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田舎を出たかった頃

「ヒルビリー・エレジー」という本を読みました。アメリカにはラストベルトと呼ばれる地域があります。その地域での生活の様子や,情報が隔離されている様子,また社会階層を上がっていくことが難しい姿が描かれています。

カタカナで「ラスト」と書くと分かりづらいのですが,英単語では「rust」で「錆びついた」という意味です。

アメリカの中西部,五大湖周辺から大西洋沿岸にかけての地域のことです。細長い地帯になっていますので,「ベルト」という言葉が使われています。日本でも「太平洋ベルト地帯」なんて,ずいぶん昔に学校で学びました。

そして,どうして「錆びついた」と言われるかというと,かつてはこの地域は鉄鋼や石炭,自動車などの重工業が盛んだった地域で,それらの産業が斜陽になっていく過程でこの地域も寂れていったという意味が込められています。

とはいえ実際には,それなりに都市の回復力があるのもアメリカの姿の一面ですので,数年前の姿のままのイメージを持っていると「あれ,違う?」となることも多そうです。

実家のある地域

私の実家は,愛知県一宮市にあります。

一宮市の地場産業は,繊維産業です。「繊維の町,一宮」と呼ばれることもあります。特に毛織物が盛んで,第一次世界大戦,日中戦争,朝鮮戦争と戦争がおきるたびに,経済的に発展していった歴史があるようです。

また昭和30年代から40年代には,日本中から繊維産業に集団就職するため,中学校や高校を卒業した若者たちが一宮市にやってきたそうです。

もっとも,私の家は繊維産業ではありません。ただ,近所には工場がいくつもありますので,そういう工場には馴染みがあります。亡くなった祖母も,そういう工場でパートとして働いていました。

ラスト地域?

とはいえ,それもずいぶん昔の話です。現在は,愛知県の中でも財政状況は決して良い方ではないようです。

住むにはよい町なのですけどね。尾張一宮駅から名古屋まで,JRを使えば10分で到着します。東京の感覚からすると,とてつもなく「近い」ですよね。

昔は産業が盛んで,現在はそれほどでも……ということで,ヒルビリー・エレジーを読んだ時に思い出したのは,自分の実家がある地域だったというわけです。

実家を出たかった

そして,高校生の頃くらいから,実家を出たくてしょうがありませんでした。なぜなのかはよくわかりません。とにかく「合わない」「出たい」「息苦しい」という気持ちが強く,とはいえ,何をどうしたらいいのかよくわからないという状況に陥っていました。

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