見出し画像

成功しているのに本当ではないと感じる

周りからは成功者だと思われているのに,自分ではとてもそうは思えない場合や,いつもそう思ってしまいがちな人がいるようです。

それは,単に謙遜しているだけというわけでもないのです。自分には価値がなく,何も成し遂げておらず,劣った人間だと感じてしまうことがあるのです。客観的に見てみれば,十分に成功しているように見えますし,たとえば平均的な学歴からすれば十分に上位にいたり,平均的な収入から考えれば十分に高かったり,何か特殊な技能を持っていたりすると言えるのに,です。

自分自身の認識というのは,時に少々厄介なことになってしまうようです。

成功が本当ではないと思ってしまう人

このようなことを思ってしまう人には,何か特徴があるのでしょうか。

まず,成功してもなかなかそれを自分に原因があると考えることができない傾向を挙げることができます。成功したのは自分に能力があったからだとか,自分が頑張ったからだと考えることを内的な原因帰属といいます。それに対して,うまくいったのは運が良かったからだとか,巡り合わせだとか,そういう運命だからとか,自分以外に原因を求めることを外的な原因帰属といいます。自分の何かが成功に結びついたわけではないと強く感じることが,成功が本物ではないと感じるひとつの要素になるというわけです。

また,自分の能力に自信を持つことができない人も,成功に疑念を抱きやすいようです。うまくいった結果に能力が関与していないと考えると,「今回うまくいったことはたまたまそうなっただけで,次はダメなのではないか」と感じてしまいがちですので,今の成功が本物だとは思えなくなってしまうのかもしれません。

それから,「自分の能力のなさが見破られてしまうのではないか」という不安を抱える傾向を,特徴として挙げることができます。ここまで書いたように,今の成功が自分の能力のためではなくたまたま,偶然だと考えるのですから,「今は持ち上げてくれるけれど,いつか周囲もそのことに気づくのではないか」と不安になってしまうということです。

最後に,自分に高いハードルを課してしまう傾向です。何か課題を行うときに,何をもって成功とみとめるかは人によって異なります。学力試験をしても,ある人は「100点を取らないと失敗」と考えますし,別の人は「70点くらい取ればいい」と考えます。それは,その人のこれまでの状況にもよりますし,その人のものごとの捉え方にも影響を受けます。高いハードルは「失敗した」と感じる確率を高めてしまいますので,「いつもうまくいかない」と考えてしまうことにつながるというわけです。

インポスター

“imposter”という単語は「詐欺師」とか「偽者」という意味です。誰かになりすましたり,入れ替わったりする人物を,インポスターと呼びます(意図的な場合も非意図的な場合もあります)。

英語版Wikipediaには,歴史上確認されたインポスターたちのリストがあります。「自分は○○である」「自分は○○の子どもだ」「冒険家だ」「政治家だ」など(でも事実とは異なっていることが判明している),これまでの歴史の中にはさまざまなパターンのインポスターが登場しています。

インポスター現象

自分で「自分は偽者だ」と感じてしまうのが,今回の記事の最初に書いた現象です。偽者だと自分で自覚がなかったり,あるいは意図的に他の人をだまそうとしたりするのではなく,「自分は偽者で,他の人もそう思っているのではないか」と,事実はそうではないのに自覚してしまうことです。

学問的・専門分野において客観的に成功しているという証拠があるにもかかわらず,本人は虚偽感や無価値感を抱き,知的な面で他者を欺いていると感じる内的経験をインポスター現象といいます。

ここから先は

792字
【最初の月は無料です】心理学を中心とする有料noteを全て読むことができます。過去の有料記事も順次読めるようにしていく予定です。

日々是好日・心理学ノート

¥450 / 月 初月無料

【最初の月は無料です】毎日更新予定の有料記事を全て読むことができます。このマガジン購入者を対象に順次,過去の有料記事を読むことができるよう…

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?