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エーエスエムエル・ジャパン 藤原社長インタビュー|半導体業界を支えるASMLのイノベーションとその鍵とは

こんにちは、エーエスエムエル・ジャパンです。

現在、私たちASMLの半導体製造装置は世界トップシェアを誇り、世の中に溢れる電子機器には欠かせない「半導体チップ」の製造を支える存在となりました。今でこそ、ASMLは4万人以上の会社へと成長しましたが、その始まりは31名のスタッフで、オランダの総合電子機器メーカー「フィリップス」の研究室であったことを知っている方は少ないのではないでしょうか。

今回の記事では、エーエスエムエル・ジャパン 代表取締役 藤原社長へのインタビューを通して、ASMLが半導体露光装置メーカーとして世界No.1のシェアを獲得するまでの歩みやイノベーションの秘訣、これからの採用に向けた想いをご紹介します。

※この記事は2023年10月時点の情報をもとに作成しています。

エーエスエムエル・ジャパン株式会社
代表取締役社長 藤原 祥二郎

1981年、名古屋大学を卒業後、日製産業株式会社(現株式会社日立ハイテク)に入社。営業、マーケティングなどの職種を日本および欧州で経験。日立ハイテク内で、半導体製造装置部門の部長、本部長の職務を歴任したのち、日立ハイテク台湾の董事長兼総経理(Chairman & CEO)に就任。
2018年4月よりエーエスエムエル・ジャパン 代表取締役社長に就任。

半導体の微細化を突き詰めてきたASMLの歴史

ー まずは、ASMLについて教えてください。

ASMLはオランダに本社がある半導体製造装置メーカーです。世界中で半導体を製造している企業の約8割のお客様に弊社の製品が導入されています。1984年にオランダの電子機器メーカー、フィリップスで半導体製造装置の開発に携わっていたメンバーが独立してASMLを立ち上げました。設立当時の社員数は31名。40年経った現在は4万人以上の規模に拡大して、そのうちの約半数がオランダ本社に在籍しています。残り半数は世界16ヶ国にある拠点で働いています。

ー 半導体製造装置(露光装置)とはどのようなものでしょうか。

ASMLが製造しているのは、半導体製造装置の中でも「露光装置」と呼ばれるものです。半導体を作る時に必要不可欠な技術の1つで、人類史上、最も精密な装置といわれています。世界中でこの装置を製造できる企業は、わずか数社しか存在しません。

露光装置の仕組みを簡単に説明すると、電子回路図が描かれた基盤(マスク)に対してレーザー光を照射します。その光は巨大なレンズを通すことで縮小され、半導体の基盤(ウェハ)上にナノ単位の精度で ”露光” することで、電子回路図(パターン)をウェハ上に描写します。例えるなら、ナノ単位で印刷できる超高性能なコピー機です。

ー ASMLの技術は半導体業界に大きな革新をもたらしたそうですが、具体的にはどのようなイノベーションが関わっているのでしょうか?

私たちが継続的なイノベーションを実現してきた中で、主要技術は3つあります。それはツインスキャン(Twinscan)、イマージョンレンズ(Immersion lens)、EUVです。

1つ目のイノベーションとなったのはツインスキャンです。半導体製造装置の中でも露光装置は非常に高価で、できる限り効率的に生産することが求められます。ツインスキャンでは、内部に2つのウェハステージを搭載することによって、精度と生産性を同時にどちらも高めることができるため、多くの半導体メーカーのお客様から高評価をいただき、2000年のリリースを皮切りに大手企業との取引が増加し、マーケットシェアは一気に50%を超えることができました。

もう少し詳しく説明すると、従来のウェハステージが1つだけ搭載されている装置では、最初に露光の精度に必要な計測を行い、その後露光を行うと言うように順番に行う必要がありますが、2つのウェハステージを搭載することにより、露光と計測を同時に並行して行うことができます。これにより、一世代前のパスモデルに比べると、ツインスキャンは生産性を2倍以上に高めることができるようになりました。

2000年以降に開発されたのが、2つ目のイノベーションであるイマージョンレンズです。これはレンズとウェハの間に純水を満たす技術で、解像度の向上を実現しました。半導体の微細化を進める上で欠かせない技術となり、イマージョンレンズを用いたシステムは液浸露光装置と呼ばれています。ASMLでは2003年12月に業界初となる液浸露光装置を発表。マーケットシェアを更に拡大する要因となりました。

