一粒で2度美味しい

むかし、アーモンドグリコのCMで「一粒で2度美味しい」って歌ってましたけど、よくよく考えてみたらキャラメルの味とアーモンドの味は一緒に来るんで美味しいのは1度ですよね?

さて。
前回の更新で「勧酒」を元にした文章を書いたんですが、あれを書くまでに結構試行錯誤したんですよって話を書きたいと思います。
映画っぽく言うとメイキングですね。
1つのネタで2つ書く事ができてとても良いです。

まず、最初に頭にあったのは「春眠暁を覚えず」でした。
仕事中に眠かったんです。
で、その「春眠暁を覚えず」って言った人が、教科書に出てきた「黄鶴楼にて孟浩然の広陵へ行くを送る」の孟浩然さんなんですよって話を会社でしてたんですね(眠気覚ましに)。

で、その時にあまりにもみんなから「そんな詩は知らない」と言われたもんだから、じゃあ井伏鱒二が訳した勧酒は知ってる?という話になりました。

コノサカヅキヲ受ケテクレ
ドウゾナミナミツガシテオクレ
ハナニアラシノタトヘモアルゾ
「サヨナラ」ダケガ人生ダ

で、これを説明してる時に、最後の「「サヨナラ」ダケガ人生ダ」の部分を変えたら面白いんじゃないかと思ったんですよ。

最初は真面目に考えたんですよね。
「サヨナラ」の逆で「ハジメマシテ」はどうだろう?とか。
でも、まあ、真面目なものに真面目なものを組み合わせても面白くはならないんで、人生からはかけ離れたものの方が良いんだろうなと考えました。
「飲み会」「おふざけ」「ガンプラ」「ダジャレ」等など。
で、ガンプラみたいな狭いものよりも、多くの人が共感できる方が面白いんじゃないかと考えた結果が「焼き肉」でした。
文字数も合ってるんでテンポも良い。

で。
文章としては「サヨナラ」の部分を「焼き肉」に変えるだけで成立するんですよね。
元が酒を勧める詩なので、文章が成り立つ。(花に嵐の部分は通らないんですが、雰囲気は合う)
最初、そうしようかなぁとも思ったんですが、ちょっと面白さが伝わりづらい気もしたんですね。
シンプルな方が面白いとは思うけど、シンプルすぎて分かりづらい。

と、言うことで前段もできるだけ変えていこうと考えて、似た焼き肉用語を探しました。(あと、理解しやすいように漢字+カタカナから漢字かな交じりの記述にしました)

まず最初は「コノサカヅキヲ受ケテクレ 」の部分。
最初に考えたのは「この焼き肉を食べてくれ」だったんですが、それだと最後の「焼き肉だけが人生だ」のインパクトが薄れる。
オチに使う「焼き肉」を最初に出しちゃダメ。
ネタバレみたいなもん。

じゃあ、ってんで「さ」で始まって語調を崩さない焼き肉用語を探しました。
ようやく見つけたのが「サンカク」と「サーロイン」。
但し、サンカクが焼き肉の部位だとは分かりづらい。
読む人が1行目から「サンカクを食べるって何?」で引っかかってしまうのは避けたいので「サーロイン」で決定。
原文の「を」の部分も抜いて、「サカヅキを」を「サーロイン」にしてみました。

で、次が「なみなみ注ぐ」部分なんですが、そこはもう「次々焼く」であっさり決定。

そして最後が難しい「ハナニアラシノタトヘモアルゾ 」。
すぐに「〇〇と 〇〇と 〇○〇もあるぞ」みたいな形式で行こうとは思ったものの、〇〇の部分が決まらない。
一番最初に思いついたのは「飯にキムチにサンチュもあるぞ」だったんですが、そうすると文中にはサーロイン以外の肉が出てこなくなっちゃう。
サーロインは焼き肉って言うよりもステーキのほうがイメージ強いから、サーロインだけで勝負するのは避けたい。
次に思いついたのは「ハラミ、カルビにライスもあるぞ」。
「花に」を「ハラミ」とする事で出だしの親和性が高くなって、これは結構良かったんだけど、「嵐」と「カルビ」があんまり似てないし、アで始まる3文字の部位が思いつかない。

その次に考えたのは「スープとライスのセットもあるぞ」。
ご飯物入れたいなぁってのと、「セットもあるぞ」の言い回しは気に入ったんですが、やっぱりお肉をもう少し入れたいのでボツに。

と言うことで、肉の部位の名前を検索して最終的に出した答えが「ハツに ハラミに カルビもあるぞ」。
「嵐」に対して「ハラミ」を持ってきて2文字目の「ら」をあわせる。
そうすると1個めの「花に」に「ハラミ」をあわせられないので、「は」で始まる部位として「ハツ」を採用。
で、最後に「たとえ」がどうしても似ている部位が思いつかなかったので、焼き肉の代表格のカルビを採用してみました。

このような紆余曲折を経て出来たのが前回PUした「勧肉」でした。

それにしても、いくら眠いとは言えこんな事を仕事中にずっと考えてアチコチにメモしてるのは社会人としてどうかと思います。


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