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医学部入試と動機づけとコミュニケーション能力の話

医学部の入試が話題になっています。そして,関連して様々な記事が書かれています。

その中で,東洋経済の記事『医学部の面接試験は「志望動機」で落とされる』が興味深かったので取り上げてみようと思います。

医学部では現在,面接試験が必須の大学がほとんどで,(本当かどうかはわからないのですが)「筆記試験の点数が抜群に良くても,面接次第で不合格になる可能性は十分ある」のだそうです。

面接試験で「なぜ医師を目指すのか」という質問は定番のようで,それに対して「親が医者だから」「成績が良いから奨められた」といった回答をしてはダメなのだそうです。

必要なのは「より能動的な理由」なのだとか。

目次

・動機づけ
・医師の動機づけ
・コミュ力
・動機づけと学業成績
・動機づけは変化する

動機づけ

この話を読んだとき,動機づけの理論によく似ているな,と思いました。

動機づけとは,行動の原因となり,行動を方向づけ,維持させる過程や機能として仮定される概念です。内発的動機づけや外発的動機づけという動機づけの分け方はよく知られています。

しかし近年,自律性という概念から動機づけを捉え直す,自己決定理論と呼ばれる枠組みが知られるようになっています。そこでは,内発的な動機づけから外的な動機づけまでの間に,いくつかの段階が仮定されます。

外的動機づけ
怒られたくないから,褒められたいから,皆がそうするからその行動をする。報酬の獲得や罰の回避のために行動が維持される。

取り入れ的動機づけ
負けたくないから,優れていると思われたいから,それをしないと恥ずかしいからその行動をする。他の人との比較や罪悪感,恥の感情などに基づいて行動が維持される。

同一化的動機づけ
自分の将来に役立つから,自分の夢を実現するため,自分の生活のためにその行動をする。活動の価値を自分で受け入れている状態。

内発的動機づけ
新しいことを知るのが楽しいから,そのことに関心や興味があるから,それをすることが楽しいから行う。自分の内部から行動の原因が生じて,行動が維持される。

外的動機づけ→取り入れ的動機づけ→同一化的動機づけ→内発的動機づけ,の順番で自律性が高まることが仮定されていて,動機づけを自律性の一次元上に並べることができるという枠組みで捉えられています。

確かにそれぞれの内容を見ると,外的動機づけから内発的動機づけに向けて,行動の原因がだんだんと自分の内部に取り込まれていくように並んでいることがわかります。

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