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高校2年 春①ナイトスクープオタクと過ごすモーニングライフ

進級した。

いよいよ高校2年生。

上京した彼女とは毎日連絡するようにしていたが、徐々に返信が届かなくなることが増えた。

新しい生活が充実している証拠だろう。

でも、寂しさは募るばかりだった。

当時流行っていた椎名林檎のギブスに自分を重ねながら、

でも彼女は椎名林檎とは明らかに違うところへ行っているのだと思うとより心は深く青く染まっていった。


学校では文系と理系でのクラス分けも行われて、僕は文系クラスへ。

僕の相棒とも言うべき部長のMとは別のクラスになってしまった。

担任はチャラい男の先生になった。

ちなみに僕の通っていた高校は共学だが、文系は女子比率が高く、理系は男子ばかりだった。

僕のクラスも例に漏れず、女子強めの編成に。

ただ数少ない男子は、大雪の日でも頭に雪を積もらせながらアイスを食べてるバスケ部のエース、フミヲを筆頭に

ちょっと頭おかしい愛すべき馬鹿者の多いクラスだったので

なんだかんだで毎日和気藹々としていた。

毎日同じ電車に乗って、しかも乗り換えて通学して1年も経つと、それぞれの電車ですれ違う人の顔はほぼ100%覚えてしまう。

なのだが、4月から僕とまったく同じ電車に乗って、まったく同じ乗り換えをする中肉中背のおじさんがいることに気付いた。

満員電車で彼はいつも新聞を読んでいて

スーツにリュックの服装がやけに浮いている"とっちゃん坊や"って感じ。

さらに補足するならばうちの部活の顧問角刈りメガネを、ものすごくマイルドにした感じのメガネのおじさん。

そのおじさんが新任の先生として全校集会で紹介された。

自己紹介の時に

"地元はここですが関西に長らくおりまして、親の都合で帰って参りました。好きなものは探偵ナイトスクープです。演劇部の顧問やらしてもらいます。よろしくお願いします。"

東北生まれのくせにコテコテの関西弁!
しかもナイトスクープ好き!
それでいて演劇部かよ!
癖が強いのよ!

ふと、この環境を振り返る。

角刈りメガネと、マイルドメガネは

どちらも社会科担当(角刈りは地理、マイルドは世界史)

どちらも中肉中背とっちゃん坊や。

そしてどちらも演劇部。

演劇部に、癖ツヨの新たな仲間が加わった。

それからは毎朝、エセ関西と通学することになった。

だって電車に必ずいるんだもの。

途中の駅からMも合流して、男子高校生ならではのくだらない話をひたすらしながらの通学は、案外悪いものではなかった。

ちなみにマイルドメガネは、僕よりさらに2つも市町村の離れたところから電車に乗っていた。

これまで4市町村またいで通学してる俺より遠い奴はいないだろうと思っていたが

6市町村またいで通勤してるマイルドメガネにはさすがに脱帽せざるをえなかった。

ちなみにマイルドメガネの授業はとてもわかりやすかったし、面白かった。

彼はボニファテウス8世というローマ教皇を研究の対象としていて、特に13世紀のヨーロッパ史にめっぽう詳しかった。

この教皇は世界でも稀な"憤死"した人としても有名らしいが、

彼がローマ教皇になるために、前の教皇が寝てる間に毎晩耳元で"はよ辞めろ"と囁き続けて鬱にした話とか

もはやテストにほぼ出ないであろうボニファテウス8世の人間性を延々と語り続けるという謎の授業のおかげで

我が高校にはボニファテウス8世(通称ボニはち)のファンが少なからず存在するようになった。



僕は日本史専攻だったので、世界史の授業がほとんどなかったのがとても悔やまれる。

なお、角刈りメガネの授業(地理)は選択外だったのでほんのちょっとしか記憶にないw


そんなこんなで、僕ら演劇部はとても変だけど頼もしい仲間を加えて新年度がスタートした。

あとは下僕1年生をしっかり勧誘できるかにかかっている。

今年こそは全国行くぞー!

と、ひたすら意気込みが高まっていった。

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