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日本のロックはパラレルワールドで成立してる

今回の記事は結構壮大な内容になっている。ロードオブザリングぐらいには壮大な内容だ。正直なことを言うとあまりにも壮大すぎて、無謀だったなとも思いつつある。ガンダルフとサルマンの区別がつかないくらい無謀だったと思う。え?ホビットの話はやめろって?

タイトルにもある通り日本のロックはいくつかのパラレルワールドから成り立っている。なんでかっていうと人によって、邦楽に対する歴史認識に誤差が生じていることが起因しているからだ。

実はこの問題、議論されそうで意外と言及されていなかったのでこの機会に触れていこうと思う。

山下夫妻とくるりから見る一般層とのギャップ

先日関ジャムという番組を見てた時の話です。その日は有名アーティストの隠れた名曲を紹介する企画でした。

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相変わらずこいつ関ジャムdisんの好きやなぁって思ってるあなたに言いたいのが、まさかの一曲目が竹内まりやの「プラスティック・ラブ」だったんですよ。

全然隠れてねぇ

音楽好きなら誰もが知るクッソ名曲やん。シティポップの名曲と言えば?って質問したら打率9割5分の確率で飛び出す「プラスティック・ラブ」が隠れた名曲な訳ないやん。関ジャムさん視聴者舐め過ぎですやん。って思って別の回の関ジャムも見てみたんですよ。

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これ竹内まりや特集の回でやってた竹内まりや人気曲ベスト20なんですけど、「プラスティック・ラブ」ギリギリ20位に滑り込んでる形になってるんですよ

思ったんですよ。世間の人たちが思い描く竹内まりやって、クリスマスが今年もやってくるケンタッキーおばさんって認識なんだってことを。なんなら夫の山下達郎だって、世間の認識からすればキングオブシティポップではなく、きっと君は来ない一人きりのクリスマスイブうぅぅ…おじさんなんだってことを。

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また別の話で高校時代の話です。この時友人2人とロックインジャパンフェスに来ました。自分の目当ては当時名盤「The Pier」を発表して'音楽雑誌では'めちゃくちゃ人気だったくるりでした。衝撃だったよね、あんなガラガラのグラスステージを見たのは

数時間前のトップバッターだったゲス極の勢いはそこにはなく、しまいには周りのおじさんが「くるりはお昼寝タイム」とか言って芝生で爆睡し始める始末。

友人たちからも「つまらん、別のとこ行こ」と言われて渋々帰った苦い記憶があります。この時感じたんですよ、明らかに邦楽の評価基準とか歴史的認識には一般層とオタク層で大きなギャップが生じていることを。

邦楽の名盤みんな正直知らない説

上に貼ったリンクはローリングストーン誌が選んだ日本のロック名盤100選の上位50位をまとめたものだ。

どれも名盤と呼ぶに相応しいアルバムたちだ。とはいえ一般の音楽リスナーがこの名盤たちを知っているかと言われると話は別だ。むしろ音楽オタクの間でもこれ全部聴いたことあるかと言われたら怪しんじゃ無いだろうか?

ここで邦楽の歴史認識問題を引き起こす要因が一つ出てきた。それは日本の音楽評論はかなりアングラ気質なところがあるということ

現在日本で最も影響力のある音楽雑誌はなんだろうか?恐らくロッキンオンジャパンで間違い無いだろう。ただこの雑誌は産業ロックという呼称を生み出した背景がある通り、元々非売れ線を標榜して頭角を現した雑誌だ。

廃刊ではあるが今でも多大な影響力を持つsnoozerだって、元々はロッキンオンの編集者だった田中宗一郎が立ち上げた雑誌だ。この両雑誌に共通するのは、陽の目を浴びないアングラ気質なアーティストをピックアップするオタク的思考にあるのだが、問題はそれを誰もが知る共通認識として共有したところだ。

先程の邦楽名盤のくだりにしろ、音楽オタクの皆さんだってオタクの沼に入った時この名盤リストを見たとき困惑したと思う。だって9割知らないアーティストで占められているから笑。

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普通に生活している上で、嘉納昌吉フィッシュマンズ アナーキー遠藤賢司の名前なんて知る機会は皆無だろうから。遠藤賢司に至っては俺と地元が一緒なのに、同じ地元の森三中黒沢と比べると地元での知名度は壊滅的だ。ちなみに自分もこの名盤リストを見た時困惑したし、正直に言うと未だに3割ぐらいは聴いたことない笑。

はっぴいえんど史観という問題

日本における70年代後半ごろからニューミュージックと呼ばれる概念が、それまでのフォーク、歌謡曲主体のメジャーシーンにとって変わる形で登場した。まぁざっくり言うと今のJ-POPのベースとなった存在と捉えてよいだろう

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このニューミュージックの土台を作った大滝詠一細野晴臣らによって結成されたのがはっぴいえんどだ。はっぴいえんどといえば、初めて日本語でロックを演奏したバンドとして、日本のロックシーンのパイオニア的評価を得ているバンドである。

