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【絵本レビュー】 『ぐるんぱのようちえん』

作者:西内ミナミ
絵:堀内誠一
出版社:福音館書店
発行日:1966年12月

『ぐるんぱのようちえん』のあらすじ:


ぐるんぱは、ひとりぼっちの大きなぞうです。ビスケットやさん、靴屋さん、ピアノ工場、自動車工場……。ぐるんぱは、色々な仕事場で一生懸命に働きますが、つくるものが大きすぎて失敗ばかり。そんなときぐるんぱは、子どもがたくさんいるお母さんに出会います。子どもたちの世話をたのまれたぐるんぱは、とても素敵なものを作ります。それはぐるんぱが作った大きなものでたくさんの子どもたちが遊べる、すてきな幼稚園でした。

『ぐるんぱのようちえん』を読んだ感想:

いつも素通りしていた絵本でしたが、ついにママ友達から貸していただきました。気にはなっていたし、読みたいリストにも入っていたのでよかったです。

「おおきくなったのにいつもぶらぶらしている」
「それに、ときどきめそめそなくよ」

こんな理由で働きに出されるぐるんぱですが、どこへ行っても失敗ばかりですぐに追い出されてしまいます。でもぐるんぱが作ったものを見ていた私は思ったんです。
「何をしてもうまいじゃん」

何をさせても上手にできるのに、サイズが大きいというだけで追い出されてしまうのは、教える側にも意欲と忍耐力がないのではないでしょうか。若手を育てるという観念は何処へ、と思ってしまったのです。大きすぎて高すぎるという理由でさっさと「もうけっこう」と追い出す前に、商品のコンセプトや市場価格をきちんと説明できなかったオーナーたちのコミュニケーション能力を疑う必要はないのでしょうか。

ぐるんぱがこんな場所で働かなくてよかったなと思ってしまったのは、私自身と重ねて見てしまったからでしょうか。私の企業初体験は、伯父の働く会社の展示会のウェイトレスでした。二日間だけというので、大学生だった私はお小遣い稼ぎに行ったのですが、目が悪すぎてお客さんが手を挙げていても気づかず、何人もの注文を受けると忘れるしで全然役立ちません。

大学3年から始めた就職活動もことごとく失敗しました。紺のリクルートスーツが嫌で栗色の四つボタンのスーツを買った私は、面接会場でも浮いて見えました。

次は海外脱出資金を稼ぐため短期で大手の証券会社に派遣として行ったのですが、みんなが夜の10時、11時まで働く中、私は「夜間クラスで勉強している」と嘘をついて毎日6時半には退社。ジムへ行ったり映画を観に行ったりして過ごしました。土日もサービス出勤する他の社員さんたちは毎月のように新しいアクセサリーやら服を身につけていましたが、私はそれを見ながら「居心地が悪いな」と思ったものです。

結局企業というものに縁のなかった私ですが、住んだ先々でコミュニティを作り素敵な人たちに出会っているということに気づきました。できないことに縛られて落ち込んでいるよりも、できることに目を向けてそれを伸ばして行ったほうがいいのかなという気づきが(遅ればせながら)このロックダウン中にあったのです。誰もが自分の居場所を探しているんですよね。

『ぐるんぱのようちえん』の作者紹介:

西内ミナミ
1938年京都生まれ。東京女子大学卒業。在学中より児童文学創作を志すが、広告会社にコピーライターとして約10年勤務。堀内誠一氏のすすめにより、はじめての絵本「ぐるんぱのようちえん」を書く。「おもいついたらそのときに!」(こぐま社刊)、「しっこっこ」(偕成社刊)、「ゆうちゃんとめんどくサイ」(福音館書店刊)などの作品がある。

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