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回答の選択肢は何件法がいちばんちょうどいい?

割引あり

心理学の質問紙法の測定では,リッカート形式の尺度がよく用いられます。これは,次のような形式です(架空の例です)。

◎次の文章にあなた自身がどの程度あてはまると思うのかについて,「全くあてはまらない(1点)」から「とてもよくあてはまる(5点)」までのいずれかの選択肢を選んでください。
1.全くあてはまらない,2.あまりあてはまらない,3.どちらともいえない,4.ややあてはまる,5.とてもよくあてはまる

・毎日幸せを感じる  1  2  3  4  5
・日々充実している  1  2  3  4  5
・生活に満足している 1  2  3  4  5


いくつの選択肢?

回答の選択肢をいくつにするかというのは,素朴な疑問であると同時に答えが難しい問題です。

これまでの研究で明らかにされたこととして,次のことがあるそうです。

◎2つまたは3つの選択肢だけの場合は,それより多くの選択肢で測定した場合に比べて,大きく歪む可能性が高くなる。
◎内的整合性(アルファ係数)は,回答の選択肢が2つから5つや6つになるにつれて大きくなる傾向がある。しかし,内的整合性の算出方法によって異なる可能性がある。
◎選択肢の数は,基準関連妥当性や収束的妥当性にあまり影響を与えない。

なお,内的整合性というのは測定している複数の項目がおおよそ同じ方向を向くことを示していて,基準関連妥当性は外部の基準との関連,収束的妥当性は関連があるべき他の変数と実際に関連が生じることを表します。

選択肢の数

いったい,回答の選択肢を増やしていくと何がおきるのでしょうか。成人を対象とした2つの大規模な調査のデータを用いて,回答の選択肢が2つ,3つ,4つ,5つ,6つ,7つあるときに起きる影響を検討した研究があります。

この研究で立てられた仮説は次の通りです。
1.回答の選択肢が多くなるほど,より正規分布に近づいていくだろう。
2.回答の選択肢が多くなるほど,クロンバックのアルファ係数は高くなっていくが,順序アルファの値は高くならないだろう。
3.回答の選択肢は,収束的妥当性の推定値に影響しないだろう。
4.回答の選択肢は,基準関連妥当性の推定値に影響しないだろう。

はたして閣下はどうなったのでしょうか。こちらの論文を見てみましょう(Brief Report: Does the Number of Response Options Matter for the BFI-2? Conceptual Replication and Extension)。

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