

「そうだよね。ぼうしにどうやって夏みかんを入れたの?」

「地面に夏みかんを置いて、上からぼうしをかぶせたの。そしてぼうしが風で飛ばないように石も置いた」

「そうそう。ぼうしのつばに石を置いたって書いてあるものね。よく気づいたね。ぼうしのつばってどこだかわかる?」

「わかんない」

家にあるぼうしを見せて確認。


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次男は2歳の健診(任意で受診した)で小児科医から「ことばの遅れ」を指摘された。
出産した病院の精神科で、臨床心理士さんによる面談を3か月に一回ほど親子で受け、その間に田中ビネー知能検査やWISCも数回体験した。
幼稚園の終わりの頃の心理士さんとの話では、ちゃんと成長が見られるので、このままでいいと思う、面談ももう来なくて大丈夫ですよと言ってもらえ、私も安心していたのだが……

小学校の就学前検診で引っ掛かり、再度この臨床心理士さんに相談し、区の教育センターにも足を運んだ。


次男の小学校には、計算や読み書きに不安がある子をサポートするためのクラスが設置されている。
算数の授業時間にマンツーマンで計算を集中的に学べたり、国語の読解の部分をサポートしてもらえたりする。

「お子さんは、検査数値からいうと利用しなくて大丈夫にあたりますが、もしお母さんが希望すれば、1年生の最初からそのクラスの利用ができますがどうされますか?」

入学前に問われた。
まずは利用しないでやってみて、授業が始まってから担任の先生のご意見も伺いつつ、途中からでも利用可能か聞くと、もちろんOKとのこと。

1年生、2年生、3年生の歴代の先生方には、次男の就学前の経緯を、初めての個人面談で必ずお話するようにしている。

今までのところ歴代先生方は
「そうなんですかー。まじめにちゃんとやってますよ」
と笑ってくださることが多い。
「就学前検診に引っ掛かったのは、おそらくテストの問題慣れしてないからじゃないかな。何を問われているのか、テストを解き慣れていない子にはこたえづらいこともありますから」と1年生の担任の先生に言われて以降、〝問題に慣れること”をあたまに置き、次男との勉強時間に向きあっている。

問題に慣れるためには、正答率を上げないとやる気が削げてきちゃうよねと、学年がひとつ下の国語の文章題中心の問題集(現在3年生であれば2年生のを)を使ったりしている。
「本文の文章から書きぬきなさい」だとか「本文中から三文字で答えなさい」だとか「同じ意味で使われている言葉を探して書きなさい」だとか、以前よりもかなり答えられるようになってきたと私は感じている。

上記のようなクイズ形式もいい。学年が上がると、教科書の文章も長くなってくるので、本当にストーリーを追えているのかな、理解できているのかな?と確認する。
彼にとってはめんどくさく、多少うんざりしてもいるだろう。
でも私は次男とゆっくり進むこの方法をわりと気に入っている。
珍回答がおもしろいのだもの。かわいくてたまらないよ。

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『白いぼうし』の感想の宿題、次男は6行分書いていった。

じっさいのところ、4行いったところで、もういい~、となったのだけど、私の「もう一声っ!」に頑張ってくれたのだ。ありがとう。
お母さんはキミと勉強する時間が、実はすごく楽しみなのです。

私が子どもとの勉強を楽しみに思える理由がもう一つ。
noteで出会えたかすみさんみほさん
おふたりが掲げる『ぐんぐんがんばるんるん』に深く共感しています。

私も、子どもも、イライラしてしまったり、怒ってしまったり、どうして伝わらないのだろうと泣きたくなったり……。
そんな日もあってもいい、でも楽しく学べる日も必ずあるよ、コツコツ一緒につくっていこうよ、という気持ちがこのマガジンからあふれ出ています。
さあ今日も、ぐんぐんがんばるんるん。


ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

※見出し画像はみんなのフォトギャラリーから〝りりかる(Lyrical Spirit)”さんの作品「田舎暮らし10年目。」をお借りしました。ありがとうございました。














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