そして、更なる解像度の向上を求め、3つ目のイノベーションであるEUVにつながっています。

ー 近年では、さらに半導体の微細化が進んでいるそうですね。

半導体が微細化する理由は、大きく2つあります。ひとつは性能向上、例えばパソコンやスマホがより多くのデータをより早く計算したり、同じサイズでより多くの情報を蓄えたりすることができるようになります。もうひとつの理由はコスト低減、例えばフラッシュメモリーはこの15年間で1GBあたりの価格が大幅に下がり、2020年時点では2005年の約1000分の1の価格まで下がりました。この2つの成果により、半導体はより広い分野で使われるようになり、結果として半導体市場そのものの成長性を押し上げてきています。つまり、微細化は、半導体の市場性を高める大きな原動力となっており、その微細化を進化させているのが、弊社の露光装置ということになります。

ー その微細化を推し進めるために、ASMLでは髪の毛の1万分の1の細さで回路パターンを転写できる露光技術(EUV)が開発されたのですね。

3つ目のイノベーションであるEUVは現在のASMLの主力最先端製品です。これが非常に難しい技術で、開発するまでに20年以上かかりました。EUV光は、液化したスズの粒にCO2レーザーを1秒間に最大5万回照射することで生成されます。そうやって生成されたEUV光は、複数の多層ミラーを介して、基盤に描かれたパターンをウェハ上で4分の1まで縮小して露光することができます。

今後さらなる半導体の微細化を推し進めるために、”High-NA EUV”と呼ばれる新たな技術開発も進めています。また複雑な微細化に対応するため、露光装置だけではなく、Holistic Lithographyとして、計測・測定機やシミュレーションなどのコンピューテーション・システムも提供し、総合的にリソグラフィー技術を進化させ、微細化を支えようとしています。このようにASMLは半導体の微細化を突き進める、露光装置の専業メーカーであることを強みとしてきました。

イノベーションを実現するための3つの鍵

ー EUVなどの新しい技術を開発する鍵である「オープンイノベーション」「投資戦略」「人材」についてお聞きしたいと思います。
まずは、1つ目のオープンイノベーションについて教えていただけますか?

創業当時、組織の規模が小さかったので、私たちは装置のコンセプトや設計を手がけ、多くの製造工程は外部のパートナー企業に依頼する形でスタートしました。自社で全て完結させるのではなく、お客様を含めたパートナー企業と連携して技術開発することを ”オープンイノベーション” と呼んでいます。長らく半導体業界では「EUVを開発できたら、さらに半導体の微細化が進む」と言われつつも、難易度が高すぎるため実現は到底不可能とされていました。その壁を壊したのが、ASMLのオープンイノベーションでした。

ー パートナー企業としてお客様がASMLの技術開発に参加するとはどういうことでしょうか?

端的に言えば、お客様から弊社の技術開発に対して出資を受けることです。そして、開発段階からお客様の意見を集めて反映することです。そのメリットは、お客様から「この新しい技術が実現されたら、生産に採用し活用する」という意思表明、コミットをいただけることです。新しい技術を実現できれば、お客様とWin-winな関係を築けるのだと確信できたら、弊社としても自信を持ってリソースをつぎ込み、開発投資を継続することができます。現在進めているHigh-NA EUVの開発についても、半導体メーカーの大手企業3社がパートナーとして参加しています。

ー 2つ目の鍵として挙げられた、投資戦略にもつながりますね。具体的にどんな戦略を立てていますか?

ASMLでは毎年売上高の15%前後を投資して、技術開発を進めています。2022年には競合他社の数倍となる33億ユーロ(日本円で約5,000億円)の研究開発資金を投入しました。大規模な研究開発資金を確保することは、半導体産業の継続的な進歩と革新において、重要な原動力になると考えています。研究開発への投資を継続して行った結果として、当社は最先端技術を用いた半導体製造装置分野で急成長することができました。

ー最後に3つ目の鍵である人材について教えてください。

現在4万人以上の人材が働いているとお伝えしましたが、そのうち約1万5000人ほどのスタッフが開発業務に携わっています。これは全社員の3分の1にあたり、非常に大きな比率となっております。研究開発メンバーのうち3000人はPh.D(博士号)資格を保有しており、ハイレベルな人材が集まっています。

さらに、製品の納入先であるお客様の工場を支える技術スタッフは、約1万7000人になります。これほどに技術者に重きをおいて、雇用している会社はそう多くはないでしょう。私たちがイノベーションを実現するために、人材の力は欠かせません。

エーエスエムエル・ジャパンでの採用について

ー 今回、採用を行うエーエスエムエル・ジャパンについて教えていただけますか?

