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『天身供儀』登場人物・設定

【登場人物】
津狩 槐(ツガル エンジュ)  
 
産まれて間もなく山に捨てられ、栖軽と呼ばれる男達に育てられたとされる隻眼の赤子。童女になる頃、記憶を欠損した状態で孤児として、天籍を持つ武将・津狩時房の養女となる。武芸に優れ、隻眼でなおかつ女というハンデを負いながらも天帝領を守護する御陵眷属部隊の下部組織『天音』に選ばれる。
幼名は槐花(カイカ)

存在が明らかでない幻の民に育てられた稀有な経歴に、眼帯に本来どちらかしか持つことが出来ない干将・莫邪の二刀を扱う為、一見物々しさを感じさせるが、根は穏やかな人柄に元来争いごとを好まない性分、しかし戦いの場に身を投じるとなると、狂気をまとう刀憑きとなる。
戦場や、戦場での人の心理、殺生の恐ろしさを身を以て知りながらいまだ刀を振るう自身に引け目を持っている。 

・栖軽(スガル)
 頑強な肉体と象形文字に似た言語を繰る独自の文化を持ち、獣すら恐れる険しい山々を風のように渡り歩くという、世俗から隔絶して生きる漂泊の民。ふらりと町に降りては、捨て子や口減らしの子供を引き取ることで、血を繋ぐ。栖軽に育てられた子供は、男子なら血を好む狂戦士、女子なら傾国の妖女のごとく成長すると言われている。
『安住の住処を持たぬ者』を意味する栖軽とは、彼等の存在を信じるわずかな人間達が付けた仮の名前。彼等自身は名乗りも上げず、痕跡も残さず、発生起源はおろか、実際の存在すら希薄で、今となっては、子供に注意を投げかけるわずかな言い伝えとして各地にその名を残すのみとなっている。

妃乃位 可淡(ヒノイ カタン)
 先帝崩御の陰謀に巻き込まれ、『蒸華の儀』により天籍与奪を受けて市井に転生するも、魂の容れ物(人間)を壊された元・天人。魂の形で彷徨い続けるが、救済策として供物にされた子供の身体を借りうけることに一時的にではあるものの成功する。その為、新帝によって天帝領の地下深くに封印された天人の肉体を再び取り戻す為、槐と行動を共にする。
長い年月を生きる天人らしく、見た目は子供でも老獪な喋り方をし、天浄と言われる退魔の力を操る。
 元は天人なので、多少のことでは動じない胆力の持ち主だが、肉体を借りなければ生きていけなくなってしまった現在は焦りもあってややせっかちで怒りっぽい、小姑的な性格に変化しつつある。最初は市井出身の槐を軽視する傾向もあり、うまく利用する為だけに同行させていたが、彼女の人柄に救われ、また彼女の苦悩を知ることで、徐々に偏見の壁が取り払われていく。

津狩 時房
 将軍職にあり、槐の養父。
武官である二人の息子がいたが、若くして戦場にて命を落としたことをきっかけに槐を養女として引き取るが、実の子を失い心を乱した妻は激しい拒絶反応を見せる。
幼い時から武芸の才を見せる槐の存在と、自らの職務上、彼女を戦場に送ることに苦悩する。

・干将
一部の男性のみが取り扱える雌雄二振りの宝剣のうちの、陽剣(雄剣)
・莫耶
一部の女性のみが取り扱える雌雄二振りの宝剣のうちの、陰剣(雌剣)

羅候(ラゴウ)  
 後宮眷属部隊の戦官で、新帝即位に立ち会う資格を有する『莫邪之弐氏』の一人。天帝の御前に奉納する歌舞を継承する盲目の技芸一族『候氏』出身の武将。同族婚でしか子を為せない因果から、一族全員が程度は違えども目に遺伝性の障害を持つ。才能の血が濃く出れば出るほど視力を失い、一族で最高の舞手として全盲という皮肉な運命を背負って生まれてきた。古来から続く巫の血筋を持つ賤民階級出身であり。普段は後宮で下級妃嬪として目立たぬ立場にいる。
 本名は持たず、芸名を名前とする習わしで、羅候は天帝領に住まうようになってから授かった名前。幼少時の名は、“候 春猿(コウ シュンエン)”
 
織部 御櫛(オリベノ ミグシ)  
 秘匿されている後宮眷属部隊の武官で、新帝即位に立ち会う資格を有する『干将之弐氏』の一人。普段は高官の一人として職務に就いている。
『織部』とは暗殺集団を指す『手折り部』の隠語。床をひきずる長衣を纏い、編み込んだ髪を高く結い上げた出で立ちから女性に間違われやすいが、男性。
 無粋な職能故か風雅に造詣が深く、立ち居振る舞いにも気品が漂う。他人の意見に左右されるのを良しとせず、自分の目で確かめ、初めて判断を下す思慮深さと、真実を見抜く確かな審美眼の持ち主。

北王子 天禄(キタオウジ テンロク)  
後宮眷属部隊の戦官。新帝即位に立ち会う資格を有する『莫邪之弐氏』の一人。
毛先の跳ね上がった赤毛の小柄な少女。肉感的だが完成された肢体で獣のように敏捷に動く。
山深いたたら場で生まれ育ち、幼い頃から鍛冶職人の男達に剣の扱い方を教わる。玉鋼から生まれた武器は何でも使いこなす。地理に強く、いかなる戦況においても応用が利く。好奇心の強さばかりが悪目立ちするが、幼い容姿や言動とは裏腹に、すこぶる頭の回転が速い。敵味方の区別は本能に忠実、悪と感じれば味方でも斬りつける。機動性に富んだ遊撃部隊を率いて前線に立つ。
普段は後宮で下級妃嬪として気ままに過ごしている。.

