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気にするのは内側か外側か

2019年に入り,早稲田大学戸山キャンパスの新記念会堂が完成しました。2018年度の卒業式から,この場所が使われています。昨年までは大隈講堂で卒業式や入学式が行われていました。入ることができる人数が限られているので,大学からしたら大変な行事になってしまうのですが,重要文化財である大隈講堂での式典というのは,それはそれで雰囲気があって良かったようにも思います。

新記念会堂の完成予想図はこんな感じでした。

この図を見たときに,人が歩いている丘の上の通路が「W」の形になっているんだな,と思っていたのですよね。早稲田の「W」が建物の上や空から見えるようになるのですね!と。

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そして,最近完成した通路を建物の上から撮影した写真がこれです。
「W」じゃない……「N」だったのか!と思ったのでした。

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左の線が円形の土地(芝生?)の右側ぎりぎりに細くあって,何とか「W」に見えないこともありません。でも完成予想図に比べると,ずいぶん「N」にしか見えなくなってしまっていて,ちょっと残念に思った出来事でした。

どっちから読む?

いや,残念に思おうが,実際には「W」の文字が見えるように作ったわけでもないようですので,そこは私の思い込みだったわけです。

でも,もうひとつ気になったのは,もし「W」が見えていたとするならば,大学の内側から「W」の文字が見えたということでした。先ほどの完成予想図では,大学の外から見ると「W」ではなく「M」になりますよね。「M」ということは明治......。

「そうか。大学の中からWに見えるように作っているのですね」と,ずっと思っていたというわけです。なぜそこにこだわっていたかというと,心理学でこういう研究があるからなのです。

どちら向きに見える?

では突然ですが,人差し指で,自分の額にアルファベットの「Q」を書いてみてください。楕円形を描いて,Qのしっぽを書きます。

さて,書いた「Q」のしっぽつまり最後の点は,どちら側にあったでしょうか。

自分の左手の方にあったのであれば,それは他の人から見えるように額に書いているということです。その逆に,右側にしっぽがあるのなら,それは自分から見えるように「Q」を書いているということを意味します。

そして,他人から見えるようにQを書いた人は,他の人からどう見られているかを意識する人,逆に書いた人はそうではなく自分自身へ注意が向かう人だという解釈です。

ということは,大学の中から読める方向に早稲田の「W」の文字を地面に書くなんて,うち向きで内省的な大学だよなあ,あまり外からどう見られているかなんて気にしていのかな,なんて思ってしまったわけです。もちろん,大学自体に意識があるというわけではないのですけどね。

ただしこの「Q」を額に書く方法は,イギリスの心理学者リチャード・ワイズマンの著書やYoutube動画,Webサイトから広まったやり方です。おおもとの論文はというと......

QではなくE

もとの論文は1984年までさかのぼります。そして,その論文では,額に書く文字は「Q」ではなく「E」でした。「Perspective taking and self-awareness: Drawing an E on your forehead」というタイトルの論文です。

たとえば実験の参加者には,額にEの文字を書いてもらうのですが,その際に参加者をランダムに2つのグループに分けます。

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