astronote

某大学で宇宙を研究しているastronoteです.今日もどこかで夜空を見てるかも. h…

astronote

某大学で宇宙を研究しているastronoteです.今日もどこかで夜空を見てるかも. https://noteastron.hatenablog.com/

マガジン

  • 子育て・生活雑談

    子育てや日常生活に関する雑談noteです.

  • 宇宙解説

    宇宙に関するトピックを簡単に解説した記事をまとめています.

  • 研究雑談

    研究に関する雑談noteです.

  • 物理解説

    物理に関するトピックを簡単に解説した記事をまとめています.

  • 最近読んだ本

最近の記事

2023年に買ってよかったもの

よく言われることですけど,歳を重ねるにつれて1年が経つのが本当に早くなっている気がします.2023年も気付けばもう師走の後半.そんなわけでこのあたりで2023年の買い物を振り返って,実際に使ってみて良かったものをメモしておきます.といっても,今年はあまり買い物してなかったみたいで,ほんの三点だけ. RUYI パネルヒーターhttps://amzn.to/3v9MzpG 現在私は週の半分ほどを在宅勤務しているのですが,自宅での私の仕事スペースは北向きの部屋にあるため,冬場と

    • 新たに打ち上げられた小型月着陸実証機SLIMの意義と人類による月探査の展望

      2023年9月,鹿児島県の種子島宇宙センターから新しい月面探査機が打ち上げられました.日本の宇宙航空研究開発機構JAXAによって開発されたこの探査機はSLIMと呼ばれます.SLIMは,打ち上げロケットから無事に分離され,これから3ヶ月ほどかけて月に向かい,その後月面への軟着陸を試みる予定です.もし成功すれば,日本にとって初めての月面への軟着陸達成となります. 近年,月面探査に対する関心が世界各国で高まっています.特に積極的な取り組みを展開しているのが中国です.中国は2013

      • ヨビノリたくみ氏の応用物理の記事

        応用物理学会の機関紙に掲載されたヨビノリたくみ氏のインタビューでの発言が軽くバズっていたので,遅くなりましたが私も元記事を読んでみました(無料PDF版あり). https://www.jstage.jst.go.jp/article/oubutsu/92/6/92_365/_article/-char/ja/ 記事の後半で「基本的な学部の授業は教育のプロに任せて,大学の先生は研究や専門的な授業だけするのが理想」といった話をしていて,このあたりがひとり歩きした面もあって議論が

        • 読んで良かった絵本【年長】

          年長になった息子がけっこう自分でも文字を読んでくれるようになってきて,今年度は地域の図書館で絵本を借りて読む習慣ができました.せっかくなので,実際に借りて読んでみて特に良かったなと思った絵本について,こちらにログを残しておきます. いのちはめぐる(いきもの みーつけた)https://amzn.to/3Vgo0OR 食物連鎖について知ることのできる一冊です.たくさんの葉っぱをアゲハチョウの幼虫が食べ,アゲハチョウをカマキリがねらい,カマキリをヒキガエルがねらい,ヒキガエル

        2023年に買ってよかったもの

        マガジン

        • 子育て・生活雑談
          13本
        • 宇宙解説
          20本
        • 研究雑談
          14本
        • 物理解説
          5本
        • 最近読んだ本
          4本
        • 天文学研究
          2本

        記事

          恒星の進化と最期の姿

          夜空で輝きを放っている天体の多くは,中心部での核融合反応によって自ら輝いている恒星です.特に,中心部において水素をヘリウムへと変える核融合反応を起こして輝いている恒星を主系列星と呼びます. 恒星の一生は人の一生と比べるときわめて長いため,主系列星として安定した姿を見せる恒星はいつまでも輝き続けるように思われます.しかし実際は,核融合反応の燃料には限りがあるため恒星にも寿命があり,やがて主系列段階を離れて進化していきます.詳しい研究から,その進化の過程は恒星の質量に依存してい

          恒星の進化と最期の姿

          量子力学の解釈問題

          量子力学は,原子に相当するようなきわめて小さいスケールにおいて,物質を構成する粒子や光などの振る舞いを記述する理論です. ミクロなスケールでは,物質は私たちの日常生活にもとづく常識とは大きく異なる性質を示すことが知られています.そのひとつが,波と粒子の二重性です.ミクロな物質や光は,波の性質と粒子の性質を併せ持つというものです.また,ミクロな物質や光は,同時に複数の場所に存在することができ,状態の重ね合わせとして表されます. そんな不思議な性質を示すミクロな世界を記述する

          量子力学の解釈問題

          『対岸の家事』:現代の子育て世代の奮闘

          『対岸の家事』を読みました.ドラマ化された『わたし、定時で帰ります。』の作者である朱野帰子氏による2018年の小説です.現代の子育てや仕事との両立などに関するリアルな様子が描かれています. https://amzn.to/3ICmWAG 主な登場人物は,都心近くに住んでいて未就学の子がいるアラサー世代の専業主婦やワーキングママ,育休パパです.彼ら/彼女らのエピソードをもとに現代の少子化の背景にあるさまざまな困難について記した秀逸な作品だと思いました. 登場人物やあらすじ等

          『対岸の家事』:現代の子育て世代の奮闘

          メルカリの経営する鹿島アントラーズの人材獲得

          YouTubeのPIVOT公式チャンネルで,メルカリによる鹿島アントラーズ経営について,メルカリ会長で鹿島アントラーズFC社長の小泉文明氏がインタビューされている番組が公開されていたので見てみました. https://www.youtube.com/watch?v=Emf3rMNJ7AI 興味深かったのが,「15:12 クラブ経営における規制」で扱われていた人材獲得に関する話(18:10あたりから). これまでサッカー業界の採用は,縁故採用が多くてあまり一般に開かれたもの