妃乃位 可淡(ヒノイ カタン)
 先帝崩御の陰謀に巻き込まれ、『蒸華の儀』により天籍与奪を受けて市井に転生するも、魂の容れ物(人間)を壊された元・天人。魂の形で彷徨い続けるが、救済策として戦災で死んだ子供の身体を借りうけることに、一時的にではあるものの成功する。しかし、仮初の身体では活動限界が限られ、常に魂が消滅してしまう危機に常に瀕している。その為、新帝によって天帝領の地下深くに封印された天人の肉体を再び取り戻す為、同様に天帝領を追われた槐と行動を共にする。
長い年月を生きる天人らしく、見た目は子供でも老獪な喋り方をし、天浄と言われる退魔の力を操る。
 元は天人なので、多少のことでは動じない胆力の持ち主だが、肉体を借りなければ生きていけなくなってしまった現在は焦りもあってややせっかちで怒りっぽい、小姑的な性格に変化しつつある。最初は市井出身の槐を軽視する傾向もあり、うまく利用する為だけに同行させていたが、彼女の人柄に救われ、また彼女の苦悩を知ることで、徐々に偏見の壁が取り払われていく。

延命冠者 傀儡(エンメイカジャ カイライ)  
 天帝領の広大な敷地に建つ後宮に巣喰う風変わりな男。自らを『世相に踊らされる無様な操り人形』になぞらえ、傀儡と名乗る。男性であるにも関わらず、中性的な肢体に、女物の煌びやかな装束をまとった倒錯的な出で立ちで後宮を闊歩する。古くから不干渉の存在として認知されており、帝位が変わり、後宮の顔ぶれが一変しようとも、その地位も容姿も揺らぐことはない。
 可淡は忘れているが実は旧知の仲で、彼に同行する槐に興味を持つ。

靑嵐公主 我妻主 碧琉 (セイランコウシュ アヅマノオモヤ ヘキル)
 歴代天帝の寵姫。
後宮に半強制的に輿入れさせられる。穏やかな人柄に惹かれる者は多く、それを知り嫉妬した当時の天帝が後宮に幽閉してしまった。その際にかけられた呪術が原因で、最低限の生命活動以外の動きを一切封じられており、生き人形と陰であだ名される。
 過去、天帝の子供を身籠もったとされているが、実証はなく、真偽は定かではない。
 

天帝 琥珀(コハク)
 先帝崩御と同時に後宮の最奥に存在する円筒分水、呼子栄朽湧泉(ヨビコノサカエクチノワキミズ)が産み落とした新しい天帝。成長過程がなく、性別を持たない異形の姿で生まれ、莫大な天浄の力を持って天帝領に君臨する。即位直後に先帝の腹心の家臣とその一族全員から天籍を剥奪し、市井に転生させる『蒸華の儀』を執り行わせる。

高麗 繁長(コマ シゲナガ)
 論功行賞の見定め役として各地の戦場を渡り歩く老将。穏和な人物だが、冷静に集めた情報を分析し、第三者視点で物事を見極める目は厳しい。

【あらすじ】
未だ天人と人とが共存し、不浄が跋扈する古の世、支配者の座には永久の命を持つ天人が長きに渡り君臨していた。あまりにも長い歴史に、天籍を授かった者を除いた、限りある命に振り回される人間達は次第に政に興味を無くし、身近に蔓延る疫から身を守る為の清めや祓いに気をやるようになっていた。
 疫と呼ばれる不浄の魔物の正体は、領地に無数に存在する呼子栄朽湧水と呼ばれる泉から出でる、かつて非業の死を遂げた天人達の怨念。打ち倒すことが出来るのは、天人が持つ『天浄』と呼ばれる力と、天人を守護する武人達だけが所有を許された雌雄の宝剣『干将』『莫耶』のみであり、天帝は直轄の守護部隊『御陵眷属部隊』の下部組織『天音』に市井に蔓延る疫の監視、討伐を命じる。
 『天音』とは天浄の力を持って生まれてきた人間の子供達。天浄は天人が持って初めて意味を為す力、人間にとっては死期を早める毒気に他ならず、赤子の時分に外科手術で片目を取り出し、宝珠製の義眼と眼帯によって力を抑制されている。頑強な肉体と運動能力を有し、男は干将、女は莫耶と呼ばれる剣を授けられ、国のほの暗い裏の面を支える。
天音に属する津狩槐は、天籍の将軍・津狩時房の養女。幼くして山に捨てられ、山を渡る幻の民・栖軽に育てられたとされる空白の過去を持った子供であった。

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