『Acropolis』読み切り短編小説
アクロポリスの亡霊は、空軍特殊戦略科航空戦闘団のパイロット達の間でまことしやかに囁かれる都市伝説の一つだ。亡霊とは言え、彼らにとってはラッキーチャームのような存在で、姿を見た者は、その日の任務を必ず成功させて帰還すると言われている。
地上が海の底に沈んで久しい今日、人工的な建造物の建設は環境保全を謳う法律で厳しく統制されている。地上だった場所を覆う広大な海原に転々とそびえるアクロポリスは、小高い丘の意味通り海面から突きだし、海風で梳られて本来の形が判然としない岩の塊のよう