現在音楽オタク界隈で日本の音楽シーンを語る時、はっぴいえんどを起点とする歴史観がある。俗に言うはっぴいえんど史観と言われるものだ。洋楽で言うとビートルズ起点で音楽シーンの歴史を語るようなものである。

しかしこの歴史観には大きな欠陥がある。それははっぴいえんどはリアルタイムでは壊滅的なレベルで売れてないのだ。

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実はこの歴史観自体は後年出てきたもので、80年代以降にメンバーたちの活躍によって、はっぴいえんど自体の存在が認知されたことで現れたものだ。つまりリアルタイムでの知名度は恐らく絶望的に低いことを考えると、実は後続ミュージシャンへの影響という意味ではかなり怪しい部分がある。

とはいえ大滝詠一、細野晴臣、松本隆、鈴木茂のその後の実績は素晴らしいのは間違いない。彼らが関わった松任谷由美山下達郎はJ-POP創世記を築いたアーティストだし、はっぴいえんどメンバーの叡智を集結した松田聖子は日本最強のアイドルだ。


サザンオールスターズ起点の一般層邦楽史

洋楽におけるポップスおよびロックの歴史を語る時、その歴史のタイムラインがしっかりしているのは、その起点にビートルズが存在しているからだ

ビートルズは音楽性とセールスなどの実人気の両方において高い次元を誇る稀有なバンドだ。彼らの存在があるからこそ、芸術性、セールスのどちらの歴史的観点で話を進めても、共通のタイムラインを共有することができるのだ。

だが前述のはっぴいえんど史観のようにはっぴいえんどはセールス面では厳しいのが実情だ。というかこの頃の日本のロックバンドは学生運動をきっかけとしてたものが多いため、アングラ色の強いバンドが多くメジャーシーンに登場することは皆無だ。

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よく懐メロを特集する音楽番組があると思うが、80年代に入るまでロック系のアーティストが出ることは無い。良くて矢沢永吉及びキャロルといった具合だ。

結局のところ一般層がこのような音楽史を知るきっかけは懐メロ番組ぐらいしか無いのだ。良くも悪くもテレビの影響力とセールス中心の日本のポップスシーンの実情が窺える。

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そうなると一般層が触れる最古のロックバンドは必然的に1組に絞られる。サザンオールスターズだ。彼らは日本のロックバンドとして、セールス面で10年以上戦える初めてのロックバンドなのだ。

一般層はここでサザンを起点とした邦楽史、もしくはサザンを歌謡曲主体の旧邦楽シーンと現邦楽シーンの分岐点として扱う邦楽史を展開する。

だがサザンを起点とした邦楽史の問題は、ヒット曲を基軸とした邦楽史が展開されてしまうことだ。つまりメジャーシーンのみを扱った邦楽史となるため、サザン以降のバンドはブルーハーツBOOWYレベッカといったバンドブームの登場まで待つこととなってしまう。

そうすると日本のシンセサイザー発展に大きく寄与したYMOの存在が下手したら無視される危険性がある。アルバムミュージシャンのYMOがこの邦楽史に登場するとなると、恐らく異色作となった「君に胸キュン」が触れられるという、ある意味誤った形で当時することとなるかもしれない。

実際この邦楽史の弊害は先程の山下達郎竹内まりや夫妻で見られている。彼らのヒット曲は言うまでもなくクリスマスの歌なのだから。シティポップの大御所として登場することは可能性として低い。

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またこの頃の邦楽ロックシーンを語る上で欠かせない、INUローザルクセンブルグスターリンといったパンク系のバンド群もヒット曲基軸の邦楽史では無視されることとなる。

ハイスタ、ナンバガ、バンプ登場による邦ロックという概念

一般層が展開するヒット曲基軸の邦楽史と、音楽オタクが展開するはっぴいえんど起点の邦楽史の2つの歴史的史観が存在することとなった。

この2つの歴史的史観は90年代に入ると共に大きな動きを見せる。まず一般層の邦楽史はイカ天によるバンドブームとCDバブルだ。これによりメジャーシーンでもセールス面で活躍するバンドが登場することとなる。

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一方オタクの邦楽史では86年にロッキンオンジャパン、97年のsnoozerなどの音楽雑誌の刊行により、インディーシーンとリスナーの距離感がより縮まったのだ。渋谷系などのストリートカルチャーの影響で、海外のインディーシーンの状況も入りやすくなったのもこの頃の特徴だ。

その中でオタクの邦楽史において無視することは出来ない新たな潮流が生まれることとなる。邦ロックという概念が登場するのだ

ここで邦ロックを定義する上で重要なのが、邦ロックはそれまでの海外で扱われるような既存のロックとは似て非なるものであり、完全なメイドインジャパンであるということだ。

この邦ロック成立で重要な役割を成し遂げたバンドが3つある。1組目がHi-STANDARDだ。あくまでもライブハウス主体でメディア露出は皆無という姿勢は、現在でも多くの邦ロック系バンドに大きな影響を与えた。それに加えてゴリゴリの和製英語を駆使することで洋楽っぽさと邦楽っぽさの両方を体感出来る曲作りという点も画期的である。

