高校1年 冬①クリスマスの殺人事件
大会も終わり、一息ついてしまったこともあってか
部長やM、僕を除いた他の部員は部活にあまり顔を見せなくなって来ていた。
廊下とかで会うと
「今、入稿前で忙しいから」
どうやらコミケが冬にあるらしく、それに向けた同人誌やグッズ製作でみんなドタバタしてるらしい。
部室にも見たことのない漫画の数がどんどん増えていった。
部活に来ても、ひたすら作業しているヤツもいた。
もともとオタクを否定しているつもりはなかった。
ただ、彼女も部員もみーんなオタクの活動でいろんなことが適当になってるのを見て、
僕はだんだんオタクのカルチャーに対してイライラするようになっていった。
冬には校内でクリスマス公演が開催される。
クリスマス公演、そして4月に上演する新入生歓迎公演、通称新歓のふたつは、下学年が主軸で自由にやっていい。というのが伝統だった。
上級生は必要ならば役者でも裏方でも、お手伝いする、というルール。
ただ、このままじゃ大会の二の舞だ。
ダラけ切ってなあなあの舞台に出て恥をかくのは結局自分たち。
コレはあかんと思ったぼくは、ついにブチ切れた。
そもそもここの部員の多くは文化系カルチャーで生きて来た人たちだ。
突然始まった僕の恐怖政治にひりついた空気は流れた。
だが、しばしした後にこれはまさか受け入れられた。
ただ反発することに慣れていなかったのかもしれない。
でも、その日から部活にスピードと緊張感が生まれた。
来なくなった人はもちろんいた。
ただ、この頃には舞台が好きな人の部活にもなっていた。
クリスマス公演は昭和のブラックジョークがふんだんに盛り込まれたコメディ殺人事件のストーリー。
脚本は遥か昔に誰かが書いたらしいものだったが、コメディ的なものがとにかくなかった僕らはコメディの練習としてコレを選んだ。
昭和の古いギャグはめちゃくちゃつまらなかった。
でも、少しだけ明るい希望が見え始めた気がした。
クリスマス公演は知人しか来なかった。
いつかもっとたくさんの人が観たくなる舞台にしよう。
そう思いながら、ラストの家族団欒のシーンに流れた戦場のメリークリスマスをじっくりと聴いていた。
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