見出し画像

「働く駐妻」になったわたし

「駐妻」と聞いてどんなイメージを持つだろうか?
カフェ大好き、メイド付きの家、アフタヌーンティーなど、なんとなく優雅なイメージを持つ人が多いんじゃないかと思う。

最初に言っておくと、この文章の著者も「駐妻」だ。
(駐妻とは駐在員妻の略称)
前述した過ごし方のイメージは一応、合っている。
カフェでコーヒーを飲むひと時を愛しているし、サービスアパート(=家具家電メイド付きマンション。シーツ交換や掃除洗濯が家賃に含まれている)に住んでいるから料理以外はする必要がないし、アフタヌーンティーも友人に誘われてたまに行く。

ただひとつ否定したいのは、「このイメージの中だけで生きているわけではない」ということ。

どうすれば異国の地で自分らしく生きることができるか、ここに来てから2年半弱、日々奮闘している。

私が駐妻になるまで

まだ恋人だった夫のタイ転勤が決まった当時、私は28才。
泣く泣く東京での仕事を辞めて、ここタイに引っ越してきた。

まさか自分が28才で仕事を辞めて専業主婦になる可能性があると考えたことがなかった。

ヒールで地下鉄に揺られ、六本木のオフィスで世界各国から来た同僚と仕事をして、明るいうちに帰れる日もあれば、夜景を見ながらため息をつく日もあった。

仕事一筋というタイプではないけれど、働くこと自体は大好き。
ただただ普通の「東京で働くアラサー女子」だった。

それが心機一転、ヒールとも六本木とも無縁の「〇〇さんの奥さん」と呼ばれる生活に変わる。

「働く駐妻」になるためにここへ来た

大学を卒業して東京で働いていた私は、平日頑張って働く対価としての余暇が好きだった。
仕事の後に美味しいものを食べる。土曜日にカフェで淹れ立てのコーヒーを飲む。有休を取って地球の反対側に行く。

ありきたりだけど、それが好きだった。
キャリアウーマンになりたかったわけでも仕事人間になりたかったわけでもない。ただただ、みんながイメージする「東京で働く女子」で良かった。

タイに住むと決めたときも「専業主婦」の選択肢はなく、働くことが前提。
(英語が話せたことと海外留学経験があったことで、海外生活自体には全く抵抗がないどころか、むしろ余裕ですらあった)
東京での仕事を辞めるのは悲しかったけれど、ちょうど転職をしようとしていたタイミングだったこともあり、もしタイで仕事が見つからなかったら東京に一人で帰って転職すればいいやと思っていた。

仕事が見つかるまでの数か月間は、大好きなカフェも美味しいものも旅行も、全部なんだか物足りなかった。

働く駐妻、デビュー

そんな中ご縁があって、私のことを雇ってくれる会社に出会った。
ずっと興味のあった未経験の業種、かつ数年後に必ず帰ることになるとわかっている私を雇っていただいたことが、非常にありがたかった。
(身分を隠していないから、もしいつか元上司が読んでくれることがあればこの場を借りて感謝したい。ありがとうございます)

もちろん待遇の良い駐在員ではなく、現地採用。
夫の扶養に入っていれば心配なかったはずの健康保険も年金も、全部自己負担になってしまった。
それでも私はやっぱり働きたかった。
働くことで得られるはずの経験と、扶養内で生活をすることで得られる安心を天秤にかけるようになったら、自分は終わりだとも思った。

働き始めて感じた違和感

同じ「駐妻」という立場でも、様々な事情により働くことのできない人がたくさんいる。むしろ、そういう人の方が多いのが現状だ。
(これについては今後の記事で明らかにしていきたいと思っている)

そんな状況だから、働き始めたら突然「すごい」「働かなくても良いのに働くなんて偉い」と言われるようになった。
一番驚いたのは、「キャリア志向なんですね」という言葉だった。

私は私のことをすごいとも、偉いとも、キャリア志向だとも思わない。
働くのが楽しいから働いていただけで、キャリアウーマンになりたいとも仕事一筋だとも相変わらず思わない。
働いていない駐妻より働いている駐妻が優れているとも思わない。

これを書いている今、私は31才。
育児で仕事を中断している友人もいるけれど、特別な事情がない限り、東京にいる友人のほぼ100%が働いている。その友人たちに対して「キャリア志向」だと思ったことはないし、よっぽど出世を望んでいる人や起業している人などに対して以外そう思う人はいないだろう。

それが、駐妻という立場で普通に働くだけで「キャリア志向」と言われる。

駐在員の妻が働くことがそんなに不思議なのか。
今は2020年。令和2年。
女性も普通に働く時代なのはもちろん、働き方まで選べる時代。
コロナウイルスの流行でテレワークの導入や働き方の改善が叫ばれている。
もしかしたら今は、「駐妻」という立場を企業が考え直すチャンスになるかもしれない。

前置きが随分長くなってしまったけれど、そんな「駐妻」に対する企業の、古い時代の人たちの考えるきっかけを少しでも作れればと思い、このnoteを始めた。

ゆっくりペースになると思うけれど、駐妻という立場を、駐妻の方もそれ以外の方も考えられるきっかけになれば嬉しいです。

サポートありがとうございます!いただいたサポートはタイの面白いローカルブランドを応援するために使いたいと思います!