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高校3年 春③靴の色が違う人

毎年恒例の合宿の時が来た。

今年もすべての高校の演劇部が集まっての合宿。

今回はワインが有名な街にて。

新しくできたばかりのホールで開催。

ステージはめちゃくちゃ設備が良いらしい。

楽しみだ。


今年も僕はダンスを専攻。

他に、同級生で同じクラスのちーちゃんとか何人かもダンスを選択。

それぞれ別なグループに振り分けられたが、ダンサーが増えるのはいいことだ。


去年の先生はヒップホップだったし、今年もかっこいいダンスだといいな。

そう思って待っていると、表れたのは小柄な女性の先生。

見た感じ、ヒップホップの要素は1ミリもない。

話を聞いてみると、及川光博のバックダンサーもやってたらしい!

おおおぉぉぉぉぉぉおおおおぉぉ、、、?

てことは、

てことはよ?

ジャンルってこんな感じ?

マジでキツいって。

いや、俺はたしかに及川光博好きってずっと公言してきたよ?

でも、彼の曲は控えめに言ってもちょっとダサいと思っている。

そして、彼のダンサーってことはもうガッツリその世界に浸かってる方なわけじゃないのさ。

あかん。

年に一度のタイミングにこれはあかんでー!

ちょっとドキドキしながらレッスンがスタートする。


まずはアイソレーション。

身体を部分的に動かしていく。

去年の合宿から、アイソレーションは部活にも取り入れるようにしていたのでバッチリできる。

成長したなぁ。と思っていた。

そして、いよいよ振り付けに入る。

ディズニー?

これが第一印象だった。

テーマパークダンサーがステージで踊るような、ソウル系ダンス。

意外だったけど、これはこれで面白い。

しかも、この先生はフォーメーションがとにかく得意で、様々な動きを取り入れてダンスに立体感を出していく。

前後に

右左に

立ったりしゃがんだり

順番をどんどん入れ替えたり

様々な方法で目まぐるしくステージの構成を変えるダンス。

これはステージで映える!

そして、去年と違って

「ダンスはかっこいいだけじゃなくて、とにかくお客さんを楽しませたもんが勝ちよ!私たちが一番観客を楽しませるパフォーマンスをやること!」

と熱を入れた指導をしてくれた。

慣れない正統派ダンス。

でも、めちゃくちゃ楽しかった。

「みっちーせんぱい」

ふと名前を呼ばれて振り返ると、同じチームに僕の高校の近くにある別な高校のジャージを着てる、めちゃくちゃボーイッシュな女の子?がいた。

話してみると、俺もよく知っている同級生の後輩でウダというらしい。

「電車でいつも見てます。」

と声をかけられて

「俺もついに他校で噂になるほどのモテ期到来か!?」

とまんざらでもなかったが、

「いつも左右違う色の靴履いてるから」

と。

実は、父親から誕生日に靴を買ってもらった際、セールのやつだったら2足でもいい?と相談したら

色違いで買って左右違うの履けばカッコいいじゃん!

と言われたのを間に受けて、当時はそのまま父の言う通り左右違う色のコンバースのオールスターを履いて登校していた。

僕の乗っていた電車には、僕の母校のほか、女子ばかりの医療系高校、工業高校、農業高校に終着駅の高校の生徒たちが主に乗っていたが

ほぼ全部の高校の人から「靴の色が違う人」という名前で噂になっていることを、この時初めて知る。

モテてると一瞬でも勘違いした自分、マジつらい。

穴があったら埋められたい。


この恥ずかしさを忘れるように、この後はめちゃくちゃ必死に練習した。

そういえば去年の先生は今年もいるんだろうか。

あれからめちゃくちゃ成長したってこと、見せてあげたいな。


夜はまた学校ごとに別々なホテルへ。

2年生になにを吹き込まれたのか、1年生は明らかに僕に対してハンパなく緊張&警戒していた。

いーじゃん。恋バナとかしたいじゃん。

俺だって俺が一年の時みたいに後輩とワイワイしてみたい。

それに今日は怒ったりしないよ。

でも、とてもじゃないけど後輩たちの僕を見る目はそんな空気じゃなかったので、

Mやあそうたまきこーじと夜中に外で缶ジュースを飲みながら話をしてさっさと寝た。

自分が演出してる舞台以外で怒ったりすることないのに。

わざとなのに。

厳しくしすぎるのも考えものだ。


ちーん。



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