私が代表を務めるエーエスエムエル・ジャパンは、2001年に設立され、日本市場で20年以上の実績があります。現在、日本全国に8拠点の事務所を展開しており、300名以上のエンジニアが在籍しています。その半分以上がお客様のサポートにあたるカスタマーサポートです。年間を通してエンジニア採用を行なっており、新卒・キャリアを問わず新しい人材を受け入れています。


こちらは、2023年 6月24日(土)・25日(日)に開催された東京サマーキャリアフォーラム 2023に出展した時の様子です。日本各地のジョブフェアに参加しています。

ー 半導体業界で働く魅力とはどのようなところにあると思いますか?

半導体は非常に様々な特殊技術によって作られているため、この業界で働くには幅広い知識や専門性の高いスキルが求められます。その一方で、バラエティ豊富で成長性のある業界なので、仕事に対して意欲的に取り組みたい方には、とても刺激・魅力のある環境だと思います。

最近では、半導体は人々の日々の生活に必要なほとんどの製品に使われており、いわゆる戦略物資の代表格として、日本政府も国家戦略として注目しています。ゆえに、日本においても半導体業界は大きな盛り上がりを見せており、外資大手半導体企業も含め各社が日本各地に新たな拠点を構えるなど、今後も活発な動きが予想されています。進歩し続ける半導体産業に携わることは「成長できる環境に身を置きたい」と考えている方にとって、大きく飛躍できるチャンスにつながると思います。

ー入社された方はどのような教育を通じて、半導体に関する知識やスキルを身につけるのでしょうか?

海外および国内で約6〜7ヶ月間のオンボーディング研修を実施しています。半導体業界未経験の方であっても、エンジニアとして活躍できるようになる研修プログラムです。もちろん経験者も歓迎していますが、未経験の方でも安心して飛び込んでいただけると思います。

-未経験からでも一人前に成長できる環境が整っているのですね。
では、エーエスエムエル・ジャパンで築くことができるキャリアについても教えてください。

先に述べました通り、露光装置は人類史上最も精密な装置と言われているように様々な技術が凝縮されているので、一つの技術を深く掘り下げることも、色んな技術を幅広く身につけることも可能です。

例えば、化学に強い人はアプリケーションエンジニア、機械が好きな人はハードウェアエンジニアなど、色んな分野のキャリアを築くことができます。中には、ハードウェアエンジニアとして勤務しながら露光装置の知識を身につけた後、アプリケーションエンジニアに転向する人もいます。

理系出身・理系マインドがあれば、どの分野でも通用すると思います。キャリアとしても非常に成長性がありますし、多様な選択肢の中から自分にあった道を選ぶことを推奨しています。

-「グローバルな環境で働きたい」と考えている方にとっては、どのようなチャンスが広がっていますか?

エーエスエムエル・ジャパンに入社した後、将来的に世界各国の拠点で働くチャンスもあります。だからといって必ずしも海外に行かなければならないというわけではありません。日本の拠点だけでも20ヶ国の社員が働いているので、日本にいながら世界の文化に触れられると思います。また世界中の拠点と協力して仕事を進めたり、海外の技術を習得したりすることができます。逆に、挑戦することに対して苦手意識がある人にとっては少し厳しい環境かもしれません。

ー 最後に、求職者の方へのメッセージをお願いします。

ASMLはグローバルな環境かつダイバーシティを推進しているので、様々な個性を持つ人が活躍できる環境です。私たちも色んな個性を求めているので、幅広い技術や分野で学び、経験を積んできた皆さんのチャレンジ精神に期待しています。


最後までご覧いただき、ありがとうございました。今回の記事で取り上げた内容はエーエスエムエル・ジャパンが持つ魅力のほんの一部です。ASMLで働くことに興味を持っていただいた方はぜひHPもご覧ください。

■ エーエスエムエル・ジャパン採用情報

■ ASML日本法人サイト(エーエスエムエル・ジャパン)

■ ASMLグローバルサイト

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