99年に初開催されたライジングサンロックフェス。個人的に邦ロックなるものがその歴史をスタートさせたのは、このイベントからだと思っている。それもそのはず、はっぴいえんどの後継者として日本語ロックの重要性を再認識させたサニーデイサービスをヘッドライナーに据え、ブランキージェットシティミッシェルガンエレファントスーパーカー椎名林檎電気グルーヴといった錚々たるメンツが出演した。

2組目はその第一回ライジングサン出演バンドであり、メジャーデビューからわずか3ヶ月ながらも、堂々たるパフォーマンスを見せたナンバーガールだ。

金属感強めの鋭角なギターサウンド、向井秀徳が紡ぐ独特の言語感覚、そして青春をテーマとした焦燥感あふれる楽曲は多くのフォロワーを生み出し、00年代以降ナンバーガールの影響を受けていないバンドはいないとまで言わしめるほどの影響力を持つこととなった。

00年代に入るとインターネットの普及により、ニコニコ動画や2chの流行による日本のオタクカルチャーが本格的に開花することとなる。このオタクカルチャーの旗手として祭り上げられることとなったのが3組目のBUMP OF CHICKENである。

長い前髪、ストーリー仕立てのリアリティある歌詞。前述の2組の通りライブハウス主体でメディア露出皆無という特徴もあるが、バンプが2組と異なるのは彼らはセールス面でも成功を収めたことだ。これによりメジャーシーンでもバンプからの影響を受けるアーティストが登場するのだが、いかんせん影響を受けたせいでバンプ同様表舞台に出ないというある種の弊害が生まれた。これにより2000年代以降メディアからバンドが次第に消えていく現象へと繋がっていく

このようにして形成されていった邦ロックは、独自の形で進化を遂げていき、結果として10年代のフェスブームで完全にパフォーマンス特化で楽曲の質が伴わない、いわゆる量産型バンドを生み出すこととなる。

こういうやつのことね。

しかしこれらのバンドを邦楽史のタイムラインに載せるかというところで論争が起こる。これらのフェス特化タイプを邦ロック系バンドは先述の通り既存のロックとは似て非なる存在である彼らを認めるのか?そもそもこのような邦ロック系バンドが現行の音楽シーンにそこまで影響を与えたのか?代わりにもっとアングラ色の強いバンド(個人的な例えとしてはtoeとかNOVEMVERSみたいなフェスと無縁な人たち...)を歴史のタイムラインに載せるのか?

もはや収集つかなすぎて紛争レベル

文面から分かる通りもうこれを書いてる時点で作者の俺はだいぶ疲れてる。あまりにも日本のロックシーンが複雑になりつつあり、様々な要素がクロスオーバーしつつあるからだ。

実は現行の邦ロックシーンを本来のロックと似て非なるものとしてる理由は他にもある。それはいくつかの邦ロック系バンドの中にはアニソンからの影響を受けてるものがあるからだ。

もはや日本の伝統芸能と化したアニメだが、古くからアニメの主題歌をバンドがタイアップすることを宣伝として利用するレコード会社の思惑があった。ほとんどの日本人は幼少期にアニメに触れるため、アニソンからの影響を受けるのは必然的な環境となっているのが現状だ。

日本の音楽産業は海外市場への展開は壊滅レベルだが、それでもアメリカに次ぐ世界2位の市場規模を持つ。これは国内だけで成立するほど、独自の音楽文化が成熟していることが大きい。

その中でも現行の邦楽史で避けて通れないのがボーカロイドアイドルなわけだ。秋元康プロデュースのAKB48ジャニーズなどのグループは、特典商法でチャートの存在意義を破壊し、メディア利権の独占による情報の印象操作を図ったことで、テレビだけで得られる音楽情報はかなり表面的なものとなった。これによりヒット曲基軸の邦楽史は破綻を迎えることとなってしまう

海外ではEDMやヒップホップのトラックメイキングの手段として現れたDTM。しかし日本ではバンプ系統の邦ロックを踏襲したオタクカルチャーの延長線上として、初音ミクなどのボーカロイドがDTMソフトで流布されることとなった。ボーカロイド出身の米津玄師が現在の邦楽シーンの頂点に位置するのも、より邦楽がオタクカルチャーとの迎合を進めた結果だろう。

もうわかっただろう。収集がつかないのである。このように邦楽史はいくつもの世界線が両立するあまり、一つのタイムラインでまとめるのが困難なのだ。しかもインターネットの登場で、もはや何がメジャーで、何がアングラなのかもわからないのが現状だ。

こんなぶん投げた感じの終わり方になって申し訳ないのだが、俺の頭では現行の邦楽シーンは整理出来ないとこまで来ている。頼む誰か上手い具合にまとめてくれぇ泣。アホのオイラがこんな無謀なことすんのが馬鹿だったんだぁ。大人しくロードオブザリング見てお盆は家から出ない〜。もう帰るぅ〜泣。

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といった感じで今泣きながらこのnoteを書いてるので誰かが本でも出して、この複雑怪奇なタイムラインをまとめてくれるのを期待します。あ?自分でまとめろって?まぁ〜気が向いたらします。というわけでここら辺で今日は終わりにします。

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