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肩関節レントゲンの見かた

こんにちは!
3年目理学療法士の田中です.(Insta:output_nodeshi)
前回までは肩関節腱板筋の機能解剖の記事を2つ書かせていただきました!

今回は,私たちの仕事で欠かせない画像所見の見かたについてです.
まずは肩関節のレントゲンについて代表的なものをお伝えしたいと思います.

では早速本題に入ります!

・肩関節におけるレントゲン撮影の基本

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肩関節のレントゲンでは正面撮影、側面撮影、軸位撮影の3方向が基本です¹⁾.
正面撮影では30°~40°側方へ向き肩甲上腕関節の関節面をとらえて撮影されます¹⁾²⁾.この像では肩甲骨と上腕骨の位置関係や,石灰の有無,骨棘や骨折の有無が確認できます.

側面撮影はScapula Y像とも言います.
これは肩甲骨面に沿った方向から撮影されます.この像では肩峰下骨棘や脱臼,亜脱臼に伴う上腕骨頭の位置を確認することができます.

軸位撮影は肩甲骨関節窩と上腕骨頭の位置関係を確認できます.
正面像や側面像では分かりにくかった肩鎖関節脱臼や烏口突起骨折,小結節骨折が見えやすくなります.

①AHI(Acromohumeral interval)

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AHIは肩峰と肩峰の距離のことです.
平均は7~14mmと言われています.

AHIは内旋位で広くなり(8~16mm) 外旋位で狭くなります(6~14mm)³⁾.レントゲンを見る時はどの肢位で撮影されているのかを確認できると良いかと思います.

また腱板の広範囲断裂の診断に有用であり,6mm以下では広範囲断裂を疑います.14mm以上では亜脱臼の可能性が考えられます.

腱板修復術では,術前AHIが7mm以下の場合は術後の棘上筋の再断裂リスクが高くなると言われいるため注意が必要です⁴⁾.

②骨棘

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肩関節における骨棘の好発部位は大結節烏口突起肩峰と言われています.
肩峰の骨棘では前方~外側にかけてが多いとれされ,AHIが狭小化されるためインピンジメントが起こることが示唆されます⁵⁾.

また,骨棘の増大因子として腱板筋の変性があります⁶⁾.
これは烏口肩峰靭帯の下を通る棘上筋腱とSAB(肩峰下滑液包)のインピンジメントが原因と言われています.そのため,骨棘と腱板断裂は関与することが考えられます.

③Moloney‘s arch

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Moloney‘s archは上腕骨と肩甲骨が作るアーチのことです⁶⁾.
肩甲骨のアライメントを確認することができます.

肩甲骨が下方回旋している場合はアーチが広く見えたり,上方回旋してる場合はアーチがとがって見えたりします.

また,肩甲骨のマルアライメントの影響でAHIが狭くなりますので一緒にAHIの確認をしてみるといいかと思います.

④Scaplua Y像

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Scapula Y像は骨頭の前後偏移を見ることができます.
肩峰から骨頭中心距離と烏口突起から骨頭中心までの距離は1:1になっていることが理想です⁷⁾.

肩甲骨面での撮影になりますでの骨頭が前方にずれている場合,後方軟部組織の柔軟性の低下等が考えられます.

また,Scapula Y像では肩峰の骨棘がよく見えるようになっているので同時に確認できると良いかと思います.

【まとめ】

・肩関節のレントゲンは正面,側面,軸位の3方向が基本
・AHIの平均は7~14mm
・骨棘の好発部位は大結節烏口突起肩峰
・Moloney‘s archでは肩甲骨のアライメントが確認できる
・Scapula Y像では骨頭の前後偏移を確認できる


今回は以上になります.最後まで読んでいただきありがとうございました!
画像所見は少し手が付けにくいところではあり,苦手意識がある方が多いかもしれません.ですが介入前に見ておくと少しだけ患者様の病態把握や主訴に対する原因の予測がつきやすくなるかと思います.今回の記事を読んで少しでも臨床に活用していただけると幸いです.

次回は肩関節における画像所見~MRI編~です!
それではまた…('ω')

【参考資料】

1)渡辺典男.股関節と肩関節単純撮影の実際.日本放射線技術学会雑誌,2003;59(7)
2)浅野昭裕,他.運動療法に役立つ単純X線画像の読み方.メディカルビュー社
3)宮沢知修,他.肩峰骨頭間距離の臨床的意義.肩関節,1989;13(2)
4)Shin YK, et al. Predictive Factors of Retear in Patients With Repaired Rotator Cuff Tear on Shoulder MRI. AJR Am J Roentgenol. 2018 Jan;210(1):134-141.
5)浦田節雄,他.腱板断裂における肩峰下腔面の骨棘について
6)松井健郎,他.肩峰の骨棘形成と腱板変化(第4報).肩関節,1994,18(2):229‐233
7)河村廣幸.運動器画像の見かた.羊土社

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