          メルカリの経営する鹿島アントラーズの人材獲得

          フェルマーの最終定理

          フェルマーの最終定理は,17世紀フランスの裁判官ピエール・ド・フェルマーによって残され,その後300年以上に渡って未解決だった数論の有名な問題です.数学の未解決問題は専門的な内容すぎるため分野外の人間に理解することは難しいものもありますが,フェルマーの最終定理は小学生でも理解することができ,一見すると簡単な整数論の証明が問われているように思われます. フェルマーは裁判所の仕事に従事するかたわら,趣味として数学の世界に没頭していました.彼に影響を与えたのが,古代ギリシャの数学

          フェルマーの最終定理

          光の速さはどのように測られてきたか

          稲妻によって周囲が照らされてからゴロゴロという雷の音が聞こえるまで,少し時間差が生じることを私たちは知っています.このことから,少なくとも音の伝わる速さは光より遅く,音の速さは有限であることがわかります.しかし,光についてはきわめて速いため,日常生活において光の速さが有限であることを実感することはまずありません. さまざまな実験により,光の速さは秒速約30万キロメートルであることが知られています.地球の一周は約40000キロメートルですから,光の速さで地球を回ればわずか1秒

          光の速さはどのように測られてきたか

          オウムアムア:太陽系に飛来した恒星間天体の発見と今後の展望

          私たちのいる太陽系は,天の川銀河という渦巻き銀河に属していて,天の川銀河の中心に対して回転運動を行なっています.その速さは秒速約200キロメートルに及びますが,太陽系は天の川銀河の中心からおよそ2.6万光年ほど離れた位置にあるため,天の川銀河を一周するのに2億年ほどかかると考えられています. 銀河において,恒星と恒星の間の空間は星間空間と呼ばれます.星間空間には主に水素とヘリウムからなる希薄なガスが存在していますが,中には何らかの理由でもともといた恒星系から飛び出した小惑星

          オウムアムア:太陽系に飛来した恒星間天体の発見と今後の展望

          銀河団重力レンズ効果により129億光年彼方に見つかった恒星エアレンデル

          ハッブル宇宙望遠鏡によって,129億光年かなたにある恒星が発見されました.ビッグバンからわずか9億年後の宇宙に見つかったこの恒星は「エアレンデル」と名付けられました.「明けの明星」を意味する名前です.今回はこのエアレンデルについて元論文などをもとに詳しく紹介していきます. 光の速さは一定ですから,遠くの天体を観測することで過去の宇宙を調べることができます.ただ,遠くにある天体ほど見かけの明るさは暗くなるため,何億光年も離れた天体は基本的に,たくさんの恒星からなる天体である銀

          銀河団重力レンズ効果により129億光年彼方に見つかった恒星エアレンデル

          私たちの宇宙が迎える未来の予測:ビッグフリーズ・ビッグリップ・ビッグクランチとサイクリック宇宙論

          天体現象の多くは私たちの寿命と比べてきわめて長い時間スケールで起こるため,変わらない姿を見せ続けてくれる天体たちは悠久の時を刻み続けるかのように思われます.しかし実際は,あらゆる天体にはその終わりがあり,宇宙はやがて無に帰すのではないかと考えられています.今回はこれまでの研究によって明らかにされている宇宙に関する知見をもとに,宇宙の未来について予測されていることを紹介していきます. 天の川銀河とアンドロメダ銀河が衝突私たちのいる太陽系は天の川銀河と呼ばれる渦巻銀河に属してい

          私たちの宇宙が迎える未来の予測:ビッグフリーズ・ビッグリップ・ビッグクランチとサイクリック宇宙論

          宇宙の距離はしご:何億光年も離れた天体までの距離はどのように測られているのか

          夜空を彩る無数の天体たちはさまざまな距離に位置していることが知られています.たとえば地球の衛星である月までの距離は約38万キロメートルで,地球が公転している太陽までの距離は約1億5000万キロメートルです. 太陽系の外に目を向けると,最も近い恒星であるアルファ・ケンタウリまでは約4.4光年,隣の銀河であるアンドロメダ銀河までは約250万光年もの距離があります.さらに人類は大型望遠鏡を駆使することで,最近では130億光年以上という途方もなく離れた天体も数多く発見してきています

          宇宙の距離はしご:何億光年も離れた天体までの距離はどのように測られているのか

          物理学概論:特殊相対性理論

          日常生活で見られる物体の運動をよく説明できるニュートン力学では,運動というものは何か基準の物体を決めて,それに対する運動として捉えるという考え方がなされていました.より正確に表すと,ガリレイ変換と呼ばれる座標変換によって関連付けられるあらゆる慣性系において物理法則は変わらないという考え方で,ガリレイの相対性原理と呼ばれます. 慣性系というのは,静止していたり,向きを変えずに一定の速度で動いていたりする座標系のことです.たとえば,私たちは速度が一定の電車に立っていても,電車の

          物理学概論:特殊相対性理論

          ニュートリノ:素粒子の標準理論に修正を迫るニュートリノ振動と宇宙背景ニュートリノ

          ニュートリノは,私たちの身の回りに数多く存在している素粒子のひとつです.たとえば,私たちの人体からもニュートリノは放射されています.私たちが口にしている食品にも微量ながら放射性物質が含まれていて,それらが放射性崩壊を起こす際にニュートリノが発生するためです.その数は放射性物質の摂取量によって異なりますが,1秒間におよそ3000個ものニュートリノが発生していると考えられています. 地球の内部からもニュートリノは放射されています.地球の内部にはウランやトリウムといった放射性物質

          ニュートリノ:素粒子の標準理論に修正を迫るニュートリノ振動と宇宙背景ニュートリノ