『新潮 2023.8月号』感想(読んだ作品のみ)

今回は新潮2023.8月号の感想を書きたいと思います。

①野田秀樹『兎、波を走る』(長編戯曲)
知人が戯曲や野田さんのことをよく知っており、話を聞いてから読んでみた。舞台版の映像を何も知らずに先に見ていた。予想以上に長くて驚いた。文字にするとこんなに長いのか。当たり前のことなのに…戯曲を初めて読むが故の感想かもしれない。登場人物をみると、アリス・兎など親しみやすい人から、元女優ヤネフスマヤ、みたいな奇妙なような、よく見るとわかるような名前の人もいる。アリスのおとぎ話と現実的な物語と…参考文献を見るともうひとつびっくりする要素が入っていることに驚く(戯曲の中でも薄々気づいていたが、参考文献読んでなるほどな、と腑に落ちる感じ)
今度、平田オリザさんの戯曲もみてみようと思っている。戯曲、慣れるまでに時間がかかりそうだ。やはり舞台を見てこそ、なのかもしれない。

②特集『「坂本龍一」を読む』
『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』という坂本龍一さんの作品を読み切ってから、この特集を読んだ。『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』の感想については、別に記事を書いたのでこちらを読んで欲しい。(https://note.com/astro_sazanami7/n/n3c5161c0ec36

わたしが特に印象に残った人は、永井玲衣さんと若林理砂さんだ。坂本龍一さんは生前、原子力発電の問題に取り組んでおられた。そのことについても先述の記事にて書いている。永井さんも同じように数々の社会問題や政策に関して、黙って飲み込まない、意思表示をする、ということをやってきたようだ。なんとなく自分と意見が一致していそうだなと思った。
若林さんは、若くして坂本さんと接点があったようだ。本人は『幸運だった』と綴っている。彼女の坂本さんに対する向き合い方が素敵だなと思った。
ここでまた気になる人達を見つけられて良かったなと思った。

③知らない人 他二編/谷川俊太郎
彼の名前を見たのは、国語の教科書以来だった。
やはりあの頃のように、文字を見ているはずなのに情景が、絵として浮かび上がってくる。そうだよな〜とひとつひとつの言葉にうなづく。

④フォロワー数ZERO/本谷由希子
ここに出てくる登場人物を好きになれない。何を言っているんだかあまり分からない。それが『フォロワー』の数やインスタ映えに興味のない人間である私が見ているんだから、なおさらである。オーガニック好きな職場の先輩がいたことがあるが、その人は優しい人だった。だが、ここに出てくるそれ、は怖いというか、プライドが高すぎる。あれで勝ち誇れるってのもなんかすごい。どういう思考回路なんだ。自分なりの生活スタイル、心地よさがあることは理解できるのだが…
ただ、自分にとって『理解できない』人が現れることは人生にとって無視できないことである。好奇心や必要に応じて外に出て行く人なら、かなり高確率で。家だけで人生を完結させられる人はごくわずかだろう。主人公も、それができないと言っていた。『理解できない』人にどのようにアプローチしていくか(関わらないようにする、この人はこうなのかもしれないと推測するなど)で思考や行動は変わっていくのだろう。それもまた人生という気がする。ただ、差別に対しては、レーダー感知度を高くして、その問題に関して積極的に関わっていきたいと思っている。

⑤はじめての心中/ 鴻池瑠衣
これは女子高生がライブ配信しながら飛び降り自殺した事件が元となったのかなあ。死にたい、と思っている人は世の中いっぱいいて、その理由は色々ある。彼の場合は家族・親族、そして話が持ちかけられた、ということが要因だったのだと思う。暴力はやはり怖い。無敵になることは怖い。ただ彼に生きる理由ができたことは確か。自分はこのまま、穏やかに、生きる理由を維持したい。どうにか、1日1日を生き延びられれば、それで良いかなと思っている。

⑥もつれとゆれ/西崎憲
短編のように、逐一タイトルがつけられていて読みやすかった。妻は発達障害かもしれない。最近、その人の説明をする文章を見つけるとすぐそう思うようになった。というか、そうなるのも必然じゃなかろうか?同じようなあるあるとか、共通点を持っている人を見つけたらそうなるんじゃないだろうか?まあ、わたしは半分当事者であり、発達障害じゃなくてグレーゾーンと呼ばれる部類であるらしいのだが。
主人公は寂しさを感じるらしかった。人生における人間関係は、変わるものもある。過去の人がいつの間にか周りから消える。わたしの周りも、消えている人もいれば、かなり前から関係が続いている人もいる。そんなものだろう。寂しさという感情もまた大事にしたいし、そんなとき誰に連絡するか、誰と会うか、一人でできることをするか、それはその時の自分に任せておきたい。

⑦にちょうめ奇譚/伏見憲明
これ、好きすぎる。わたしは人間の多様さに興味がある。日本には、世界にはいろんな人がいる。そんな人たちの話を聴くのは楽しい。思えば、少なくとも高校生の段階で『人の話を聴くのが好き』だと感じていた。NHKのドキュメンタリーのように、人が集まる場でインタビューをすると、いろんな話が聴ける。バーもそうだ。だからわたしは2つほど行くバーがある。新宿2丁目もそのうちの一つだと思う。
LGBTというものの中にも、グラデーションはある。つまり、いろんな違いがある。例えば、国の政策に異を唱えて戦う当事者もいれば、『頼むからほっといてほしい』とSNSで呟く若者もいる。
発達障害でも、診断が下りる人もいれば、悩んで医者にかかっても『特性はあるが障害ではない』と言われるわたしのような人もいる。
当たり前のことなのだけど、主語は大きくなりがちではないだろうか?『人間は』『外国人は』『LGBTは』『障害者は』など…気をつけていないと起こることだと思うので、この点留意したいと改めて思った。(特にSNSに投稿する時など)

さて、以上です。
やっと書けたー!てかもう9月の文芸誌も出てるっつーの。確か新潮だけ買いました。エッセイ特集もう読んだんだけどな…
それから、今月はスピンも買いました(初の定期購読)
スピン、安くね…!?栞も楽しみ。

次はスピンの感想(これも読んだもののみですが)かな?また書けるときに書きます。それでは〜

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