Kathy

主に絵を描く人。 昔から作っていた創作ファンタジーを始め、分野ごった煮の文章を書く。 …

Kathy

主に絵を描く人。 昔から作っていた創作ファンタジーを始め、分野ごった煮の文章を書く。 たまに山梨のこと。

最近の記事

『Acropolis』読み切り短編小説

 アクロポリスの亡霊は、空軍特殊戦略科航空戦闘団のパイロット達の間でまことしやかに囁かれる都市伝説の一つだ。亡霊とは言え、彼らにとってはラッキーチャームのような存在で、姿を見た者は、その日の任務を必ず成功させて帰還すると言われている。  地上が海の底に沈んで久しい今日、人工的な建造物の建設は環境保全を謳う法律で厳しく統制されている。地上だった場所を覆う広大な海原に転々とそびえるアクロポリスは、小高い丘の意味通り海面から突きだし、海風で梳られて本来の形が判然としない岩の塊のよう

    • Acropolis 登場人物・設定

      [はじまり]  その世界は、海と空によって構成されている。 遠い昔、発達した文明を持った人間は、数々の蛮行の結果に全てを失った。  原子の矢が地上に降り注ぎ、津波が何もかもを飲み込んでいく、人々が暮らした形跡も、そして人までも、完全なる海の底に沈んでいった。  文明の崩壊の後、生き残ったわずかな人類は、新しい住処を開拓し、文明を築き始めた。海上を埋立て、新たな街を造り、生活が営まれる。それは崩壊以前と何も変わらないように見えるものの、原子の火に魅入られた人間は、再び同

      • 『遊行草子・彼岸鬼』天身供儀

        牛車の車輪がうっすら湿った泥土を跳ね上げる。その度に水気を含んだ音が幌を汚した。戦禍がありのまま残存する土地は、市が軒を連ね、賑わいを見せていた頃が嘘のように静まりかえり、どこもかしこも黒く染まりきっていた。宵に差し迫った夕空の方がまだわずかに明るさを保っていると言えるほどの地を這う闇は、稜線との区切りを明確に映し出し、あまり多くの言葉を持たない子供心にもなにか感じ入らせるものがあった。 「冬太、遊んでないで少しは手伝ったらどうだい」  悪路で縦揺れの激しい牛車の中、蹄とぶ

        • 『天身供儀』登場人物・設定

          【登場人物】 津狩 槐(ツガル エンジュ)     産まれて間もなく山に捨てられ、栖軽と呼ばれる男達に育てられたとされる隻眼の赤子。童女になる頃、記憶を欠損した状態で孤児として、天籍を持つ武将・津狩時房の養女となる。武芸に優れ、隻眼でなおかつ女というハンデを負いながらも天帝領を守護する御陵眷属部隊の下部組織『天音』に選ばれる。 幼名は槐花(カイカ) 存在が明らかでない幻の民に育てられた稀有な経歴に、眼帯に本来どちらかしか持つことが出来ない干将・莫邪の二刀を扱う為、一見物々し

        『Acropolis』読み切り短編小説